
讃喫茶室 尾山台と帰山人の珈琲遊戯のタンザニア モンデュール AAです。讃喫茶室 尾山台は、2018年に開業した東京都世田谷区の尾山台駅近くにある自家焙煎珈琲店です。兵庫県宝塚市の自家焙煎珈琲店 讃喫茶室の姉妹店です。代表は浅野 嘉之氏、店主は泰圓澄氏です。
帰山人の珈琲遊戯は、2017年に始まった鳥目散 帰山人氏による焙煎豆販売です。
このページのコンテンツ
タンザニア モンデュール AA


タンザニア
タンザニア(Tanzania)はアフリカ大陸の東海岸にある共和国です。周辺7ヶ国に囲まれており、一部インド洋に接しています。首都はドドマ(Dodoma)です。
タンザニアのコーヒー生産地域は北部・南部・西部に大きく分類されます。国土の大半がサバナ気候に属しており、雨季と乾季が明確に分化しています。中央部がステップ気候の乾燥帯、南部と北部の高地山岳部が温暖湿潤気候で比較的高温多雨です。降水量は海岸部やビクトリア湖岸、キリマンジャロ周辺で1,000mmを超えますが、内陸部では約500mmと乾燥しています。
タンザニアのコーヒー生産者は小規模農家がほとんどです。コーヒー生産の70%がアラビカ種、30%がロブスタ種です。タンザニアのアラビカ種はキリマンジャロ北部、アルーシャ、ムベヤ南部、ムビンガ、キゴマ西部が主要産地です。
タンザニア北部には大規模農園が多く存在し、南部には小規模生産者が多く存在しています。日本では「キリマンジャロ」ブランドで知られる北部のアラビカ種コーヒーが有名ですが、近年は南部で生産されるアラビカ種のスペシャルティコーヒーに注目が集まっています。
タンザニアのコーヒーは、かつてはタンザニアのコーヒー全体を統括するタンザニア・コーヒー・ボード(Tanzania Coffee Board(TCB))を介してしかコーヒーの取引ができませんでしたが、1994年にコーヒーの流通の自由化により、一部で農協や農家との直接取引が可能になりました。
しかし、2018年にタンザニア政府はコーヒー規制の変更を行い、現在コーヒー生産者は農業マーケティング協同組合(Agricultural Marketing Cooperative Societies(AMCOS))と呼ばれる組織にのみ、コーヒーを販売することができます。
キリマンジャロ
日本では、キリマンジャロ・ブランドのコーヒーは、以下のように定義されています。
9) キリマンジャロ : タンザニアにて生産されたアラビカコーヒー豆をいう。ただし、ブコバ地区
(別表2)産地、品種、銘柄の区分及び範囲の例示 「レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約(平成30年6月更新)」
でとれるアラビカコーヒー豆は含まない。
キリマンジャロ(Kilimanjaro)の山は、タンザニア北東部にある標高5895メートルのアフリカ大陸の最高峰です。スワヒリ語で、「キリマ(Kirima)」は「山」、「ンジャロ(Njaro)」は「輝く」の意味です。日本ではアーネスト・ヘミングウェイ(Ernest Hemingway)原作の映画「キリマンジャロの雪(The Snows of Kilimanjaro)」によって、一躍有名になりました。
キリマンジャロ・ブランドのコーヒーは、すべてがキリマンジャロの麓で生産されている訳ではありません。タンザニア産のアラビア種コーヒーのほとんどが、「キリマンジャロ」を名乗ることができるためです。
キリマンジャロは、日本で特に高く評価されているコーヒーです。品質以上にブランドが先行するコーヒーの1つです。
【キリマンジャロ】
日本のコーヒー業界が生み出した三大銘柄の一つ。歴史的にヨーロッパ市場では(酸味の評価で)明らかに隣国ケニア産に劣ると二等扱いされたタンザニア産のコーヒーを、山とは無関係の中南部低地で産出されるさらに低品質の豆も含めて日本で独自にブランド化したもの。
類義語:コシヒカリなど
「悪魔の辞典」,帰山人の珈琲漫考 2009年10月13日.
