帰山人の珈琲遊戯:エチオピア ゲシャ・ヴィレッジ ゴリ・ゲシャ ハニー

帰山人の珈琲遊戯のエチオピア ゲシャ・ヴィレッジ ゴリ・ゲシャ ハニー(エチオピア ベンチマジ ゲシャヴィリッヂ バンギ ゴリゲシャ ハニー 2nd Edition)です。帰山人の珈琲遊戯は、2017年に始まった鳥目散 帰山人氏による焙煎豆販売です。

帰山人氏が中川氏のフレーバーコーヒーに最初に訪れたのは1992年のことで、それ以来の付き合いになると思います。

エチオピア ゲシャ・ヴィレッジ ゴリ・ゲシャ ハニー

エチオピア

エチオピア(Ethiopia)は東アフリカに位置する内陸国です。北をエリトリア、東をソマリア、南をケニア、北西をスーダン、北東をジプチに囲まれています。首都はアディスアベバです。エチオピアは200以上の言語を話す70以上の民族グループを持っています。かつてエチオピアはアビシニア(Abyssinia)と呼ばれていました。

エチオピアはナイル一帯の高原地帯に位置している、面積113万平方キロメートル以上のアフリカ最大の国の一つです。エチオピアには海抜マイナス100mをきるアファール盆地(Afar Depression)があるダナキル砂漠(Danakil Desert)と、海抜約4,600mのエチオピアの最高峰、ラス・ダシャン山(Ras Dashan)までの険しい地形が広がっています。

エチオピアはグレート・リフト・バレー(Great Rift Valley、大地溝帯)の入り口にあたり、北東の紅海から南西に向かって国土を半分に割るようにグレート・リフト・バレーが貫いています。グレート・リフト・バレーの西と東で、コーヒーノキのタイプに違いが見られます。西側には自生のコーヒーノキがみられ、ゲイシャは西側で採取できるエチオピア起原の野生種です。

南部諸民族州

エチオピアの州(State または Region)と地方(Zone)、Wikipediaより

ゲシャ・ヴィレッジ・コーヒー・エステート(Gesha Village Coffee Estate)は、エチオピア南部諸民族州(Southern Nations, Nationalities, and People's Region(SNNPR))ベンチ・マジ 地方(Benchi-Maji Zone)に位置しています。

エチオピアでは1995年に憲法改正があり、「エチオピア連邦民主共和国憲法(the Constitution of the Federal Democratic Republic of Ethiopia)」が施行されました。ここからエチオピアは「諸民族」の民族自治による連邦制へと移行しました。

このエチオピア連邦民主共和国憲法のもとで、「諸民族」の民族自治の理念に合わせて、1995年にエチオピアでは行政区画の変更がありました。エチオピアの行政区画は「州(Region または Regional state)」、「地方(Zone)」、「群(Woreda)」の順に区分されることになり、さらに郡の下に行政区画の最小単位として「住民自治組織(Kebele)」が置かれることになりました。

「南部諸民族州(Southern Nations, Nationalities, and People's Region(SNNPR))」は、1995年にエチオピアが各民族に州を割り当てた際、かつては独立していた各民族を一つの州にまとめ、形成された州です。現行憲法では一民族ごとに一州が割り当てられていますが、複数の少数民族で構成されている南部諸民族州は、「地方(Zone)」または「特別郡(Liyu Woreda)」が民族構成単位となっています。

ベンチ・マジ地方

ベンチ・マジ地方(Benchi-Maji Zone)は、エチオピア西南部の南スーダン(South Sudan)に国境を接する地方です。北東にケッファ地方(Keffa Zone)に接しています。

コーヒーは主な換金作物で、南部諸民族州の約10%、エチオピア全土の約4%のコーヒーを生産しています。

ゲシャ・ヴィレッジ・コーヒー・エステート

「Gesha Village Intro Video」,Willem Boot 2017年3月25日.
Gesha Village Intention and Community

We are happy to share this latest video with everyone which shows some of the positive impacts of our work. To further this, 10% of the auction sales this year will go toward a high school building fund - the first high school in the Gesha area!

