ニカラグア カップ・オブ・エクセレンス
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ニカラグア カップ・オブ・エクセレンス

ニカラグア カップ・オブ・エクセレンス

1990年代末から2000年代初頭にかけて、ニカラグアは深刻な自然災害と経済危機に直面し、コーヒー産業は壊滅的な打撃を受けた。1998年、ハリケーン・ミッチ(Hurricane Mitch)が中米を数日にわたり襲い、特にホンジュラスとニカラグアを中心に11,000人以上の死者を出した。この災害により、土砂崩れや強風、豪雨が相次ぎ、多くのコーヒー農園が流失し、ニカラグアでは生産量の約30%が失われた。道路や橋などのインフラも破壊され、農業活動全般が停滞した。

災害発生までは、世界最大のコーヒー生産国であるブラジルの大豊作によりコーヒー価格は抑制されていたが、この被害によりコーヒーの世界価格は22%の価格上昇が見られた。コーヒーの収穫損失が最も深刻なのはニカラグアで、生産量の20~30%が失われたと推定された。グアテマラでは収穫量の最大25%が失われ、コスタリカやエルサルバドルを含む他の地域でも数十万袋規模の損失が発生した。

一方で、ミッチがもたらした壊滅的な被害の中から一つだけ前向きな進展があった。米国政府は被災地支援の一環として中米諸国と協力し、コスタリカに衛星受信機を設置した。この受信機によって、中米諸国全体がインターネットを通じて気象データを共有できるようになった。その後、米国海洋大気庁(NOAA)(National Oceanic and Atmospheric Administration)の気象データ・画像配信部門(NESDIS)(National Environmental Satellite, Data, and Information Service)は、世界気象機関(WMO)(World Meteorological Organization)と連携し、GEONETCast Americas(GNC-A)と呼ばれる衛星ベースのリアルタイムグローバルデータ配信ネットワークを構築した。このネットワークによって、米州諸国は米国海洋大気庁(NOAA)のGOES(Geostationary Operational Environmental Satellite)衛星および共同極軌道衛星システム(JPSS)(Joint Polar Satellite System)から気象情報を迅速に取得する体制を整えることができたのである。

ニカラグアでは、ハリケーンの被害の数年後には深刻な干ばつが発生し、これは他国での生産過剰によるコーヒー価格暴落と時期を同じくした。2000年代初頭の国際的なコーヒー価格の低迷は生産者を直撃し、多くの農家が破産に追い込まれた。ハリケーンと干ばつという二重の災禍により農園再建は困難を極め、多くの農民は生計の道を失った。中米の大半を襲った干ばつは、洪水、信用収縮、そして世界的なコーヒー価格の暴落と相まって、特にニカラグアの農村部から移住した労働者層に失業と飢餓をもたらした。国連世界食糧計画(WFP)(World Food Programme)の推計によれば、ニカラグアおよびホンジュラスにおいて約61万人もの農民が影響を受けた。

こうした困難な状況の中で、ニカラグアのコーヒー産業復興への新たな道が模索された。2002年、ニカラグアはカップ・オブ・エクセレンス(CoE)(Cup of Excellence)を開催する第三の国となった。アライアンス・フォー・コーヒー・エクセレンス(Alliance for Coffee Excellence)は、ニカラグアの産業再興を支援する目的でニカラグアにカップ・オブ・エクセレンス(CoE)を導入した。初回には285のサンプルが提出され、そのうち23のサンプルが最高品質と認定され国際オークションに出品された。なかでもヒノテガの小規模生産者、アルトゥーロ・ゴンサレス(Arturo Gonzalez)とエリセオ・ルンビ(Eliseo Lumbi)が生産したコーヒーは、1ポンドあたり11.75ドルという当時の市場価格の約20倍にあたる最高値で落札された。これはインターネットを通じて取引されたコーヒーとして当時の世界最高価格であり、ニカラグア産コーヒーが国際的に高く評価される契機となった。

この成功の背後には、非営利団体テクノサーブ(TechnoServe)の支援があった。テクノサーブはニカラグアスペシャルティコーヒー協会(英語:Specialty Coffee Association of Nicaragua スペイン語:Asociación de Cafés Especiales de Nicaragua)および国家競争力プログラム(英語:National Competitiveness Program in Nicaragua スペイン語:Programa Nacional de Competitividad)と連携し、コンテスト開催を主導した。また、コーヒー品質向上を目指した生産者支援を行うとともに、プロクター・アンド・ギャンブル社(P&G)(Procter & Gamble Company)から150万ドルの支援を受け、小規模農家が低迷する世界市場価格に耐えうる体制を築くための各種プログラムを展開した。2004年のカップ・オブ・エクセレンス(CoE)開催時には、テクノサーブが主催者間の調整や結果監査を担当し、プライスウォーターハウスクーパーズ(PricewaterhouseCoopers)と協働してイベント運営、オンラインオークション監督、採点結果の管理などを担った。

ニカラグアのカップ・オブ・エクセレンス(CoE)は記録を更新し続けている。2020年には平均落札価格が1ポンドあたり12ドルを超え、2025年にはヌエバ・セゴビア産のゲイシャが1ポンドあたり88.20ドルで落札された。優勝ロットは一貫してヌエバ・セゴビアから生まれている。

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