*タンザニアとキリマンジャロのコーヒーについては、旦部幸博氏の百珈苑BLOGの2010年6月7日エントリー、「「ドイツ領東アフリカ」時代のタンザニア」、「イギリス領タンガニイカから現在へ」に解説があります。
モンデュール・コーヒー・エステート
歴史
モンデュール・コーヒー・エステート(Mondul Coffee Estates)は、キリマンジャロの裾野にあるタンザニア最大のコーヒー産地アルーシャ地区(Arusha Region)の近くに位置している農園です。
モンデュール・コーヒー・エステートは、1931年にイタリア人のヴォットーリオ・ダヴィコ・ディ・クィッテンゴ伯爵(Count Vottorio Davico di Quittengo)によって開発されました。彼はウガンダの中央アフリカ探査会社で働いた後、土地を購入する援助をするように彼のイタリアの家族を説得し、モンデュール・コーヒー・エステートを設立しました。
ダヴィコ伯爵は1983年に亡くなり、農園を見下ろすモンデュール山麓(Mount Monduli)の最高峰の丘に埋葬されました。その後、農園は彼の2人の息子によって引き継がれました。
モンデュール・コーヒー・エステートは2007年に株主グループに買収され、ブルカ・コーヒー・エステート(Burka Coffee Estates)の管理下に置かれるようになりました。ブルカ・コーヒー・エステートを運営する「ブルカ・コーヒー・エステート株式会社(Burka Coffee Estates Ltd.)」は、ブルカ・コーヒー・エステート、モンデュール・コーヒー・エステート、セリアン・コーヒー・エステート(Selian Coffee Estates)の3つの農園で構成されています。
コーヒー

モンデュール・コーヒー・エステートは、標高1,650m-1,840m、モンデュール山麓(Mount Monduli)の斜面に位置しています。周辺には、セレンゲティ国立公園(Serengeti National Park)、キリマンジャロ国立公園(Kilimanjaro National Park)、ンゴロンゴロ自然保護区(Ngorongoro Conservation Area)などが広がる自然豊かな場所です。
農園は1999年と2001年にタンザニアコーヒー協会(Tanzania Coffee Association(TCA))のコンクールで金賞を2回受賞している経歴があり、タンザニアを代表する優良農園の1つです。
モンデュール山麓は、浸透性が高く、優れた水はけと保水機能を兼ね備えた深い火山灰層と腐葉土、豊富な地下水に恵まれています。また赤道直下で、高い標高が昼夜の寒暖差を生み出し、高品質なコーヒー栽培に適した環境です。
コーヒーノキは不要な新芽などに養分を取られないよう、随時剪定を施します。また、コーヒーノキは年を経るごとに木そのものの生産性が下がり、コーヒーの品質が落ちるため、5-6年に1度、地上約30cmくらいの位置で幹を一旦切るカットバックという剪定を行います。カットバック後に伸びてきた芽のなかから健全な芽だけを残して、また新たに実のなる木に育てていくのです。
モンデュール・コーヒー・エステートには植木職人が常駐していて、農園をカットバック1年未満のエリア、1年後、2-3年後、来年カットバック予定の4つのグループに分け、収穫サイクル、品質の管理を行っています。
コミュニティ
モンデュール・コーヒー・エステートでは、農園の経営者から労働者まで全員が生活しており、1つのコミュニティを形成しています。
労働者には無料の住宅、医療サービス、スポーツ施設、無料の学校教育を提供されています。収穫期には、近隣の村から250人のピッカーが雇われます。
農園の従業員としてマサイ族が雇われています。
品種
品種はN39とKP423です。
ともにブルボン(Bourbon)の選抜種で、優れたカップクオリティを持つと言われています。