Gesha Village Coffee Estateさんの投稿 2019年5月30日木曜日

ゲシャ・ヴィレッジ・コーヒー・エステート(Gesha Village Coffee Estate)は、南スーダンの国境から数kmのジャングルに、471ヘクタールの広大な農園が広がっており、そのうちの320ヘクタールでコーヒーが栽培されています。

左 レイチェル 右 アダム、Gesha Village Coffee Estateより

ゲシャ・ヴィレッジ・コーヒー・エステートは、アメリカ生まれのアダム・オーバートン(Adam Overton)氏と、エチオピア生まれのレイチェル・サミュエル(Rachel Samuel)夫人によって経営されています。

アダム&レイチェル夫妻は、2007年にエチオピア政府からコーヒーのドキュメンタリー映画製作の依頼をきっかけに、2011年からコーヒー農園の開拓を始めました。アダム&レイチェル夫妻は、現地の先住民であるメアニット(Meanit)族との対話することで、彼らの理解、協力を得ることに成功しました。

「Willem Boot about Boot Camp Coffee」,CoffeeCourses 2013年4月10日.

アダム&レイチェル夫妻は、「ブート・コーヒー(Boot Coffee)」を運営しているコーヒー教育者、コンサルタントのウィレム・ブート氏(Willem Boot)(または、ウィリアム・ブート)から、高品質なコーヒーの栽培についての基礎を学びました。

ブート氏もまた、彼らと同様にゲイシャに対する情熱を持っています。彼は、2006年11月に「ゲシャを目指す旅」を企画しました。

 二〇〇六年一一月、著名なコーヒーコンサルタントのウィレム・ブートが企画した調査旅行も、それが目的だった。米国カリフォルニア州在住のドイツ人であるウィレムは、ゲイシャに深く入れ込むあまり自身もコーヒー農家になり、投資目的で購入していたパナマの土地にゲイシャの木を植えていた。事前の調べで、ケファ(kefa)もしくはカファ(kafa)として知られる町の近くにはゲシャ(Gesha)と呼ばれる町が少なくとも三つあることがわかっていた。ウィレムは、そのすベてを訪れ、ゲイシャ特有の細長い葉をつけたひょろ長いコーヒーノキを探すつもりだった。

 ウィレムの指揮のもと西洋人とエチオピア人を乗せた三台のキャラバンが編成され、ゲシャの町からゲシャの町へと金の実のなるスペシャルティコーヒーの木を探す旅が実行された。この調査旅行は、米国の人気リアリティ番組「サバイバー」を地で行くような旅となった。参加者は極限まで追い込まれ、人間の醜さと尊さを曝(さら)け出すことになる。遠路はるばるエチオピア南部の高地のとりでまで、車では進行不能な岩だらけのでこぼこ道を進むのだ。途中、降りやまない豪雨に見舞われ、事態はますます悪化した。沼のような泥道を足首まで沈ませながら六時間歩き続けるなかで年長のエチオピア人が一人、脚を痛めてしまった。その後、ある町ではエチオピアの貴重なコーヒー資源を盗み出すつもりかと地元の役人に責められ、追い出された。アフリカでも最悪の部類に入ると思われるホテルで一晩過ごしたこともあった(トイレも穴があるだけで、強烈な臭いを放っていた)。

マイケル・ワイスマン(2018)『スペシャルティコーヒー物語: 最高品質コーヒーを世界に広めた人々』久保 尚子(訳), 旦部 幸博 (監修), 楽工社.p.80-81

アダム&レイチェル夫妻は、ブート氏からコーヒー栽培の基礎について学んだ後、エチオピアに戻り、何ヶ月もかけてゲイシャの栽培に適した土地を探し求めました。彼らは標高の高い高地、豊富な降水量、温暖な気候、その他の自然条件が揃った土地を、ベンチ・マジ地方(Benchi-Maji Zone)に見つけました。

彼らは、この土地から約20㎞離れた場所に隣接する「ゴリ・ゲシャの森(Gori Gesha Forest)」というジャングルから、ゲイシャを採取しました。これは、ゴリ・ゲシャ(Gori Gesha)という品種として栽培されています。

アグロフォレストリー

ゲシャ・ヴィレッジ・コーヒー・エステートはアグロフォレストリーを採用しており、コーヒーはシェードツリーの木陰で栽培されています。在来の植物がシェードツリーに使用されています。コーヒーの持続可能な生態系を創造するために、3万本以上の在来種のシェードツリーが植えられています。

アダム&レイチェル夫妻が、ゲシャ・ヴィレッジ・コーヒー・エステートを建設した土地にたどり着いたとき、土地の約25%の森林が破壊されていました。そこでアグロフォレストリーの専門家による環境調査を実施し、この環境に適合する在来種を用いテロワールを活性化するように注意を払いました。1ヘクタールあたり2,000本の適度な密度で在来種を植えられています。

