エチオピア ゲシャ・ヴィレッジ・コーヒー・エステート

エチオピア ゲシャ・ヴィレッジ・コーヒー・エステート

ゲシャ・ヴィレッジ・コーヒー・エステート

「Gesha Village Intro Video」,Willem Boot 2017年3月25日.

ゲシャ・ヴィレッジ・コーヒー・エステート(Gesha Village Coffee Estate)は、エチオピア(Ethiopia)南部諸民族州(SNNPR)(Southern Nations, Nationalities, and People's Region)西オモ地方(West Omo Zone)に位置する農園です。南スーダンの国境から数kmのジャングルに、471ヘクタールの広大な農園が広がっており、そのうちの320ヘクタールでコーヒーが栽培されています。

左 レイチェル 右 アダム 出典:Gesha Village Coffee Estate

ゲシャ・ヴィレッジ・コーヒー・エステートは、アメリカ生まれのアダム・オーバートン(Adam Overton)と、エチオピア生まれのレイチェル・サミュエル(Rachel Samuel)夫妻によって経営されています。

アダム&レイチェル夫妻は、2007年にエチオピア政府から依頼されたコーヒーのドキュメンタリー映画製作をきっかけに、2011年からコーヒー農園の開拓を始めました。アダム&レイチェル夫妻は、現地の先住民であるメアニット族(Meanit People)と対話することで、彼らの理解、協力を得ることに成功しました。

アダム&レイチェル夫妻は、「ブート・コーヒー(Boot Coffee)」を運営しているコーヒー教育者、コンサルタントのウィレム・ブート(Willem Boot)(または、ウィリアム・ブート)から、高品質なコーヒーの栽培についての基礎を学びました。

ウィレムは、2006年11月に「ゲシャを目指す旅」を企画しました。

 二〇〇六年一一月、著名なコーヒーコンサルタントのウィレム・ブートが企画した調査旅行も、それが目的だった。米国カリフォルニア州在住のドイツ人であるウィレムは、ゲイシャに深く入れ込むあまり自身もコーヒー農家になり、投資目的で購入していたパナマの土地にゲイシャの木を植えていた。事前の調べで、ケファ(kefa)もしくはカファ(kafa)として知られる町の近くにはゲシャ(Gesha)と呼ばれる町が少なくとも三つあることがわかっていた。ウィレムは、そのすベてを訪れ、ゲイシャ特有の細長い葉をつけたひょろ長いコーヒーノキを探すつもりだった。

 ウィレムの指揮のもと西洋人とエチオピア人を乗せた三台のキャラバンが編成され、ゲシャの町からゲシャの町へと金の実のなるスペシャルティコーヒーの木を探す旅が実行された。この調査旅行は、米国の人気リアリティ番組「サバイバー」を地で行くような旅となった。参加者は極限まで追い込まれ、人間の醜さと尊さを曝(さら)け出すことになる。遠路はるばるエチオピア南部の高地のとりでまで、車では進行不能な岩だらけのでこぼこ道を進むのだ。途中、降りやまない豪雨に見舞われ、事態はますます悪化した。沼のような泥道を足首まで沈ませながら六時間歩き続けるなかで年長のエチオピア人が一人、脚を痛めてしまった。その後、ある町ではエチオピアの貴重なコーヒー資源を盗み出すつもりかと地元の役人に責められ、追い出された。アフリカでも最悪の部類に入ると思われるホテルで一晩過ごしたこともあった(トイレも穴があるだけで、強烈な臭いを放っていた)。

マイケル・ワイスマン(2018)『スペシャルティコーヒー物語: 最高品質コーヒーを世界に広めた人々』久保 尚子(訳), 旦部 幸博 (監修), 楽工社.p.80-81

アダム&レイチェル夫妻は、ブートからコーヒー栽培の基礎について学んだ後、エチオピアに戻り、何ヶ月もかけてゲイシャの栽培に適した土地を探し求めました。彼らは標高の高い高地、豊富な降水量、温暖な気候、その他の自然条件が揃った土地を、ベンチ・マジ地方(Benchi-Maji Zone)に見つけました。

彼らは、この土地から約20㎞離れた場所に隣接する「ゴリ・ゲシャの森(Gori Gesha Forest)」というジャングルから、ゲイシャに似たコーヒーを採取しました。このコーヒーは、ゴリ・ゲシャ(Gori Gesha)という品種として栽培されています。

アグロフォレストリー

ゲシャ・ヴィレッジ・コーヒー・エステートはアグロフォレストリーを採用しており、コーヒーはシェード・ツリーの木陰で栽培されています。コーヒーの持続可能な生態系を創造するために、3万本以上の在来種のシェード・ツリーが植えられています。

