コーヒーと呼ばれる人体に発生する最も多くの病気の予防または治療におけるその比類のない効果を持つ、醒めていて健全な飲み物の素晴らしい美徳の簡潔な説明。
コーヒー・ハウスとブロードサイド
1652年にパスカ・ロゼ(Pasqua Rosée)がコーヒー・ハウスを開いて以降、ロンドンではコーヒー・ハウスの大流行が起こった。
この時代、コーヒー・ハウスで顧客が読み、議論するためのブロードサイド(Broadside)が作成された。これは紙一枚の片面に印刷されたビラであり、新聞の先駆けとなるものであった。初期のブロードサイドはイラストのない単純なものだったが、やがてブロックで整理され、洗練されたイラストを含むようになっていった。
イラストが記載されたブロードサイドは、1674年にポール・グリーンウッド(Paul Greenwood)によって初めて印刷された。ここに「コーヒーと呼ばれる人体に発生する最も多くの病気の予防または治療におけるその比類のない効果を持つ、醒めていて健全な飲み物の素晴らしい美徳の簡潔な説明。(A BRIEF DESCRIPTION OF THE EXCELLENT VERTUES OF THAT Sober and wholesome Drink, CALLED COFFEE AND ITS INCOMPARABLE EFFECTS IN PREVENTING or CURING MOST DISEASES INCIDENT TO HUMANE BODIES.)」という長いタイトルを持つ詩が掲載され、「コーヒー・ハウスの規則と秩序(The RULES and ORDERS of the COFFEE-HOUSE.)」が添付された。
この詩が印刷されたブロードサイドの記載されたイラストは、上段と下段に分かれている。上段の左に、王冠と「アラビアの砂漠(The Desarts of Arabia)」の文字で装飾されたコーヒーノキが描かれており、上段の右には、王冠で装飾されたブドウのつるが描かれている。そして、下段には、コーヒーハウスの内部が描かれており、様々に異なった社会階層が1つのテーブルを囲んでいる。
一六七四年に発行された印刷物の挿絵に、コーヒー・ハウスの情景が描かれている。そこでは異なる階層の五人の客がテーブルに着いていて、そのうち一人は煙草を吸っている。テーブルの上にはパイプと受け皿のない小さなボウルが置かれ、テーブルにボーイがコーヒーを運んでいる。
イギリスのコーヒー・ハウスは、当初はコーヒーだけを提供していたが、やがてこれにチョコレート、シャーベット、茶が加わるようになる。しかし、禁酒の場という姿勢は崩さなかった。ちなみに一六六四〜六五年には、ギリシャ人コンスタンティン・ジェニングス(あるいはジョージ・コンスタンティン)がチョコレート、シャーベット、茶の小売の宣伝と、それらの簡単な作り方も紹介している。一六六九年頃には、一部でエールやビールが出し始められているが、アルコール飲料はしばらくコーヒー・ハウスの重要なメニューにはなっていない。
ウィリアム・H・ユーカーズ(2017)『ALL ABOUT COFFEE コーヒーのすべて』,山内 秀文訳・解説,角川ソフィア文庫.p.127-128
また、この詩では、1674年にロンドンの女性たちによって印刷された「コーヒーに対する女性の嘆願書(The Women's Petition Against Coffee)」が、この異教徒の飲み物が男性を性的に不能にしたと非難したことに対する反論も述べられている。
コーヒーと呼ばれる人体に発生する最も多くの病気の予防または治療におけるその比類のない効果を持つ、醒めていて健全な飲み物の素晴らしい美徳の簡潔な説明。
日本語訳
