ジャマイカのコーヒー生産地域とその特徴 ブルーマウンテン・コーヒーとブルーマウンテン・エリア
ブルーマウンテン・コーヒー
ジャマイカ(Jamaica)は、政府による規制の下で、特定地域で生産されるコーヒーを1つのブランドとして確立しました。
ブルーマウンテン・コーヒー(Blue Mountain Coffee)は、1953年のコーヒー産業(改正)規制(The Coffee Industry (Revised) Regulations Act)によって、ブルーマウンテン・エリア(Blue Mountain Area)で栽培され、ライセンス発行を受けたコーヒー工場で取り扱われるコーヒーと定義されました。
ブルーマウンテン・コーヒーとは、
コーヒーが…
(a)スケジュールに記載されたブルーマウンテン・エリアで栽培され、かつ
(b)スケジュールに指定されたコーヒー工場で加工または製造されたもので、規則5に従って付与されたライセンスが関係するもの。"blue mountain coffee" means--
coffee that is--
THE COFFEE IDUSTRY REGULATIONS, 1953
(a) grown in the Blue Mountain area as described
in the Schedule; and
(b) processed or manufactured at any coffee works
specified in the Schedule and to which a licence
granted pursuant to regulation 5 relates.
ブルーマウンテン・エリア
ブルーマウンテン・エリアは、ジャマイカ東部ブルーマウンテン山脈に広がる地域です。セント・アンドリュー教区(St Andrew Parish)、ポートランド教区(Portland Parish)、セント・トーマス教区(St Thomas Parish)の3つの教区にまたがります。
1953年のコーヒー産業(改正)規制規制における、ブルーマウンテン・エリアの定義は以下の通りです。
ブルーマウンテン・エリア
スキボを起点に、東南東方向に進み、スウィフト・リバーへ。その後、東南東に進みチェルシーへ。その後、東南東に進み、ダラム(サンバ・ヒル)へ。その後、南東に進み、ベルビューに至る。
その後、ジョン・クロウ・マウンテンの西側斜面を南東に進み、シダー・グローブへ。その後、西へ向かってフォント・ヒルへ。その後、北西に進み、ランブルへ。その後、西へ向かってグッド・ホープへ。その後、北西に進みダラスへ。その後、北北西に進み、インダストリー・ヴィレッジに至る。
その後、北北西に進み、メリーランドへ。その後、北西に進み、ゴールデン・スプリングへ。その後、北に進みブランドン・ヒルへ。その後、北東に進み、トランキリティへ。その後、東北東に進み、スキボへ至る。
Blue Moulriain Area
THE COFFEE IDUSTRY REGULATIONS, 1953 Schedule (Regulation 2)
Starting at skibo and proceeding in an east-southeasterly direction
to Swift River; thence east-southh-easterly to Chelsea; thence east-southeasterly to Durham (Samba Hill); tlrence south-easterly to Belleview;
thence aoutheastexly along the western slope of the John Crow
Mountain to Cedar Gove: thence westerly to Font Hill; thence northwesterly to Ramble; thence westerly to Good Hope; thence northwesterly to Dallas; thence north-nmth-westerly to Industry Village;
thence nor&-nonth-westerly to Maryland; thence north-westerly to
Golden Spring; thence northerly to Brandon Hill: thence north-easterly
to Tranquility; thence east-north-easterly to Skibo
