クロップスターとノルベルト・ニーダーハウザー

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クロップスターとノルベルト・ニーダーハウザー

クロップスター(Cropster)は、2009年にノルベルト・ニーダーハウザー(Norbert Niederhauser)によって設立されたソフトウェア会社です。

ニーダーハウザーのコーヒーとの最初の関わりは、彼が育ったオーストリア北部のアルトミュンスター(Altmuenster)のカトリック教会でした。彼は、近隣の都市の教会指導者が始めたニカラグアのコーヒー生産者を支援する地域活動をボランティアで率いることになりました。教会の入り口にブースを設け、日曜日のミサを終えた村人たちにフェアトレードのニカラグア産コーヒーを販売し、その利益を集めてカトリックの支援者に送り、支援者はその資金を生産者に配るというものでした。

ニーダーハウザーは、工業高校に進学し、電子工学とプログラミングを学んだ後、オーストリア・カトリック教会のコミュニティ・オーガナイザーとして5年間、インドやコンゴ、ラテンアメリカ各地で社会正義のグループと協力しました。その後、オーストリアのフォアアールベルク州(Vorarlberg(Vorarlbearg))にある応用科学大学で、コンピュータサイエンスの学士号を取得しました。同校には、国際的な就職支援プログラムがあり、ニーダーハウザーは教授からコロンビアのカリ(Cali)にある国際熱帯農業センター(CIAT)(International Center for Tropical Agriculture)の土地利用・気候変動ユニットでの研究職を勧められました。2003年から2008年まで、彼はコロンビアの農園から収集したコーヒー豆の健康状態や栽培方法に関する数テラバイトの情報をデータベース化し、オンライン管理システムを構築する仕事に従事しました。

生産者

ニーダーハウザーは農園を何度も訪れ、土壌の重要性、品種ごとに必要な肥料、日陰、湿度など、コーヒー栽培の基本を学びました。また、チェリーの収穫という骨の折れる仕事を体験し、種を取り除く作業、水洗、発酵、乾燥、生豆になるまでを観察し、保存のタイミングを見極める微妙な技術も学びました。彼はこのプロジェクトを通じて、生産者と個人的につながることで責任を感じ、研究だけでは足りないと考えるようになりました。彼は、大学時代の友人で、優秀なプログラマーであるアンドレアス・イドル(Andreas Idl)を呼び寄せました。数週間のうちに、イドルはカリに移り住み、2人はコーディングを開始しました。

ニーダーハウザーは、2009年に「クロップスター(Cropster)」を立ち上げました。最初の製品は、土壌の栄養分から豆の収穫・精製まで、すべてを追跡できる農家向けのデータ管理ソフトウェアでした。生産者は月15ドル程度の利用料を払い、スマートフォンやタブレットでソフトにアクセスします。生産者はこのソフトを使って、品種、肥料や除草剤の散布、灌漑や降雨のパターン、日陰や湿度、熟成や収穫の日、保管方法など、生産物の量や品質、安定性を左右する農学上の変数を記録できます。

クロップスターの初期、ニーダーハウザーはラテンアメリカ中を旅し、農園から農園、協同組合から協同組合を回って、農学データは品質と収量の向上に役立つと伝えて回りました。ニカラグアやホンジュラスの有名なコーヒー生産者の家を訪ねましたが、彼らの生活環境は極めて質素で、子どもたちは畑で忙しく、学校に行く時間もなかったことを目の当たりにしました。

この体験から、ニーダーハウザーはコーヒーのサプライチェーンにおける価値の偏在への怒りを深める一方で、経済的に恵まれない生産者から収益を上げることはできないと考えるようになりました。当時の小規模コーヒー生産者は、スマートフォンもタブレットも持たず、収穫量の計量はおろか、栽培方法にアルゴリズム的な厳密さを適用することもなかったのです。

クロップスターには、NGOになってこのような農村に慈善事業的な資金を投入するか、あるいは、サプライチェーンのさらに上流から始めて、最終的には下流に戻るかの2つの選択肢がありました。慈善事業は短期的な癒しであり、長期的な解決策ではないという理由で後者を選びました。