アダム&レイチェル夫妻が、ゲシャ・ヴィレッジ・コーヒー・エステートを建設した土地にたどり着いたとき、土地の約25%の森林が破壊されていました。そこでアグロフォレストリーの専門家による環境調査を実施し、この土地の環境に適合する在来種を用いテロワールを活性化するように注意を払いました。農園には、1ヘクタールあたり2,000本の適度な密度で在来種を植えられています。

ゲシャ・ヴィレッジ・コーヒー・エステートは、標高1,909m - 2,069mの高地で、約70万本のコーヒーノキが栽培されています。収穫期は12月初旬から1月中旬までです。農園の設立から6年目の2017年には、1,200袋を超える生産量(生産2年目)となりました。

8つの区画と品種

8つの区画と品種 出典:Gesha Village Coffee Estate

ゲシャ・ヴィレッジ・コーヒー・エステートは、8つの区画(Block)で、3品種が栽培されています。各区画で生産されたコーヒーは、それぞれにタグが付けられ、生産履歴の追跡が可能になっています。

区画

農園地域ヘクタール標高品種フレーバー・プロファイル区画の説明
バンギ(Bangi)541,911 - 2,001mゴリ・ゲシャ(Gori Gesha)スイカズラとスパイスの豊かなアロマ。メキシコのモーレ、レッド・フルーツ、ブラック・ティー、糖蜜、ブラック・カラントのニュアンスを持つダークチョコレートとスパイスで満たされた強烈なフレーバー。農園の東に隣接するバンギ・チチュル(Bangi-Chichuru)からは、農園で働く労働者の大多数がやってくる。
ディッマ(Dimma)28.71,966 - 2,019mイルバボールの森(Illubabor
Forest)
鋭い酸味と爽やかな柑橘系の後味を持つ、コーヒーの花、ストーン・フルーツのいきいきとしたフレーバー・プロファイル。農園の北に位置するディッマの有名な金鉱の町に因んで名付けられた。
ガイレー(Gaylee)34.81,916 - 1,982mイルバボールの森(Illubabor
Forest)
ジャスミンのフローラルな印象とストーン・フルーツの甘味で満たされた、マジパン、レモングラス、ハイビスカスの強烈な甘味、フルーツとスパイスのしっかりと結びついたプレーバー・プロファイル。ゲシャ・ヴィレッジの水源であるイエゴルドン川(Yetgordon River)が流れている、公式にはガイレー・ゲシャ(Gaylee-Gesha)と呼ばれる、農園に隣接する南東向きのケベレ。
オマ(Oma)67.61,931 - 2,040mゲシャ 1931(Gesha 1931)ジャスミンの深みのある香りのティー・ローズのエキゾチックなアロマ。 ハチミツの甘味で支えられたピーチ、アプリコット、砂糖漬けのフルーツ、メロン、温州みかんの繊細なフレーバー。メアニット(Meanit)族に尊敬され愛される宗教指導者にちなんで名付けられた。
ナルシャ(Narsha)5.31,963 - 1,977mゲシャ 1931(Gesha 1931)クリーンなピリッとした酸味、ベルガモットの余韻の長い後味を持つ、スイカズラ、イエロー・フルーツ、ライム、ダーク・チョコレート、ピーチ、アプリコット、ローズ。農園の南部に位置する最も小さな区画。この地域に豊富にある在来種にちなんで名付けられた。
サーマ(Surma)45.91,909 - 2,063mゲシャ 1931(Gesha 1931)柔らかく、香り高い。 ジャスミン、ダマスカス・ローズ、イチゴ、熟したスイカ、赤リンゴ、繊細なスパイス。眼下の谷の息をのむような景色が特徴のこの区画は、南西部の低地で生活する牧畜民の民族グループ、サーマ(Surma)にちなんで名付けられた。
シェワ・ジバブ(Shewa-Jibabu)48.51,973 - 2,069mゴリ・ゲシャ(Gori Gesha)スパイス、イチゴ、熟したピーチ、パパイヤ、フローラル、ダーク・チョコレート、タマリンド、オレンジ、ベルガモットが混ざったフレーバ。北向きのこの区画は、農園で働く労働者の多くがやってくる、農園に隣接する山とケベレにちなんで名付けられた。
シャヤ(Shaya)36.51,926 - 2,069mゴリ・ゲシャ(Gori Gesha)ジャスミン、ベルガモット、オレンジの繊細なアロマ。赤りんごの甘さを持つ、 ダーク・チョコレート、タンジェリン・ジュース、アメリカン・チェリー、糖蜜、マイヤー・レモンの深いフレーバー。コミュニティを統治、助言、協力するメアニット族のリーダーにちなんで名付けられた。
Gesha Village Coffee Estate

