
サザコーヒー パナマ ゲイシャ ナインティ プラス® バッチ 2105(Panama Geisha Ninety Plus Estate N #2105)です。
このゲイシャは、1キログラム/10,000ドル(1ポンド/4,535ドル)の価格で非公式に取引されたコーヒーです。2017年の自らの記録1キログラム/5,001.50ドルを更新し、世界最高額で取引されました(2019年9月時点)。
サザコーヒー(Saza Coffee)は、1942年に創業した茨城県ひたちなか市に本社のあるコーヒー会社です。コロンビア・カウカ県に自社農園であるサザコーヒー農園を所有しています。
パナマ ゲイシャ ナインティ プラス® Batches 2105
パナマ ボルカン
パナマ(Panama)のコーヒー生産は、コスタリカ国境に近いパナマ西部チリキ県(Chiriquí Province)のボケテ地区(Boquete)、ティエラ・アルタス地区(Tierras Altas District)ボルカン(Volcán)、レナシミエント地区(Renacimiento)を中心に行われています。ナインティ プラス®は、バル火山西部のボルカン(Volcán)に位置しています。
ナインティ プラス®
味、人間らしさ、自然との調和
ナインティ プラス®(Ninety Plus®)は、味(Taste)、人間らしさ(Humanity)、自然との調和(Ecology)を価値の中核とし、革新的な精製によって、驚くべき味を生み出すことを試みているコーヒー農園です。
ナインティ プラス®は、科学的な手法を用いた革新的な精製方法によって、コーヒーの新しいフレーバーを追求しています。
ナインティ プラス®は、倫理的な共同作業、人間らしい文化、大地との優れた関係性がなければ、革新的で新しいフレーバーは生まれないと信じています。コーヒー生産はこれまで、低賃金と労働環境の軽視に苦しんできました。ナインティ プラス®は、労働環境を改善、賃金と社会保障を充実させることで、労働者のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)(Quality Of Life)と幸福の向上を計っています。
農園
ナインティ プラス®は、182ヘクタールの面積を誇っています。3分の1の面積が老齢林で、3分の2の面積にゲイシャのコーヒーが植えられています。エチオピアでは、品種が混在して栽培されるエチオピアとしては珍しく、複数の農園と提携して単一品種の栽培を行っていました(現在、ナインティ プラス®はエチオピアから撤退しています。
ナインティ プラス®では、自然と調和する方法でコーヒーの野生種が栽培されています。農園は生態系、水源、土壌を繁栄させる原生林に囲まれており、コーヒーノキはシェード(日陰)となる植物によって保護され、十分な間隔をとって栽培されています。農園は、コーヒーと労働者が生態系に統合されるサファリパークのように見えるそうです。
ナインティ プラス®では、他のパナマの農園と同様に、パナマの先住民族であるノベ・ブグレ族(Nôbe-Buglé)が主要な労働者です。ナインティ プラス®は、彼らに最高の報酬を与えることで、彼らの生活を保護しています。
ナインティ プラス®では、予約をすると、ガイド付きで農園のツアーをすることができます。
創業者

創業者は、アメリカ合衆国ウィスコンシン州(State of Wisconsin)マディソン(Madison)出身のジョセフ・ブロドスキー(Joseph Brodsky)氏です。ナインティ プラス®は、100点満点で審査されるカッピング・スコアを意識して付けられた社名で、ナインティ プラス®のゲイシャが90点以上のコーヒーであることが示唆されています。
ジョセフ氏の兄であるミシェル・ジョンソン(Michael Johnson)氏は、JBC コーヒー・ロースターズ(JBC Coffee Roasters)のオーナーです。また、弟であるジェイク・ブロドスキー(Jake Brodsky)氏は、ノボ・コーヒー(Novo Coffee)のオーナーであり、兄弟揃ってコーヒーを生業としています。
パートナー