悪意に満ちたワインの甘い毒が、 世界全体を犯し; 大きな泡立つ酒杯の深い海に 我ら理性と魂を溺れさせた、 母なる大地がよろめいたのは、息子たちがふらついたからだと、 新しい哲学者たちは断言した: 濁ったエールが、我らの脳髄に、 泥だらけの蒸気の強力な連なりを立ち昇らせた; 飲酒、反乱、さらに宗教は、 男性たちを狂わせ、彼らは何をすべきかわからなくなった; その時神は憐れみ、治癒のため、 カレンチュアの激情を抑えるために、 このすべてを治癒する果実を最初に授けてくれた、 すぐに我々を醒めて嬉々とさせるために。 アラビアのコーヒー、恵みのリキュール 数多くの美徳を帯びた、 富と人の利益に適うもの、 それゆえかの国は幸福それ自体と呼ばれたのだ。 日の出る豊かな寝室から、 芸術と、あらゆる良き流行が最初に始まった、 極上の希少性をはらんだ大地は祝福された、 そして死にゆく不死鳥が驚くべき巣を作り上げる: コーヒーがやって来る、この重要で健全なリキュール、 胃を治し、才気を活発にし、 記憶力を高め、悲しむものを再び立ち上がらせる、 そして狂気に陥れることなく、魂を励ます; 温の性質と、減弱と乾による、 性質の浄化の本質のために、 その絶え間ない使用は最も陰気な悲しみを敗走させ、 浮腫を取り除き、痛風を楽にするだろう、 壊血病気質、ヒポコンデリー風、 目脂、喘息、麻痺、黄疸、咳、カタル、 またより悪い箇所があるところ、 それはいかなる場所でもすぐに駆けつける; それは消化を助け、食欲を増進し、 身体の消耗を素早く適切な状態に整える; 心と、肝臓と、脳髄の間の、 親愛なる交わりを維持する、 我々の知っている瓶の持ち主である、自然の3つの長である車輪は、 小宇宙全体を転覆すると脅かす; 春、それは病的な気質が最も増大するとき、 そして夏、それは食欲が失われるとき、 秋、それは生の果実の病が繁殖するとき、 そして冬のあまりの寒さに嘔吐し出血するときを; だがこの希少なアラビアの飲み物を使用すると、 お前はスロップ医師全員から拒絶されるかもしれない。 その時、とんまなヤブ医者は押し黙り、イカサマ医療は止む、 コーヒーは各々の病の迅速な治療法であるためだ; なんと偉大な美徳だろうか、我々はこう思うだろう、 この飲み物は第三の世界の国々でありふれたものになると; 熱い手綱の扱いに失敗する、婦人に親切で好かれるものは、 龍の尻尾と結合し刺される: ここで酒を常飲し、アルコールが抜ける救いもなく、 不平を述べる婦人たちもなく、嘔吐している; 彼の苦悩を見つけよう、 失態をしでかす傾向がわずかなために; コーヒーは日々の糧の敵ではない、 それによって私はむしろより活動的になる; 「このより強力な飲み物、粗悪なワインの基は、 活力を弱め、恋焦がれる性質にする」; 「ベッドの機会を失う大樽を撒き散らしたような 不能でつねに酩酊で満ちた状態にさせる」; だが、脳を鎮静させるこの希少な飲み物はそれらの害を防ぐ、 古臭いシェリー酒と活発なクラレットの魅力を征服する。 辛口ワイン、私は喉を開けてお前に抵抗する、 一方で信頼できるコーヒーは私の解毒剤だ; あのきらめく女王をあまりにも長く崇拝していたと、 詩人たちが悔い改めたように私には聞こえた; 彼らがこれが彼女の成功にあると認識する可能性のある間は アポロンは彼ら全員をひどく呪われた貧しい状態に保つ; 彼女のうっとりさせるような魅力を避けさせてから ウィットが議員を育むのを見たい; 簡単に言えば、健康、豊かさ、宝 、名誉を受けたあらゆる人は、 そして赤っ鼻でなく、霞んだ目でない宮廷は、 自らの真意のために禁酒するが、 すぐに良き同胞と喉の渇きを愛する; ワインを飲むために、もはやウィットとコインをトロフィーにする必要はない、 しかし、毎晩ここに来てコーヒーを飲もうではないか。
A BRIEF DESCRIPTION OF THE EXCELLENT VERTUES OF THAT Sober and
wholesome Drink, CALLED COFFEE AND ITS INCOMPARABLE EFFECTS IN
PREVENTING or CURING MOST DISEASES INCIDENT TO HUMANE BODIES.