品種

ゴリ・ゲシャ

ゴリ・ゲシャ(Gori Gesha)は、2011年にゴリ・ゲシャの森から採取されたゲイシャです。バンギ(Bangi)、シェワ・ジバブ(Shewa-Jibabu)、シャヤ(Shaya)で栽培されています。

ゴリ・ゲシャは、スイカズラのような甘さとスパイシーさを伴ったフレーバー、ピーチ、ハチミツ、チョコレートのような甘さとボディを特徴としています。

ゲシャ 1931

ゲシャ 1931(Gesha 1931)は、植物の形態、豆の形と大きさ、そしてカップ・プロファイルからパナマ・ゲイシャによく似ている品種として選別されたゲイシャです。オマ(Oma)、ナルシャ(Narsha)、サーマ(Surma)で栽培されています。

ゲシャ 1931は、ジャスミン、ローズ、ピーチ、アプリコットのような繊細で柔らかいフレーバーを特徴としています。ゴリ・ゲシャよりもゲシャ 1931のコーヒーチェリーのほうが、赤みが強く、ワインのような色味があります。

イルバボールの森

イルバボールの森(Illubabor Forest)は、1974年にイルバボールの森から発見された病害虫に強い品種です。ディッマ(Dimma)、ガイレー(Gaylee)で栽培されています。イルバボールの森は、エチオピアの研究所からもたらされた品種です。

精製方法

ゲシャ・ヴィレッジ・コーヒー・エステートでは、ウォッシュト(Washed)、ナチュラル(Natural)、ハニー(Honey)の精製方法が採用されています。

ゲシャ・ヴィレッジ・コーヒー・エステートで生産されるコーヒーは、品種、区画によってそれぞれ味に違いがありますが、それらを様々な方法で精製することによって、多様な味わいを生み出しています。

ゲシャ・ヴィレッジ・コーヒー・エステートでは、川の水をできるだけ使用しないようにするために、エコ・パルパーとムシラージ除去装置を使用しています。自然環境の保全のために、再循環と廃水のろ過システムを採用しています。また、ウォッシュト精製で生まれたコーヒー・パルプは、すべてを堆肥にします。2018年には、ナチュラル精製用の新しい脱穀装置を設置し、脱穀したハスクは、マルチングや燃料に使用されます。

オークション・ロットと非オークション・ロット

ゲシャ・ヴィレッジ・コーヒー・エステートで生産されるコーヒーは、オークション・ロットと非オークション・ロットに分けられます。アディス・アベバにあるカッピング ・ラボで、オークション・ロットと非オークション・ロットが選別されています。

オークション・ロット

ゲシャ・ヴィレッジ・コーヒー・エステート オークション 出典:Gesha Village Coffee Estate

ゲシャ・ヴィレッジ・コーヒー・エステートでは、2017年からプライベート・オークションが始まりました。ゲシャ・ヴィレッジ・コーヒー・エステートで生産されたコーヒーから、オークション用に90kgから120kgの最高品質のコーヒーを選別します。これらのコーヒーがカッパーとパートナーによって評価され、約3ヶ月かけてオークション用のコーヒーを選別します。

ゲシャ・ヴィレッジ・コーヒー・エステートは、2017年からゲシャ・ヴィレッジ財団(The Gesha Village Foundation)を組織し、農家へのワークショップを通じて教育と情報交換の機会を提供しています。オークションで落札された1ポンドあたり1ドルが、このプログラムの資金となります。

非オークション・ロット

レアリティーズ

レアリティーズ(RARITIES)は、ゲシャ・ヴィレッジ・コーヒー・エステートで生産されるコーヒーの約10%を占めています。非オークション・ロットでは最高品質のコーヒーであり、バリスタたちが競技会で頻繁に使用数するマイクロロットです。

グロワーズ・リザーブ

グロワーズ・リザーブ(GROWERS RESERVE)は、ゲシャ・ヴィレッジ・コーヒー・エステートで生産されるコーヒーの約15%を占めています。SCA採点基準で88点以上の、優れたフレーバーとカップ・クオリティを持つマイクロロットです。

シングル・テロワール

シングル・テロワール(SINGLE-TERROIR)は、ゲシャ・ヴィレッジ・コーヒー・エステートの中の1つの農園で生産されたコーヒーです。農園名、品種、精製日などが追跡可能です。

チャカ

チャカ(CHAKA)は、ゲシャ・ヴィレッジ・コーヒー・エステート全体で生産されたコーヒーのブレンドです。ウォッシュト精製かナチュラル精製で、コーヒーが提供されています。

ゲシャ・ヴィレッジ・コーヒー・エステート Gesha Village Coffee Estate:https://real-coffee.net/category/coffee-origin/africa/ethiopia/southern-nations-nationalities-and-peoples-region/west-omo-zone/gesha-village-coffee-estate

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