
グルメコーヒーの潜在能力開発
グルメコーヒーの潜在能力開発
グルメコーヒーの潜在能力開発(Development of Gourmet Coffee Potential)は、1997年から2000年にかけて実施されたパイロットプロジェクトである。ブラジル、ブルンジ、エチオピア、パプアニューギニア、ウガンダにおいて、グルメ品質の新しいコーヒーを少数特定し、市場に投入することを目的とした。目的は、品質が生み出す付加価値を価格プレミアムという形で実証することであった。この取り組みで得られた知見は、すべての国際コーヒー機関(ICO)(International Coffee Organization)加盟国に共有される予定であった。当初の実施期間は30か月であったが、後に3年間に延長され、2000年4月に終了した。
本プロジェクトは、1995年5月に開催された国際コーヒー機関(ICO)の第67回理事会で承認された。国際コーヒー機関(ICO)は監督機関として機能し、資金は一次産品共通基金(Common Fund for Commodities)から100万米ドル、プロジェクト参加国から30万米ドル、国際コーヒー機関(ICO)自身から10万米ドルが拠出された。実施機関は国際貿易センター(UNCTAD/WTO)であった。
成果としては、ブルンジから3種類、エチオピアから4種類、パプアニューギニアから2種類、ウガンダから1種類の新しいアラビカ種コーヒー、計10種類が発見され、市場に投入されたことが挙げられる。ウガンダではウォッシュト・ロブスタの試験栽培が行われ、また国際カッピングコンテストにおいて10種類のブラジル産コーヒーが選定された。アフリカおよびアジアのコーヒーは、エチオピアの2農園を除き、小規模生産者グループから調達された。一方、ブラジルのコーヒーは大規模農園で生産されたため、生産者名を明示して発表することが可能であった。さらに全日本コーヒー協会およびアメリカスペシャルティコーヒー協会(SCAA)(Specialty Coffee Association of America)の協力を得て、アメリカ合衆国と日本で展示会や試飲セミナーが開催され、プロジェクトコーヒーは広く紹介されたことで、生産者と輸入業者や焙煎業者との間に継続的な関係が築かれた。
ブラジル産の10種類のコーヒーはインターネットオークションに出品され、欧米のバイヤーによって高値で落札された。2000年4月末時点におけるプロジェクトコーヒーの総販売量はおよそ1万袋に達し、ニューヨーク相場に対して1ポンドあたり10〜35セントのプレミアム価格で取引された。インターネットオークションにおける落札価格はさらに高く、そこには「有名銘柄」としての付加価値が強く反映されていた。また、すべてのプロジェクトコーヒーには商標名とロゴが開発され、ブラジルにおいては「マーク・オブ・エクセレンス(Mark of Excellence)」が採用された。アメリカスペシャルティコーヒー協会(SCAA)は、本プロジェクトの成果を基盤として、他国を巻き込んだ新たなプロジェクトを推進し、その理念のさらなる拡大を図る意向を示した。
このプロジェクトの意義は、高品質コーヒーを特定し、その販売促進を行うことで、品質が生み出す付加価値を証明する点にあった。また、高級コーヒーへの投資が投資対効果(ROI)を生み得ることを示した点にも大きな価値があった。さらに、本プロジェクトは他の輸出国に対して、効果が実証されたキャンペーンの枠組みや現場での実施手法を提示するとともに、各国の事情に応じて適応可能なモデルを提供する役割を果たした。
2000年11月24日、国際貿易センター(UNCTAD/WTO)と国際コーヒー機関(ICO)との間で覚書(Memorandum of Understanding between the International Trade Centre UNCTAD/WTO and the International Coffee Organization)が締結された。