ニカラグアにおけるコーヒーさび病菌の初発生(1976年)

ニカラグアにおけるコーヒーさび病菌の初発生(1976年)

ニカラグアにおけるコーヒーさび病菌の初発生(1976年)

図1 ニカラグアの地図(斜線部分は図2に対応)。
図2 感染病巣

1976年、ニカラグアでコーヒーさび病菌(Hemileia vastatrix)が初めて発生した。1976年11月23日にニカラグアの太平洋岸地帯で発見され、12月中旬までに約2,100ヘクタールのコーヒー農園で一次病巣と二次病巣が確認された。被害を受けたコーヒーノキは樹齢25~30年で、栽培品種はブルボンである。ブラジルから侵入したと言われるが定かではない。

長戸 コーヒーのサビ病伝播の経路は明らかになっているか.防除の方法は銅剤の使用が多いか.
南坊 伝播経路はブラジルから来たのではないかといわれているがわかっていない.防除には銅剤の使用が多く,50%銅剤を使っている

南坊 進策(1980)「ニカラグア国の農業事情

1970年にブラジルでコーヒーさび病菌が発生した時とは対照的に、ニカラグアのコーヒーさび病菌は早期に発見された。そのおかげで、この病害の防除と根絶のために直ちに講じられた対策が成功する見込みがあった。

1970年1月17日 バイア州のイタブーナ地域に銹病の発生が報告された.ブラジル政府はブラジルの栽培品種がコーヒー銹病に弱いアラビカ種であるため,事態を重視し,コーヒー栽培合理化実行グループ(GERCA)に直ちに罹病状況の調査を行なわしめた.その結果,バイア州では同州のコーヒー栽培地域の殆ど全郡107郡が病源菌で汚染されていることが判明した.

南坊 進策, 宮下 信夫(1974)「ブラジルにおけるコーヒー産業とコーヒー銹病

しかし、ニカラグアの気候条件は、東アフリカのコーヒー産地と似ており、発病に好条件である。1977年の雨季の始まりから2ヵ月後、新たな発生はわずか数件しか発見されず、ニカラグアにおけるコーヒーさび病菌の完全な根絶の可能性が最大となるような方法で直ちに治療が行われた。

周知のとおり昨年11月30日カラソ郡においてコーヒー銹病が発見された.政府は事の重大性と国際農牧防疫組織の規定にかんがみ,本件を発表すると共に同機関の専門家の銹病撲滅に関する助言を求めた.その結果上記国際農牧防疫組織及び米州農業科学研究所の後援のもとに,ブラジルの専門家の協力を得てコロンビアコーヒー栽培者連盟によって開発された手段をとることとなった.
その方法は,罹病木とそれから半径30メートルの範囲内の木を全部除去(又は伐採)すること,更にその外側の50メートルの半径内を予防目的で薬剤撒布することであった.又同時に国内の蔓延を防ぐため調査団を組織した.

南坊 進策(1978)「ニカラグア国におけるコーヒー銹病の現況*

中米初のコーヒーさび病菌の発生から、共同撲滅基金の設立が提案されたが、実現には至らなかった。

ニカラグア農業のトピックは昨年11月末にコーヒーのサビ病の発生をナショナル銀行の担当官が発見したことである.かつて中米5力国,あるいはパナマ,メキシコなどカリブ海沿岸の諸国にはコーヒーのサビ病の経験がなかった.そのため,ナショナル銀行,農協は防疫班を組織してサビ病の防除に努力した.サビ病防除は大統領が先頭に立ち,マスコミも大きなキャンペーンを繰広げた.さらに,大統領は政治的にも手を打ち,サビ病発生後1カ月経過した時点で中米4力国とパナマの代表団を招き数力国共同の撲滅運動について討議した.そのため,2,000万ドルの基金を作りサビ病撲滅の費用に当てる提案がなされ,ある程度の賛同を得た.しかし,数カ月後にはこれらの国々は熱を失って共同撲滅基金は実現に至っていない.ニカラグアは輸出コーヒー1俵について5ドルのサビ病対策費を徴収し,すでに500万ドルを越える出費をし,次年度徴収分に喰い込んでいる.その努力の結果,サビ病は5月中旬まで広がった時点で制圧され,全コーヒーの0.5%の被害に止っている.

南坊 進策(1980)「ニカラグア国の農業事情

南坊 進策は、農林省から外務省へ移り、在ニカラグア日本大使を歴任した。南坊は、2002年7月に亡くなった。

南坊講師は,戦前には2カ年程スマトラに居られた経験もあり,また昭和28年戦後移住が始められてから外務省に移られ,南米へ調査のため9回渡航され,更に通算6力年滞在されて,南米の諸事情に精通されておられます.

内田 重雄(1972)「研究集会 南米における最近の農業事情*

<参考>

Erstmaliges Auftreten des Kaffeerostes (Hemileia vastatrix) in Nicaragua 1976 / First occurrence of the coffee leaf rust (Hemileia vastatrix) in Nicaragua 1976:https://www.jstor.org/stable/43214633

南坊 進策 - J-STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/result/global/-char/ja?languageKind=ja&item1=8&word1=%E5%8D%97%E5%9D%8A+%E9%80%B2%E7%AD%96&notCond1=0&yearfrom=&cond1=&translate=0&yearto=&bglobalSearch=false&fromPage=/search/global/_search/-char/ja

コーヒー - CiNii:https://ci.nii.ac.jp/ncid/BB14830313

コーヒー - 国立国会図書館:https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000136-I1130000793995042048

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