ロースター

この時点で、2010年でした。当時は「サードウェーブ」の只中にあり、インテリジェンシア、ブルーボトル、スタンプタウンなどのクラフトロースターが、シングルオリジンのコーヒーをより高価格で販売していました。ニーダーハウザーは、ロースターがより精密なツールを必要としていること、そしてそのツールを購入する能力があること、この2点に着目しました。

クロップスターのデータ管理ソフトウェアは、一部の生産者にとっては便利で重要なものであるかもしれません。しかし、生産者からの収益だけではクロップスターを存続させることはできません。そこでニーダーハウザーと彼のチームは、2011年にコーヒーのサプライチェーンの他の部分のためのツールの構築を始めました。

ニーダーハウザーと彼のチームは、大小のロースターが焙煎プロセスをきめ細かく管理できるようなソフトウェアの開発に着手しました。クロップスターは、焙煎機で起きていることを1秒単位でモニターし、コントロールする方法を提供します。焙煎機の中にある「熱電対」というセンサーが、豆の塊の温度を液体のように測定し、カメラで豆の色の変化率を監視します。これらのデータがクロップスターのソフトウェアに送られ、ロースターはスクリーンのタッチやキーボードのフリック操作によって、その場でプロセスを操作することができます。

クロップスターのソフトウェアには、2004年に導入された生豆の格付け基準であるSCAアラビカ種コーヒー豆分類システム(GACCS)(SCA Green Arabica Coffee Classification System)が実装されました。

クロップスターが登場するまで、焙煎方法と結果を関連付けるツールは、ログブック、チャート、スプレッドシートと粗雑なものでした。そのため、これまで競合する企業がなかったクロップスターが、事実上の業界標準となりました。

生産者とロースター

ニーダーハウザーと彼のチームは、生産者とロースターを繋ぐマッチングサービス「クロップスター・ハブ(Cropster Hub)」を開発し、2016年に稼動させました。生産者や協同組合は、コーヒーの品種、農園の場所、歴史、スペシャルティコーヒー協会による評価、標高と栽培条件、収穫日、保管方法などの情報を掲載したページを作成し、ロースターはオンラインで生産者を探すことができます。かつては生産国へ行き、農園を訪れ、サンプルを持ち帰るしかありませんでしたが、サンプルは宅配便で送ってもらうことができます。

また、クロップスターはNGOと提携し、主要なコーヒー生産国17カ国の貧しい生産者に手頃な価格のスマートフォンやタブレットを提供しようとしています。いまだに多くの小規模生産者は通信機器を持っておらず、ソフトウェア、あるいはそれを動かすための技術にアクセスできません。

ニーダーハウザーは、昔の職場である国際熱帯農業センター(CIAT)を通じて、ワールド・コーヒー・リサーチ(WCR)(World Coffee Reseach)と協力し、生産者が気候変動の圧力に適応できるよう支援しています。コーヒーのような換金作物は、気候変動の影響をより受けやすい乾燥した熱帯地域で生産されることが多く、これらの地域は他のほとんどの気候地域よりも厳しく変化することが予測されています。

ニーダーハウザーの大きなビジョンは、小規模農業を存続させるためのグローバルなフードサプライチェーンのデジタルインフラを構築することにあります。

<参考>

"The Crop Software Behind Your Daily Cup of Coffee",Bloomberg<https://www.bloombergquint.com/businessweek/crop-app-cropster-wants-to-save-coffee-and-the-global-food-supply>

"90+ Profiles: Getting to Know Norbert Niederhauser",SCA<https://scanews.coffee/2014/07/11/90-profiles-getting-to-know-norbert-niederhauser/>

"Physical Analysis of Green Coffee: What to Measure, Record and Track",Daily Coffee News<https://dailycoffeenews.com/2020/04/29/physical-analysis-of-green-coffee-what-to-measure-record-and-track/>

"Search Results: Cropster ",Daily Coffee News<https://dailycoffeenews.com/>

"Why don’t more producers market their own coffee?",Perfect Daily Grind<https://perfectdailygrind.com/2022/05/why-dont-producers-market-their-coffee/>

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