エチオピア メタッド社とアマン・アディニュー
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エチオピア メタッド社とアマン・アディニュー

エチオピア メタッド社とアマン・アディニュー

"Coffee: Seed to Cup; the METAD Story",Omer Redi 2018年6月30日.

メタッド農業開発株式会社(METAD)(METAD Agricultural Development PLC)(以下、メタッド社)は、アマン・アディニュー(Aman Adinew)が設立したエチオピアのコーヒー生産・輸出業者です。エチオピア(Ethiopia)南部諸民族州(SNNPR)(Southern Nations, Nationalities, and People's Region)ゲデオ地方(Gedeo Zone)ゲデブ郡(Gedeb Woreda)、およびオロミア州(Oromia Region)西グジ地方(West Guji Zone)ハンベラ・ワメナ群(Hambela Wamena Woreda)でコーヒーを生産しています。

本社はアディス・アベバにあり、アマンと彼の息子たちによって経営されている家族経営の企業です。

メタッド社は、外部生産者(アウト・グロワー(Out-Grower))プログラムを実施しており、近くの農家からコーヒーチェリーを買い付けています。メタッド社は、このプログラムに参加している農家に、収穫時前後のトレーニングの提供、収穫期間のボーナスと収穫されたコーヒーチェリーの量に基づいた2度目のボーナスの支払い、コーヒー炭疽病(CBD)(Coffee Berry Disease)抵抗性の苗木の無料配布を行っています。

メタッド社では、苗床から輸送までのコーヒー生産の全過程に厳格な品質管理基準が適用されます。

メタッド社はその土地に適した品種を種から育苗し、高品質な豆を人件費と労力を惜しまず徹底的に選別します。選別された高品質な豆は高級スペシャルティコーヒーとして取引され、残りはエチオピア商品取引所(ECX)(Ethiopian Commodity Exchange)で取引されます。

アマン・アディニュー(Aman Adinew)

アマン・アディニュー

メタッド社の創業者であり現CEOであるアマン・アディニュー(Aman Adinew)は、ミネソタ大学(University of Minnesota)のカールソン経営大学院(Carlson School of Management)でマーケティングと経営戦略論のMBAを取得、オーグスバーグ大学 (Augsburg University)で経営学の学士号を取得しました。

アマンは、アメリカ合衆国に26年間在住し、世界的化学・電気素材メーカーである3Mやドイツの国際輸送物流会社のDHL、アメリカの航空会社ノースウエスト航空(現在のデルタ航空)の役員を務めました。この経験をもとに、現在のエチオピア・コーヒーの流通の基礎を築きました。

彼は国連の開発計画を受け、エチオピア商品取引所(ECX)の創設に携わり、初代の最高執行責任者(COO)(Chief Operations Officer)となりました。これが彼がコーヒー産業に携わった最初の経験です。彼はエチオピア商品取引所(ECX)で、品質や在庫の管理、認証、サプライチェーンの再構築の仕事に集中しました。その後メタッド社を設立し、CEOに就任しました。

アフリカ初の女性パイロット、ムルエメベット・エミル(Muluemebet Emiru)

ムルエメベット・エミル

アマンのコーヒーへの情熱は、彼の祖母であるムルエメベット・エミル(Muluemebet Emiru)にまで遡らなければなりません。

ムルエメベットは、1934年にアフリカ初の女性パイロットとなりました。彼女はパイロットになるために、車の運転を学ばなければならなかったために、エチオピアで女性初の車の運転免許書取得者となりました。彼女にパイロットになる夢を与えたのは、第二次エチオピア戦争による1936年のイタリアのエチオピア征服と、その後5年にわたる占領でした。

7人のエチオピア人学生(一番左がムルエメベット)

ムルエメベットは、フランスの練習機と英国のタイガー・モス(Tiger Moth)という練習機で、数人のヨーロッパ人の訓練士から訓練を受けた7人のエチオピア人学生の1人でした。彼らの中には、エチオピア航空の最初のパイロットとなったアフリカ系アメリカ人であるジョン・チャールズ・ロビンソン(John Charles Robinson)がいました。

彼女と一緒に航空訓練を受けた6人のエチオピアの学生が、「エチオピア航空(Ethiopian Airlines)」の誕生の役割を果たしたと考えられています。

ムルエメベットがパイロットだったのは、1年ほどの期間です。彼女は、結婚するためにパイロットの夢を諦めました。彼女はイタリアの最重要指名手配者リストに載っていたために、彼女の家族と親類は、彼女がハイレ・セラシエ一世と共に亡命したという偽の情報を広めました。