収穫期は、12月初旬から1月中旬までです。

ゲシャ・ヴィレッジ・コーヒー・エステートは標高1,909m-2,069mの高地で、約70万本のコーヒーノキが栽培されています。農園の設立から6年目の2017年には、1,200袋を超える生産量(生産2年目)となりました。

ゲシャ・ヴィレッジ・コーヒー・エステートの8つの区画と品種

ゲシャ・ヴィレッジ・コーヒー・エステートは、8つの「ブロック(Block)」と呼ばれる区画で、3つの品種が栽培されています。各区画で生産されたコーヒーは、それぞれにタグが付けられ、生産履歴の追跡が可能になっています。

ゲシャ・ヴィレッジ・コーヒー・エステートの区画

農園地域ヘクタール標高品種フレーバー・プロファイル区画の説明
バンギ(Bangi)541,911-2,001mゴリ・ゲシャ(Gori Gesha)スイカズラとスパイスの豊かなアロマ。メキシコのモーレ、レッド・フルーツ、ブラック・ティー、糖蜜、ブラック・カラントのニュアンスを持つダークチョコレートとスパイスで満たされた強烈なフレーバー。農園の東に隣接するバンギ・チチュル(Bangi-Chichuru)からは、農園で働く労働者の大多数がやってくる。
ディッマ(Dimma)28.71,966-2,019mイルバボールの森(Illubabor
Forest)
鋭い酸味と爽やかな柑橘系の後味を持つ、コーヒーの花、ストーン・フルーツのいきいきとしたフレーバー・プロファイル。農園の北に位置するディッマの有名な金鉱の町に因んで名付けられた。
ガイレー(Gaylee)34.81,916-1,982mイルバボールの森(Illubabor
Forest)
ジャスミンのフローラルな印象とストーン・フルーツの甘味で満たされた、マジパン、レモングラス、ハイビスカスの強烈な甘味、フルーツとスパイスのしっかりと結びついたプレーバー・プロファイル。ゲシャ・ヴィレッジの水源であるイエゴルドン川(Yetgordon river)が流れている、公式にはガイレー・ゲシャ(Gaylee-Gesha)と呼ばれる、農園に隣接する南東向きのケベレ。
オマ(Oma)67.61,931-2,040mゲシャ 1931(Gesha 1931)ジャスミンの深みのある香りのティー・ローズのエキゾチックなアロマ。 ハチミツの甘味で支えられたピーチ、アプリコット、砂糖漬けのフルーツ、メロン、温州みかんの繊細なフレーバー。メアニット(Meanit)族に尊敬され愛される宗教指導者にちなんで名付けられた。
ナルシャ(Narsha)5.31,963-1,977mゲシャ 1931(Gesha 1931)クリーンなピリッとした酸味、ベルガモットの余韻の長い後味を持つ、スイカズラ、イエロー・フルーツ、ライム、ダーク・チョコレート、ピーチ、アプリコット、ローズ。農園の南部に位置する最も小さな区画。この地域に豊富にある在来種にちなんで名付けられた。
サーマ(Surma)45.91,909-2,063mゲシャ 1931(Gesha 1931)柔らかく、香り高い。 ジャスミン、ダマスカス・ローズ、イチゴ、熟したスイカ、赤リンゴ、繊細なスパイス。眼下の谷の息をのむような景色が特徴のこの区画は、南西部の低地で生活する牧畜民の民族グループ、サーマ(Surma)にちなんで名付けられた。
シェワ・ジバブ(Shewa-Jibabu)48.51,973-2,069mゴリ・ゲシャ(Gori Gesha)スパイス、イチゴ、熟したピーチ、パパイヤ、フローラル、ダーク・チョコレート、タマリンド、オレンジ、ベルガモットが混ざったフレーバ。北向きのこの区画は、農園で働く労働者の多くがやってくる、農園に隣接する山とケベレにちなんで名付けられた。
シャヤ(Shaya)36.51,926-2,069mゴリ・ゲシャ(Gori Gesha)ジャスミン、ベルガモット、オレンジの繊細なアロマ。赤りんごの甘さを持つ、 ダーク・チョコレート、タンジェリン・ジュース、アメリカン・チェリー、糖蜜、マイヤー・レモンの深いフレーバー。コミュニティを統治、助言、協力するメアニット族のリーダーにちなんで名付けられた。
Gesha Village Coffee Estateより