ナインティ プラス®は、パナマを拠点とする投資ファンドであるグルーポ・エレタ(Grupo Eleta)のCEOであるギレルモ・デ・サン・マロ・エレタ(Guillermo de Saint Malo Eleta)氏がパートナーとなっています。グルーポ・エレタはコーヒー部門としてカフェ・エレタ(Café Eleta)とウニド・コーヒー・ロースターズ(Unido Coffee Roasters)を所有しており、ナインティ プラス®に非公開の投資を行っています。
ナインティ プラス®とジョセフ・ブロドスキー
ジョセフ・ブロドスキー

ナインティ プラス®のジョセフ氏は、子供の頃からコーヒーに興味を持ち、ポップコーン・ポッパーでコーヒーの焙煎をして楽しんでいました。彼はザ・エバーグリーン州立大学(The Evergreen State College)に通っていたときに、『コーヒーの基本(Coffee Basics)』というタイトルの本を読み、そこに書かれていたエチオピアのコーヒーのブルーベリーやレモンのようなフレーバーに興味を持ちました。彼はそのコーヒーを探し、味わってみたとき、自分が人生で何をしたいのかを悟りました。
ジョセフ氏が学校を卒業した後の2001年頃、彼はジェイク氏に焙煎ビジネスの計画を持ちかけ、翌2002年デンバー(Denver)にカフェ・ノボ・コーヒー・ロースターズ(Cafe Novo Coffee Roasters、現在のノボ・コーヒー(Novo Coffee))を設立しました。そこでエチオピアのコーヒーの焙煎と販売をしていましたが、品質が安定しないことが問題点として見えてきました。
エチオピア
ジョセフ氏は、2005年にコーヒーのコンペティションを審査するためにエチオピアを訪れた際、品質が安定しない理由を探るためにエチオピアに滞在しました。彼はそこで、すべてのコーヒーが同じ価格で取引されるため、コーヒー農家に品質向上のインセンティブが働かないことを発見しました。
そこで彼は、現地の農家と協力して新たなコーヒーの試作に着手し、その後4年間に渡ってアメリカ合衆国とエチオピアを行き来し、収穫ごとにカップ・テストを行いました。そして、優れたコーヒーを発見したとき、そのコーヒーを生産したプロセスを、コーヒー農家に複製してもらいました。その中でも際立っていたコーヒーの1つが「ゲイシャ(Geisha)」です。そこでこのゲイシャの栽培を拡大し、最終的に「ナインティ プラス®」の名前で販売を始めました。
こうして2006年に創業したナインティ プラス®は、その頃すでに有名になり始めていたパナマのゲイシャに目を向けました。2009年にジョセフ氏は160万ドルの融資を受け、コスタリカ国境近くの牧場を買い取りました。彼は最初に、何千ものトウゴマ(Castor Plants)と、ホワイト・スティック (White Stick)とも呼ばれるパロ・ブランコ(Palo Blanco)の木を植えました。
これらはコーヒーノキのシェード・ツリーになるもので、コーヒーノキを直射日光から保護し、土壌に栄養分を与えます。そして、土壌の栄養素を奪い合うことがないように、ゲイシャの木を十分な間隔をとって植えました。コーヒーの木が成熟するのに通常3年から4年かかり、その間は利益が出ません。資金不足を補うために投資家たちを惹きつけようと、彼はエチオピアの農家と働き続けました。
ワールド・ブリューワーズ・カップ(WBrC)
2014年にナインティ プラス®は、パナマのゲイシャの最初の販売を始めます。 その同じ年のワールド・ブリューワーズ・カップ(WBrC)(World Brewers Cup)で、ギリシャのバリスタであるステファノス・ドマティオティス(Stefanos Domatiotis)氏が、ナインティ プラス®の「バッチ 163(Batch 163)」を使用し優勝しました。
ナインティ プラス®のゲイシャは、このワールド・ブリュワーズ・カップ(WBrC)で、2014年、2015年、2016年、2017年、2019年と5回優勝しており、そのためジョセフ氏は「競技会の帝王」と呼ばれています。