彼女は、配偶者であるリジ・ゼウデ・キダネウォルド(Lij Zewde Kidanewold)とともに、6人の娘と1人の息子を育てました。彼らは第二次世界大戦後に様々なビジネスを始めます。その1つがコーヒー農園です。

第二次世界大戦後にムルエメベットの勇気が表彰され、彼女に野生のコーヒーノキが生い茂ったシダモ地方とハラー地方の農地が授与されました。現在ハンベラ農園のある農地も、このシダモ地方の農地に含まれていました。

ムルエメベットは、ハラー地方の農地に最初の農園を設立しました。彼女ら夫婦は、1974年のハイレ・セラシエ一世の治世の終わりまで、ハラー地方でコーヒー農園とワイナリーを経営していました。

ハンベラ農園

ハンベラ農園

メタッド社は、エチオピア(Ethiopia)オロミア州(Oromia Region)西グジ地方(West Guji Zone)ハンベラ・ワメナ群(Hambela Wamena Woreda)にハンベラ農園(Hambela Farm)を所有しています。アマンと彼の息子であるマイケル・アディニュー(Michael Adinew)とタリク・アディニュー(Tariku Adinew)が経営しています。

ハンベラ農園は、標高1,950m - 2,250mに位置しており、200ヘクタールの面積を誇ります。農園内にはウォッシング・ステーション、ドライ・ミル、乾燥用ベッド、大きな倉庫、ゲストハウスがあります。

メタッド社は、ハンベラ・ワメナ群に7つ、イルガチェフェ地域(Yirgacheffe Area)に7つの、計14の農家組合(Peasant Association)を持っています。

ハンベラ・ワメナ群には、アラカ(Alaka)、ビシャン・フグ(Bishan Fugu)、ベンチ・ネンカ(Benti Nenqa)、ブク(Buku)、 デリ・コチョア(Deri Kochoha)、 ディムツ・ハンベラ(Dimtu Hambela)、 ターチラ・ゴヨ(Tertira Goyo)の7つの農家組合があります。

イルガチェフェ地域には、ハロ・ベリチ(Halo Beriti)、チェルチェレ(Chelchele)、チェルべサ(Chelbesa)、ゴチチ(Gotiti)、ハロ・ハルツーム(Halo Hartume)、ウォルカ・サカロ(Worka Sakaro)、バンコ・ザザト(Banko Dhadhato)の7つの農民協会があります。

またゲデオ地方(Gedeo Zone)ゲデブ群(Gedeb Woreda)にも、ウォッシング・ステーションとドライ・ミルを所有しています。

現在ハンベラ農園のある場所は、ムルエメベットが第二次世界大戦後に授与された農地の一部でした。

ハンベラ農園は、USDAオーガニック(USDA Organic)認証を受けたこの地方で最初の私有農園です。メタッド社はこの認証を、井戸の採掘、道路の建設、教育の提供など、地元コミュニティへの投資に役立てています。

ヘルスケア

メタッド社は、エチオピアの「グラウンズ・フォー・ヘルス(Grounds for Health)」と提携して、コーヒー生産地域の女性に対する子宮頸がん検診プログラムを成功させました。

コーヒー品質研究所(LAB)

アメリカスペシャルティコーヒー協会認定のコーヒー品質研究所

メタッド社には、アフリカで初めてアメリカスペシャルティコーヒー協会(SCAA)(Specialty Coffee Association of America)の認定を受けた民間のコーヒー品質研究所(LAB)があります。ここは国際バイヤーがコーヒーのサンプルをテストしたり、国内外のコーヒーの専門家のトレーニングするために使用されます。

浅野 文章

浅野 文章(あさの ふみあき)は、メタッド社に務めている日本人です。

浅野は、コック、コーヒーチェーンの運営会社、自身のカフェ「アサノコーヒー」を経て、メタッド社で働き始めました。彼は、2006年に公開され話題となった映画「おいしいコーヒーの真実」を見て、コーヒー生産農家のコーヒー1杯当たりの取り分が消費者価格の0.9%と解説されていたのを見て、コーヒー産業の搾取の構造を変えたいと、コーヒー生産地であるエチオピアへと向かいました。

彼はその時点で、喉頭ガンステージ4で、既に細胞転移していた状態にあったそうです。しかし、コーヒー生産者とともに働き続け、毎日エチオピアの主食として知られるインジェラを食べ続けていると、彼はみるみるうちに健康になっていったそうです。そこで一時帰国し、医師の診断を仰ぐと、癌細胞が石灰化して壊死していたそうです。

メタッド社のコーヒーは、浅野の情熱に惹かれた「マルカイコーポレーション株式会社」が日本の総代理店となっています。

メタッド社 METAD:https://real-coffee.net/category/coffee-origin/africa/ethiopia/exporter/metad

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