品種

ゴリ・ゲシャ

ゴリ・ゲシャ(Gori Gesha)は、2011年にゴリ・ゲシャの森から採取されたゲイシャです。バンギ(Bangi)、シェワ・ジバブ(Shewa-Jibabu)、シャヤ(Shaya)で栽培されています。

ゴリ・ゲシャは、スイカズラのような甘味とスパイシーさを伴ったフレーバー、ピーチ、ハチミツ、チョコレートのような甘味とコクを特徴としています。

ゲシャ 1931

ゲシャ 1931(Gesha 1931)は、植物の形態、豆の形と大きさ、そしてカップ・プロファイルからパナマ・ゲイシャによく似ている品種として選別されたゲイシャです。オマ(Oma)、ナルシャ(Narsha)、サーマ(Surma)で栽培されています。

ゲシャ 1931は、ジャスミン、ローズ、ピーチ、アプリコットのような繊細で柔らかいフレーバーを特徴としています。

ゴリ・ゲシャよりもゲシャ 1931のコーヒーチェリーのほうが、赤みが強く、ワインのような色味があります。

イルバボールの森

イルバボールの森(Illubabor Forest)は、1974年にイルバボールの森から発見された病害虫に強い品種です。ディッマ(Dimma)、ガイレー(Gaylee)で栽培されています。イルバボールの森は、エチオピアの研究所からもたらされた品種です。

精製方法

精製方法はハニー(Honey、半水洗式)です。

ゲシャ・ヴィレッジ・コーヒー・エステートでは、ウォッシュト(Washed)、ナチュラル(Natural)、ハニー(Honey)の精製方法が採用されています。

ゲシャ・ヴィレッジ・コーヒー・エステートで生産されるコーヒーは、品種、区画によってそれぞれ味に違いがありますが、それらを様々な方法で精製することによって、多様な味わいを生み出しています。

ゲシャ・ヴィレッジ・コーヒー・エステートでは、川の水をできるだけ使用しないようにするために、エコ・パルパーとムシレージ除去装置を使用しています。自然環境の保全のために、再循環と廃水のろ過システムを採用しています。

ハニー精製では、パルパーでパルピング(果肉除去後)、ムシレージ(粘着質)を残したまま11%の水分含有量まで乾燥させます。

帰山人の珈琲遊戯のエチオピア ベンチマジ ゲシャヴィリッヂ バンギ ゴリゲイシャ ハニー 2nd Editionは、ゲシャ・ヴィレッジ・コーヒー・エステートのバンギ(Bangi)区画で栽培されたゴリ・ゲシャです。特徴は以下の通りです。

スイカズラとスパイスの豊かなアロマ。メキシコのモーレ、レッド・フルーツ、ブラック・ティー、糖蜜、ブラック・カラントのニュアンスを持つダークチョコレートとスパイスで満たされた強烈なフレーバー(Expressive aromas of honeysuckle and spices. Intense flavors of dark chocolate and spices infused with notes of Mexican mole, red fruit, black tea, molasses and black currant)

フレーバー・プロファイル、Gesha Village Coffee Estateより

帰山人の珈琲遊戯のエチオピア ベンチマジ ゲシャヴィリッヂ バンギ ゴリゲシャ ハニー 2nd Edition

左 エチオピア ベンチマジ ゲシャヴィリッヂ バンギ ゴリゲシャ ハニー 2nd Edition 右 いきなり俺の男前かふひい
「週刊フレーバー・抽出をじっくり考える」,flavorcoffeeフレーバー放送局 2019年6月26日.

焙煎

私、鳥目散帰山人の焙煎は、特徴があるようです。原則として、焙煎の工程で火力を一切動かしません。主に使っている手廻し釜は、覆いもなく排気装置もなく計器もありません。ほぼ一定の火力で燃えている炎の上に生豆をかざして、焙り焼きをしているだけです。それでも、物によって時によって、気温や湿度によって、一釜ごとに二度と同じ工程にはなりません。一定に決める火加減、焙煎中の手廻しの回転速度、焼き上がりのタイミング…これを調整するだけで私には精一杯です。「一本焼き」と名付けました。この焙煎の手法を他人に強要するつもりもありませんが、どんな焙煎機を使用した場合でも「一本焼き」を基準に考えるのが、私の珈琲の焙煎に対する考え方です。

焙煎のこと」,帰山人の珈琲遊戯 About Kisanjin.