ちなみに、日本のバリスタである粕谷哲(かすや・てつ)氏は、ナインティ プラス®のゲイシャを使用し、2016年のワールド・ブリュワーズ・カップ(WBrC)で優勝を果たし、アジア人初の世界チャンピオンとなりました。
ホセ・アルフレッド・ゲシャ・シリーズ・ロット 227
ナインティ プラス®のゲイシャは、2017年に1キログラムあたり5,001.50ドル(1ポンドあたり約2,273ドル)と、当時世界最高額で非公式に取引されました。これは、「ホセ・アルフレッド・ゲシャ・シリーズ・ロット 227(José Alfredo Gesha Series Lot 227)」というロットです。
このコーヒーは、「エロティックな神経支配(Erotic Innervation)」を呼び起こす、などと形容されました。
ステファノス・ドマティオティス氏は、このロットのフレーバーを、「白桃、水仙、グレープフルーツの皮、ライラック、ビワ、ラズベリー、ジャックフルーツ、叙情的、浮揚性、カカオニブ、スターアニス、グアバ、コーラ、藤、ドライオレンジ、メープルシロップ、ビロード、ベルベットで表現され、色で言うと「ピンク」」に例えました。
このロット 227は、台湾のバリスタであるチャド・ワン(Chad Wang)氏が、2017年ワールド・ブリューワーズ・カップ(WBrC)で使用し、優勝を果たしました。
また、この「ホセ・アルフレッド・ゲシャ・シリーズ」の他の「ロット 236(Lot 236)」は、ジョージ・ハウエル・コーヒー(George Howell Coffee)で取り扱われました。
「バッチ 2105(Batches 2105)」は、ロット 227の倍近くの値段を付けたロットです。
革新的な精製方法とフレーバー
ナインティ プラス®フレーバーは、良かれ悪しかれ斬新です。ナインティプラス®の精製方法は独創的で、発酵が多用されます。
例えば、10日間川の水にコーヒーを浸して、毎日2回それらを反転させて精製した、おそらく世界の初のコールド・ファーメンテーション(Cold Fermentation)という精製方法があります。ジョセフ氏によると、このコーヒーはシャンパンの香りがしたそうです。
このコーヒーを使用した日本のバリスタである岩瀬由和(いわせ・よしかず)氏は、2015年のジャパン・バリスタ・チャンピオンシップ(JBC)(Japan Barista Championship)で優勝し、翌2016年のワールド・バリスタ・チャンピオンシップ(WBC)(World Barista Championship)で第2位に輝きました。
プロトタイプ・コーヒーズ
ナインティ プラス®の「バッチ 2105(Batches 2105)」は、「プロトタイプ・コーヒーズ(Prototype Coffees)」というシリーズの独自の革新的な加工技術を取り入れた実験的なマイクロ・ロットです。
同じコーヒーチェリーを使用した、精製方法の異なる「バッチ 2105」と「バッチ 903」というペアで取引された、対照的なスタイルのロットのうちの1です。
この2つのマイクロロットは、ザ・エスプレッソ・ラボ(The Espresso Lab)の創業者であるアラブ首長国連邦(UAE)の起業家、イブタヒム・アル・マルーヒ(Ibrahim Al Mallouhi)氏を虜にし、1キログラムあたり10,000ドル(1ポンドあたり4,535ドル)の価格で非公式に取引されました。このことで2017年の自身の記録を塗り替え、2019年9月時点で世界最高額のコーヒーとなりました。
品種と精製方法
しかし、プライベートに取引されたコーヒーであるため、販売に関する利用可能な公式の記録がなく、販売量、精製方法の詳細は公開されていません。
品種はゲイシャ(Geisha)で、革新的な加工技術を取り入れた独自の方法で精製されているようです。この精製には、在来の酵母株を用いた多次にわたる発酵が用いられているようです。
サザコーヒーは、このマイクロ・ロットがプライベートに取引される以前に入手したようです。
味
カップ・プロファイルも公開されていません。ザ・エスプレッソ・ラボのイブタヒム氏は 「無敵(The Unrivaled)」と形容しています。
ザ・エスプレッソ・ラボでは、1杯250ドルで提供するようです。