原文
When the sweet Poison of the Treacherous Grape, Had Acted on the world a General Rape; Drowning our very Reason and our Souls In such deep Seas of large o’reflowing Bowls, That New Philosophers Swore they could feel The Earth to Stagger, as her Sons did Reel: When Foggy Ale, leavying up mighty Trains Of muddy Vapours, had besieg’d our Brains; And Drink, Rebellion, and Religion too, Made Men so Mad, they knew not what to do; Then Heaven in Pity, to Effect our Cure, And stop the Ragings of that Calenture, First sent amongst us this All-healing-Berry, At once to make us both Sober and Merry. Arabian Coffee, a Rich Cordial To Purse and Person Beneficial, Which of so many Vertues doth partake, Its Country’s called Felix for its sake. From the Rich Chambers of the Rising Sun, Where Arts, and all good Fashions first begun, Where Earth with Choicest Rarities is blest, And dying Phoenix builds Her wondrous Nest: COFFEE arrives, that Grave and wholesome Liquor, That heals the Stomach, makes the Genius quicker, Relieve, the Memory, Revives the Sad, And chears the Spirits, without making Mad; For being of a Cleansing QUALITY, By NATURE warm, Attenuating and Dry, Its constant Use the sullenest Griefs will Rout, Removes the Dropsie, gives ease to the Gout, And soon dispatcheth wheresover it finds Scorbutick Humours, Hypochondriack winds, Rheums, Ptisicks, Palsies, Jaundise, Coughs, Catarrhs, And whatsoe’re with Nature leavyeth Warrs; It helps Digestion, want of Appetite, And quickly sets Consumptive Bodies Right; A Friendly Entercourse it doth Maintain, Between the Heart, the Liver, and the Brain, Natures three chiefest Wheels, whose Jars we know, Threaten the whole Microcosme with overthrow; In Spring, when Peccant Humours Encrease most, And Summer, when the Appetitite is lost, In Autumn, when Raw Fruits Diseases Breed, And Winter time too cold to Purge or Bleed; Do but this Rare ARABIAN Cordial Use, And thou may’st all the Doctors Slops Refuse. Hush then, dull QUACKS, your Mountebanking cease, COFFEE’s a speedier Cure for each Disease; How great its Vertues are, we hence may think, The Worlds third Part makes it their common Drink; The Amourous Gallant, whose hot Reins do fail, Stung by Conjunction with the Dragons-Tail: Let him but Tipple here, shall find his Grief Discharg’d, without the Sweting-Tubs Relief; Nor have the LADIES Reason to Complain, As fumbling Doe-littles are apt to Faign; COFFEE’s no Foe to their obliging Trade, By it Me rather are more Active made; ‘Tis stronger Drink, and base adulterate Wine, Enfeebles Vigour, and makes Nature Pine; Loaden with which, th’ Impotent Sott is Led Like a Sowc’d Hogshead to a Misses Bed; But this Rare Settle-Brain prevents those Harms, Conquers Old Sherry, and brisk Clarret charms. Sack, I defie thee with an open Throat, Whilst Trusty COFFEE is my Antedote; Methinks I hear Poets Repent th’have been, So long Idolaters to that sparkling Queen; For well they may perceive ‘tis on Her score APOLLO keeps them all so Cursed Poor; Let them avoid Her tempting Charms and then We hope to see the Wits grow Aldermen; In Brieif, all you who Healths Rich Treasures Prize, And Court not Ruby Noses, or blear’d Eyes, But own Sobriety to be your Drift, And Love at once good Company and thirst; To Wine no more make Wit and Coyn a Trophy, But come each Night and Frollique here in Coffee.