帰山人氏の焙煎は「一本焼き」と名付けた焙煎です。パンチングメッシュの手回しの焙煎機で、最初から最後まで火力調整を一切せず、そのまま焼き上げる方法です。「焙煎の極意はとにかく動かないこと」という標交紀氏の考えに通ずるような焙煎方法です。

帰山人氏が手廻しの焙煎機を手に入れた経緯は以下の通りです。

その1週前の1995年1月10日には、開業して間もないコーヒー店を訪ねた。出色のコーヒーを飲ませる稀代の迷店(?)となる「東明茶館」(都築直行)である。この当時に、私が自宅で焼いていたコーヒーは、手網による直火焙煎(最大約400g投入)が最も多かった。「東明茶館」が使用する焙煎機を見た‘その時’、私は「あっ!」と喫驚の声を上げた。手網をそのまま釜型にしたような、私が理想とする極めて簡素な構造の約1kg容量の直火式焙煎機だったから。後日、この「東明茶館」の焙煎機に倣って、パンチングメッシュの釜部はそのままに電動モーターを止めて手廻しにした仕様を、同じ富士珈琲機械製作所(寺本一彦)へ特注をした。この特製の手廻し釜の焙煎機を私が入手したのは、1996年2月26日である。だが、震災が発した頃の私には、「東明茶館」の釜が垂涎の的だった。

地界の殺戮」,帰山人の珈琲漫考 2015年1月17日.

帰山人氏の焙煎に関する考え方は、理論的に焙煎を考えるカフェ・バッハの田口護氏とは異なり、焙煎にマニュアルはないという考えです。

コーヒーの焙煎とは何か? コーヒーの焙煎でも自動化やIT化が進んでいるものの、コーヒーの香味を好んで楽しむ主体が人間である限り、そのコーヒーを作り出すのは人間である。焙煎の本性は人間の手にあるのだ。つまり、「焙煎手にある人」であり、「バイセンテニアル・マン」(Bicentennial Man)であるから焙煎を200年ほど続けなくてはならない。200年ほど生きてバイセンテニアル・マンとなったアンドリュウ・マーチンは、最期に「リトル・ミス」と言った。だが、もしこれが「焙煎手にある人」であるならば、小さなミスも見逃さずに焙煎を200年ほど続けなくてはならない。コーヒー狂は、手間(てま)隙(ひま)をかけて拵える「シン・コシラ」を作り出す。焙煎にマニュアルはない。コーヒーの焙煎は、人の手にある。

焙煎手にある人」,帰山人の珈琲漫考 2018年11月9日.

私の経験と推論でお答えします。示された時季に限らず、焙煎時の晴雨や寒暑によって、焙煎中の匂いや煙(の出方や量や色)に差があること、また、焙煎したコーヒー豆の質感や匂い(の経時変化の緩急)や抽出したコーヒー液の香味にも違いがあること、それは私も捉えています。雨の日に焼いたものは(私は軽いとは思いませんが)香味が強く濃く出る感じがしますが、4~5日以上の経時変化は(良くも悪くも)激しく感じます。しかしそれは、焙煎する直前(投入時)と直後(冷却時)の豆の状態と(観念的な意味ではなくて科学的な意味での)雰囲気が、晴雨や寒暑によって異なるからだろう、と捉えています。釜であれ網であれ、焙煎中の豆の雰囲気条件が決定的に影響するものとは考えていません。したがって、《どうにか対処できないか》については、晴雨や寒暑によって全く影響を受けない空間で、「事前から生豆を保存し、焙煎機を作動させ、予熱も焙煎も冷却も行い、焙煎豆を保管して、それを抽出して喫飲する」ことの全てを実施するしかありません。つまり、厳密に対処することはほぼ不可能である、と諦めています。色気が無い回答で恐縮ですが、差は認めるが、その因子がどうして質感や香味の差になるのか機序が不明だけれども、そこに物理的かつ化学的な原因以外は認めない、と捉えています。

子ども珈琲電話相談」コメント欄の帰山人氏のコメント,帰山人の珈琲漫考,2016年8月1日

帰山人氏のコーヒーは、深煎りです。

もう一つは、先に触れた手廻し釜(穴あき直火のブタ)による焙煎の場合。
これが私自身も含めて家族や知人と常飲するための珈琲用の焙煎度。
この焙煎度には幅があり、「気まぐれ」なのだが、
概ね2ハゼのピークあたりから2ハゼ終了前まで、
俗にいう焙煎度でいえばフルシティ~フレンチ、ダークローストである。
但し、前述の通り豆色では真の焙煎度は規定できないわけだが、
自身の傾向としては、巷のアグトロン値での判断以上に
「深煎り」の味になる傾向で仕上げている場合が多い、という自覚がある。

私的珈琲論序説〜(3)深煎り派 その2」,帰山人の珈琲漫考,2009年2月6日.