精製方法
精製方法はウォッシュト(Washed、湿式)です。
タンザニアでは、タンザニア北部のタリメ地区(Tarime District)で、伝統的にナチュラル(Natural、乾式)精製のコーヒーが生産されていますが、日本に流通するタンザニアコーヒーの大部分は、ウォッシュト精製のコーヒーです。
農園で使用される水は、自然から湧き出る2つの泉から供給されています。
規格(グレード)
キリマンジャロ・コーヒーは、コーヒー豆の大きさと欠点豆の混入度合いによって格付けされます。
モンデュール AAは、AAグレードの最高等級です。
味
シトラス系の上品で爽やかな酸味が特徴です。キリマンジャロブランドのコーヒーは、豊かな酸味で知られています。滑らかな口当たりで、クリアな後味です。
讃喫茶室 尾山台と帰山人の珈琲遊戯のタンザニア モンデュール AA


同じ深煎りでも、帰山人の珈琲遊戯の方が少し深めの焙煎に見えます。帰山人氏の深煎り「一本焼き」珈琲は、独特のフレグレンスがあります。
焙煎
讃喫茶室 尾山台で使用されている焙煎機は、富士ローヤル R-103です。浅野氏は富士ローヤルオフィシャル焙煎講師を務めています。
帰山人氏の焙煎機は、パンチングメッシュの手廻し焙煎機です。
帰山人氏の焙煎は「一本焼き」という「何もしない」ことを特徴とする焙煎ですが、焙煎を極めていくとこのような考えに行き着くのかもしれません。
その範疇で今火力について思うことがある
焙煎のながれのなかでここでパワーがほしい時あるいはここは抑えたい時
火力の強火とか弱火で極端にすることはあまりよくないと感じている
あくまで釜の燃焼効率でしたほうがよいように思う
これはあくまで体験的なことなので理論てきではないけれど
あきらか豆の煎りあがりに差がある
抜けの感覚も違う
結局「何もしない」焙煎となる
しかしそれは全体のストーリーを押さえてのことだ
するとおのずと火力が決まっていく
はまった時は痛快である
「火力の6」,讃喫茶室 2012年10月28日.
帰山人氏の「何もしない」「一本焼き」焙煎は、不安定な直火の手廻し焙煎でありながら煎り揃えを良くするのに適した方法なのかもしれません。
帰山人の珈琲遊戯 2017年7月12日の「珈琲豆「ICBM」の二段焼き焙煎の狙いと技法」において、火力一定の「一本焼き」と後半で火力を調整する「二段焼き」の違いについて説明されています。これによると、「二段焼き」は難度の高い「一本焼き」よりもさらに難度の高い焙煎方法に思えます。
リンク先の図のイとロの境が、浅野氏の火力調整のポイントであると帰山人氏は理解しているそうです。
浅野氏と帰山人氏が焙煎について語り合う日は、いつかやって来るでしょうか。
抽出
浅野氏は「日本ネルドリップ珈琲普及協会」の理事です。日本ネルドリップ珈琲普及協会の代表は、「カフェ・ド・カルモ」の繁田武之氏です。
浅野氏による、ネルドリップ抽出の動画です。
対して、帰山人氏の松屋式金枠を用いた点滴抽出です(普段の抽出方法ではないそうです)。この動画の後半では、「喫茶店の未来」について語られています。
「喫茶店の未来が明るいかどうかは、人の時流に乗っかってものを言う奴は暗いでしょうね。」(鳥目散 帰山人)
「深煎りネルドリップ」派は、細い湯でゆっくりと注湯することを推奨する人が多いように思います。この方法では、濃厚なコクと甘さを持つコーヒーに仕上がる傾向にあります。
讃喫茶室 尾山台のタンザニア モンデュール AA


讃喫茶室 尾山台のタンザニア モンデュール AAは、深煎りで焙煎されています。
2回目のハゼが徐々におおきくなってくる
ピシ!と割れる様な音がとても心地よい
やがてかなりの煙をともなってやがてハゼは終了していく
僕はそこからしばらくの間までの間を深い焙煎としている
漆黒の珈琲はその存在を鼓舞するように黒光る
まぎれもなく珈琲好きにはたまらない領域
「深い焙煎」,讃喫茶室 2012年9月20日.