コーヒー・ハウスの規則と秩序
日本語訳
コーヒー・ハウスの規則と秩序
顧客の方々は自由に入場できますが、最初によろしければ、
こちらにある、私たちの市民秩序を熟読してください。
まず、紳士、商人、すべて人たちがここに歓迎されます、 そして、無礼なしで一緒に着席するでしょう: 地位の高さは、ここでは誰も気に留めるべきではありません、 適切な席を見つけるのに何も必要ではありませんが: もし立派な方がやって来たら、 その方に部屋をあてがうために立ち上がってください; 男性の出費を制約するのは、公平ではないと思いますが、 悪態を突くものには12ペンスの罰金を課します: いかなる口論でもここで始めるものには、 各々の男性に罪を贖うための皿を与えましょう。 彼はそうしなければならず、この補足は 彼の友人がコーヒーを飲むことにまで敷衍されます; 騒々しい論争の騒音は完全に慎みましょう、 このひそやかな嘆きの場所には感傷を愛するものはいません、 しかし、すべてが賑やかで、会話がありますが、行き過ぎてはいません 神聖な事柄については、冒涜的な聖典や、 無礼な言葉によって不遜な過ちを犯す国政に 誰も触れたりしないでください: 浮かれ騒ぎを無実にしましょう、そして各人は目にします、 内省を欠いた、あらゆる人が発するジョークを; このコーヒー・ハウスをもっと静かに保ち、非難を避けるために、 したがって私たちは、カード、サイコロ、およびすべてのゲームを追放します: また、短期間に多くの問題を引き起こす、5シリング それを超える賭けを許可することはできません; すべてを失い、または没収された、そのような時は このコーヒー・ハウスが提供する良きリキュールで過ごしましょう、 そして顧客は時期に相応しい静かな時間を守るために、 彼らの能力を以て取り組むでしょう。 最後に、各々の男性は支払いが必要となります、 それから毎日のお越しをお待ちしております。
The RULES and ORDERS of the COFFEE-HOUSE.
原文
The RULES and ORDERS of the COFFEE-HOUSE.
Enter Sirs freely, But first if you please,
Peruse our Civil-Orders, which are these.
First, Gentry, Tradesmen, all are welcome hither,
And may without Affront sit down Together:
Pre-eminence of Place, none here should Mind,
But take the next fit Seat that he can find:
Nor need any, if Finer Persons come,
Rise up for to assigne to them his Room;
To limit Mens Expence, we think not fair,
But let him forfeit Twelve-pence that shall Swear:
He that shall any Quarrel here begin,
Shall give each Man a Dish t’ Atone the Sin;
And so shall He, whose Complements extend
So far to drink in COFFEE to his Friend;
Let Noise of loud Disputes be quite forborn,
No Maudlin Lovers here in Corners Mourn,
But all be Brisk, and Talk, but not too much
On Sacred things, Let none presume to touch,
Nor Profane Scripture, or sawcily wrong
Affairs of State with an irreverent Tongue:
Let Mirth be Innocent, and each Man see,
That all his Jests without Reflection be;
To keep the House more Quiet, and from Blame,
We Banish hence Cards, Dice, and Every Game:
Nor can allow of Wagers, that Exceed
Five shillings, which oft-times much trouble Breed;
Let all that’s lost, or forfeited, be spent
In such Good Liquor as the House doth Vent,
And Customers endeavour to their Powers,
For to observe still seasonable Howers.
Lastly, Let each Man what he calls for Pay,
And so you’re welcome to come every Day.
<参考>
A brief description of the excellent vertues of that sober and wholesome drink, called coffee, And its incomparable effects in preventing or curing most diseases incident to humane bodies.<https://quod.lib.umich.edu/e/eebo/B01780.0001.001?view=toc>
Symbols of Behaviour in mid-17th Century English Coffee <https://open.conted.ox.ac.uk/sites/open.conted.ox.ac.uk/files/resources/Create%20Document/Symbols%20of%20Behaviour_Scott%20Shriner.pdf>
CURIOSITIES OF COFFEE DRINKING.<https://search.proquest.com/openview/d191b642a030a465/1?pq-origsite=gscholar&cbl=16351>
Bradshaw's Journal, 第 2 巻<https://books.google.co.jp/books?id=fOA-AQAAMAAJ&printsec=frontcover&hl=ja#v=onepage&q=CURIOSITIES%20OF%20COFFEE%20DRINKING.&f=false>
Bradshaw's Journal 1841-11-27: Vol 2 Iss 4<https://archive.org/details/sim_bradshaws-journal_1841-11-27_2_4/page/56/mode/2up>
Bradshaw's Journal 1841-12-04: Vol 2 Iss 5<https://archive.org/details/sim_bradshaws-journal_1841-12-04_2_5/page/72/mode/2up>