さて、肝心のナゼ「深煎り」か?という理由について。
端的に言えば、私にとってコーヒーは「にがい」ものだからである。
巷間「にがいだけではおいしいコーヒーとは言えない」という話は多い。
特に昨今ではSCAAを筆頭とする味覚基準では、
「質の良い酸味」や「フルーティな味や香り」を重視する傾向が顕著だ。
一概にそれらの味覚要素を否定するつもりも無いが、
私は「にがい」ことを排除していく評価傾向にはなじめない。
「苦味」にも「良い」「悪い」があるとの話もよく聞くし、それには賛同する。
ならば、「良い苦味」を追求することこそがコーヒーのコーヒーたる身上、
それが私を「深煎り派」と自認させている原点の志向である。

私的珈琲論序説〜(3)深煎り派 その2」,帰山人の珈琲漫考,2009年2月6日.

帰山人氏が深煎りを好むところは、幼い頃に漢方を無理やり飲まされたことと愛煙家であることが関係しているはずです。

帰山人氏が愛飲しているタバコは、「アメスピ」(ナチュラル アメリカン スピリット)(無添加で無着香の紙巻き煙草)で、ライターは1941年レプリカモデル(4バレル/7ホール/ラウンドコーナー)のアメスピZIPPO(ジッポー)です。

帰山人氏の一本焼きの詳細は、以下のビデオを参照してください。

「週刊フレーバー・帰山人さんの一本焼きの謎に迫る」,flavorcoffeeフレーバー放送局 2015年7月22日.

エチオピア ベンチマジ ゲシャヴィリッヂ バンギ ゴリゲシャ ハニー 2nd Edition

この2nd Editionの「ゴリ ゲシャ ハニー」は、
1stの「二段焼き」のような火力調整を行わずに
「一本焼き」でやや浅い中深煎りにしました。
これにより、紅茶やマスカットを想わせる香りが
強くなっています(それらが支配的ではありません)。

プライベートオークションを仕掛けて高級コーヒー市場を
席捲するパナマのエスメラルダ農園やグァテマラのインヘルト農園、
そして今やそれらに肩を並べるのではないかと思えるほど
破竹の勢いで新興するエチオピアのゲシャヴィリッヂ農園。
そのゲシャ(ゲイシャ)種が「珈琲遊戯」に登場です。
ゲイシャの故郷とも伝えられるゴリゲシャの森で栽培されたコーヒー、
これを小賢しくもハニー精製したエゲツナイ高級コーヒーです。
はっきり言って、エチオピア・モカとしてトテツモナク強烈でも、
ゲシャ(ゲイシャ)種としてトンデモナク極致でもありません。
でも、それを他に類のない表情豊かな香味に仕上げることに、
「珈琲遊戯」は挑みました。実に面白い風味が感じられます。

フレーバー通販ページより

ゲイシャのフレーバーが印象的です。そこにハチミツのような甘味やチョコレートのようなまろやかさ、マスカットのような爽やかさが見え隠れして面白いです。深煎りですが、苦味はそれほど強くなく、ゲイシャの個性がとてもうまく引き出されています。

帰山人の珈琲遊戯の三代目いきなり俺の男前かふひい

インド マラバール AA モンスーン(曝気精製) 50%
コロンビア ナリーニョ スプレモ ウォッシュト(湿式精製) 30%
コスタリカ サンタアニタ ホワイトハニー(パルプトナチュラル精製) 20%

直火の手廻し釜で火力一定の「一本焼き」を2釜焼きました。
1釜目は、インド マラバールを16分45秒で深煎りに。
2釜目は、コロンビア ナリーニョを先行した釜へ
コスタリカ サンタアニタを1分30秒後に後追い投入して、
計16分45秒で深煎りに。
この2釜を焙煎後に混ぜて、5対3対2のブレンド珈琲豆に。

インドの力強くクセのある香味に、コロンビアの滑らかな味わいと、
コスタリカの芳醇な甘さが加わり、3つの豆の産地と精製の違いが
一つに溶け合って今まで味わったことのない独特の風味を醸します。
苦い、けれど苦くて甘い、いや甘くて甘い…男前の味をご笑味ください。

フレーバー通販ページより

キレイな苦味が印象的です。爽やかさを感じる苦味が嫌味なく主張するブレンドです。

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