セクシーコーヒー、あるいは政治的に正しいコーヒー

セクシーコーヒー、あるいは政治的に正しいコーヒー

セクシーコーヒー、あるいは政治的に正しいコーヒー

Equal Exchange Ad in Mother Jones Magazine, Sept-Oct, 1999, p. 8

「政治には非常に多くの問題があり、時には退屈です。気候変動のような大規模な問題に取り組むとき、それは楽しくなければならず、クールでなければなりません。それもセクシーでなければなりません。(In politics there are so many issues, sometimes boring. On tackling such a big-scale issue like climate change, it's got to be fun, it's got to be cool. It's got to be sexy too.)」 - 小泉 進次郎

メジャーO(Measure O)は、2002年にリック・ヤング(Rick Young)によって起草された、バークレー市内の事業者が販売する淹れたてコーヒー飲料を、セクシーコーヒー(SEC-C Coffee)(法案では、「オーガニック」「フェアトレード」「シェードグロウン」(本イニシアチブで定義される用語)のいずれか、またはそれらの組み合わせとして認証されたコーヒー豆から淹れたもの」)に限定することを目的としたイニシアチブ条例案である(セクシーコーヒー(SEC-C Coffee)とは、「社会的および/または環境的に配慮して栽培されたコーヒー(Socially and/or Environmentally Consciously Cultivated Coffee)」の略称であり、セクシーコーヒー(sexy coffee)」と発音する)。

ヤングは当時36歳で、カリフォルニア大学バークレー校ロースクール(ボルト・ホール)を卒業したばかりの新人弁護士であった。在学2年目の時、環境法クラブの共同代表を務めていた彼は、学内のカフェテリアでフェアトレード商品がほとんど提供されていないことに疑問を抱いた。善意だけに頼るのではなく、社会全体で責任を共有しなければ、搾取はなくならないと彼は確信していた。

ヤングは、約3,000人の署名を集め、住民発議によってメジャーOを投票にかけた。この着想のきっかけは、政治広告で「すみません、ウェイター。このコーヒーには何千もの小作農の血と悲惨が染み込んでいる(Excuse me waiter, there's the blood and misery of a thousand small farmers in my coffee)」と訴えるシーンを目にしたことだった。

フェアトレードコーヒー運動は、世界的な価格下落に苦しむ小規模農家を支援するため欧州で広まり、アメリカ合衆国でも徐々に注目を集め始めていた。フェアトレード商品は協同組合による民主的な運営や年次監査を経て、公正な最低価格が保証される。一方、シェードグロウンは熱帯雨林の樹冠を生かすことで渡り鳥の生息地を守り、オーガニックは農薬を使わないといった特徴を持つ。こうした持続可能なコーヒーは依然として米国市場のごく一部にすぎなかったが、活動家によって強力に推進されていた。

実際、バークレーはすでにこの3年前の1999年、市の購買をフェアトレードに義務付ける条例を可決していた。しかし、その立案者であったシャーリー・ディーン(Shirley Dean)市長は、ヤングの提案は監視体制の拡大を招き、現実的に運用が難しいと警告した。また、社会的意識が高いバークレーの住民に合わせ、ほとんどのカフェでは既にフェアトレード品を一定数導入している現状も指摘した。

それでもメジャーOは、コーヒー消費制限案に対する初の有権者による試金石となったこともあり、全米、さらには世界的な注目を浴びることとなった。バークレーの動向は、地政学的な近隣地域全体の動向を左右しうる。バークレーは、ブドウ不買運動や反アパルトヘイト運動を最初に支持した都市であり、今回の試みもまた先駆的な動きとして受け止められたのである。ヤングは、この条例がコーヒーの選択肢を狭める点を認めつつも、消費者の選択を自由と定義するのは「自由の本質を歪めた病的な概念だ」と述べていた。支持派はこれを、かつて無鉛ガソリンや発泡スチロール製コーヒーカップの禁止が受け入れられた事例を引き合いに出して正当性を訴えた。

一方、反対派は、世界のフェアトレード認証農家の生産量をすべて買い取るだけの需要は存在しないと主張した。さらにコーヒー業界大手のピーツやスターバックス、全米コーヒー協会は強く反発し、反Oキャンペーン側に資金を投じた。反Oキャンペーン側は、警察に手錠をかけられて連行される男性の写真が掲載されたチラシをバークレーの全世帯に配布した。そこには「罪状:間違った種類のコーヒーを提供したこと」「刑罰:6ヶ月の禁固刑」と記されていた。こんな理不尽な法律が本当に認められていいのか、という強い疑問を投げかけている。

こうして賛否が激しく対立する中、2002年11月5日、メジャーOは圧倒的多数で否決された。

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