ブルーマウンテン・コーヒーの定義において、コーヒーが栽培される標高の高さは無関係です。
さらに、「ブルーマウンテンコーヒー」についての定義が日本とはまったく違っていたことも驚いた。
日本では、ジャマイカの山の高いところで収穫されたものが「ブルーマウンテン」、中腹が「ハイ・マウンテン」、低地が「プライム・ウォッシュ」と呼ばれていたり、八百メートル〜千二百メートルで採れるのが「ブルーマウンテン」などと定義されていた。
でも、実際にブルーマウンテン公社が認定した「ブルーマウンテンコーヒー」の規程では、海からブルーマウンテン山脈に向かって標高三百メートルを越すと、そこはブルーマウンテン栽培地区になる。地域内であれば、深い谷底で標高三百メートル以下でもブルーマウンテンと認定されていた。そして、ハイ・マウンテンの産地は島の中部三ヶ所、それ以外は全てプライム・ウォッシュと分けられていた(注:現在、ハイ・マウンテン地区はなくなっている)。
川島 良彰(2013)『私はコーヒーで世界を変えることにした。』,ポプラ社.p101
環境
標高2,350mに達するブルーマウンテン山脈は、カリブ海地域で最も高い山の1つであり、その斜面に広がるブルーマウンテン・エリアは、ほとんどが険しい斜面の山岳地帯です。
ブルーマウンテン・エリアは、霧と降水量が多く、涼しい気候です。豊かな雨と、ブルーマウンテンの名前の由来となったユーカリから発散される霧状の油分が気化することによって発生する青い霧が日差しを遮るシェードとなり、弱酸性の土壌に適度な水分を補給します。また、水捌けが良く、窒素とリンを含んだ肥沃な土壌のため、この気候と土壌の組み合わせは、コーヒー栽培に最適です。
特に、ブルーマウンテン山脈の東斜面には年間7,600mm以上の雨が降り、ジャマイカの人口の約半数に水を供給しています。この地域には、ジョン・クロウ山脈(John Crow Mountains)と合わせて、ジャマイカ最後の熱帯雨林が残っています。
また、ジャマイカの1,800mを超える土地のほとんどは森林保護区のため、コーヒーは栽培されていません。
規格(グレード)
ブルーマウンテン・コーヒーは、コーヒー産業公社(CIB)(Coffee Industry Board)によって格付けされます。No.1規格が最高等級です。
樽
コーヒーは麻袋で輸出されることが多いですが、ジャマイカは世界で唯一木製の樽に詰められて輸出されます。18世紀中頃のイギリスの植民地時代に、イギリスから船積みされた小麦粉などの空き樽を再利用し、コーヒーやラム酒などを入れて出荷したのが始まりとされています。
樽に使用される木材は、アメリカの温帯林の木材で匂いがないため、麻袋のように生豆に匂いが移る懸念がなくなります。また、木材が湿度と温度調節の役割を果たすため、輸送時などに発生する急激な温湿度変化を緩和し、生豆へのダメージを和らげます。
樽は輸出前に、ジャマイカ農産物規制当局(JACRA)(Jamaica Agricultural Commodities Regulatory Authority)の検査を通過する必要があります。これには時間がかかり、遅延が発生する可能性がありますが、ブルーマウンテン・コーヒーの品質を保証します。
また、ジャマイカは2008年初頭、欧州連合(EU)または他のヨーロッパ諸国が要求する基準よりもさらに厳しい化学物質の残留と農薬の検査に関して、日本人が後援する多国間協定に署名しました。ジャマイカから輸出されるすべての生豆は、現在これよりも高い基準で検査されています。
検査を通過したものには、ジャマイカ農産物規制当局(JACRA)から原産地証明書が発行されます。
商標
ブルーマウンテンの商標は、コーヒー産業規制法(The Coffee Industry Regulation Act)によって、細かく規定されています。この法律は、1948年の12月9日に制定され、最後の改正は1999年1月1日です。
ジャマイカのコーヒー産業規制法では、「ブルーマウンテン」の商標の使用を、ジャマイカ農産物規制当局(JACRA)によって許可されたものに制限しています。ブルーマウンテン・ブランドの濫用を防ぐため、ジャマイカ農産物規制当局(JACRA)は世界各国でジャマイカ・ブルーマウンテン(JBM)(Jamaica Blue Mountain)の商標を出願しています。
ブルーマウンテン・エリア Blue Mountain Area:https://real-coffee.net/category/coffee-origin/the-caribbean/jamaica/blue-mountain-area