浅野氏がジェントルビリーフ(Gentle Belief)を経営していた当時は、タンザニアの浅煎りも注文可能だったようです。
「たとえば、『タンザニアの豆を浅煎りで』といわれたら、通常は酸味が出てしまうため深煎りをおススメしますが、浅煎りでもテクニックで美味しく飲めるようにすることも可能です」という、まさにオンデマンドな焙煎
「特集|ロースターは燃えているか?|第2章「マイ・ロースターを求めて」」,OPENERS 2015年2月16日.
味
レッドワイン、フローラル、シルキーマウスフィール、クリーンカップ
カッピングプロファイル、WATARUより
赤ワインのようなこってりとしたボディと滑らかな口当たり、非常にクリーンな味わいが印象的です。酸味が抑えられた焙煎で、全体の調和に優れた味わいです。
帰山人の珈琲遊戯のタンザニア モンデュール AA

紋霧(もんきり)一党は北部の山麓に潜んで機を窺う。
その北部産の打倒を狙う南部改方の安部部(あびぶ)の
手が迫り、ついに紋霧旦左衛門(たんざえもん)が動く!近来のタンザニアのコーヒー生産は、キリマンジャロ
山麓の伝統産地であるモシ地区(キリマンジャロ州)や
アルーシャ地区(アルーシャ州)などの北部よりも、
ルヴマ州・ンジョンベ州・ムベヤ州などの南部へと
投資や開発の規模と勢いが移りつつあります。
タンザニア最大規模を誇るルヴマ州のアビブ農園などは
徹底した知略と管理で、まるで安部式部(あべしきぶ)の
ようです。それはそれで魅力はありますが、やはり
昔ながらの「キリマンジャロ」の風味は北部産ならでは、
多少の闇があっても奥深い味わいのある雲霧仁左衛門
(くもきりにざえもん)の一党も捨てがたい…何の話だ?以前に珈琲遊戯で登場した「ふかたん」や
「まそたん」や「もんたん」や「しん・もんたん」などと
同様に、今般もモンデュール・コーヒー・エステートの豆を使用しました。
名付けて、紋霧旦左衛門(もんきりたんざえもん)。薄く淹れるとサッパリと明るく、「サラメシ」ナレーションの
フレーバー通販ページより
中井貴一のように、濃く淹れるとガッツリと重厚に、
「雲霧仁左衛門」主演の中井貴一のように…何の話だ?
まぁ、抽出の濃度で味わいの違いを楽しめるコーヒーです。
帰山人の珈琲遊戯の「紋霧旦左衛門(もんきりたんざえもん)」は、2018年2月28日の「ふかたん」、2018年9月4日の「まそたん」、2019年3月5日の「もんたん」、2019年8月13日の「しん・もんたん」に続く、タンザニア モンデュール AAの焙煎豆です。
【生豆と焙煎の仕立て】
タンザニア連合共和国 アルーシャ州
モンデュール・コーヒー・エステート AA
N39/KP423 ウォッシュト(湿式精製) 100%直火の手廻し釜で火力一定の「一本焼き」
フレーバー通販ページより
20分05秒で深煎りに仕立てました。
力強さと繊細さ、その両方を風味に感じられる
「紋霧旦左衛門」、その手口をお楽しみください。

味
赤ワインのようなこってりとしたコクと滑らかな口当たりが印象的です。深煎りですが酸味の残る焙煎度です。濃厚に淹れると厚みのあるコクが、薄く淹れると上品な爽やかさが目立ちます。
帰山人氏の「一本焼き」は、芯の通ったとでも言うべき苦味が味の支えになっているような非常に独特の味わいです。
讃喫茶室 尾山台のコーヒーは浅煎りから深煎りまで酸味が抑えられ非常にクリーンな味わいが印象的です。対して帰山人の珈琲遊戯のコーヒーは、直火の味をさらに強くしたような「一本焼き」独特の味わいが印象的です。
<参考>
Mondul Coffee Estates<https://mondulcoffee.com/>
「Mondul Coffee Estates, Tanzania」,European Coffee Trip<https://europeancoffeetrip.com/mondul-coffee/>
「Tanzania Zanzibar Peaberry」,InterAmerican Coffee<https://www.interamericancoffee.com/tanzania-zanzibar-peaberry/>