サザコーヒー パナマ ゲイシャ ナインティ プラス® バッチ 2105



大粒豆のゲイシャです。豆の状態で醤油せんべいや梅干しをさらに強烈にしたような非常に強い香りが感じられます。この香りだけで酔いそうです。抽出した後のコーヒー粉からも醤油のような強烈な香りが感じられます。
味
醤油せんべい、梅干し、安納芋のような強烈なフレーバー、安納芋のような甘さ、醤油や梅干しのような酸味、チョコレートのようなボディは軽い印象です。温かい状態では梅干しのような酸味が強いですが、冷めてくると安納芋のようなフレーバーと甘さが強くなり、ジンジャーのようなスパーシーさが感じられるようになります。醤油せんべいと梅干しと安納芋が代わる代わる現れるような味わいです。
あらゆる味の要素が主張しすぎで、味を整形しすぎて崩壊させたような奇を衒ったコーヒーです。
ザ・エスプレッソ・ラボでは海外の水を使用し、サザコーヒーよりも浅煎りで提供しているようなので、ザ・エスプレッソ・ラボとサザコーヒーでは、フレーバーや味が異なっているように思います。
エチオピア ナインティ プラス® ネキセ
エチオピア ナインティ プラス® ネキセ
ナインティ プラス®の歴史は、エチオピアから始まりました。
エチオピア ナインティ プラス® ネキセ(Ethiopia Ninety Plus® Nekisse)の「ネキセ(Nekisse)」は、ナインティ プラス®のロット名です。ネキセという名前は、2009年に初めてネキセが作られた「シャキソ(Shakisso)」という地域の名前と、「ネクター(Nectar)」のようなクリーミーでトロピカルフルーツのようなカップ・プロファイルから、「シャキソからのネクター(Nectar from Shakisso)」の意味を込めて作られた造語です。
ネキセの生産地域はシャキソ(Shakisso)からウェレガ(Wellega)、シダマ(Sidama)と代わり、改良を続けていましたが、現在ナインティ プラス®はエチオピアから撤退したため、エチオピアのネキセというロットは存在しません。
ジョセフ氏のエチオピアでのパートナーは、東アフリカファインコーヒー協会(EAFCA)(East African Fine Coffees Association)のアブドゥッラー・バゲルシュ(Abdullah Bagersh)氏でした。
サザコーヒー エチオピア ナインティ プラス® ネキセ

「90+」はナインティプラスと呼びます。
サザコーヒー
ナインティプラス社のエチオピアでの取り組みは2005年より始まりました。 実際に働く現地のワーカーが読むことのできる規律を現地の言葉で作り、徹底した品質管理を行い素晴らしいコーヒーを安定的に作り出しています。
エチオピアにある 1,000を超えるマイクロクライメイトと、多数の品種、そして独自の 5種類の生産処理方法の組み合わせを用い無限に味わいを創造しています。

味
ストロベリー、ピーチ、メロンのような明るい果実感と瑞々しい甘さが印象的です。果実の酸味よりも甘さが目立ちます。滑らかな口当たりで、甘さの余韻が長く続きます。
<参考>
Ninety Plus Coffee<https://www.ninetypluscoffee.com/>
「パナマのナインティープラス(R)コーヒーがキロ1万米ドルの新記録達成」,ACROFAN<https://jp.acrofan.com/detail.php?number=79868>
"Ninety Plus Panama Coffee Earns $2,273 Per Pound, Described as Evoking ‘Erotic Innervation’",Daily Coffee News<https://dailycoffeenews.com/2017/10/26/ninety-plus-panama-coffee-earns-2273-per-pound-described-as-evoking-erotic-innervation/>
"Ninety Plus Sells World’s Most Expensive Coffee for $4,535 Per Pound",Daily Coffee News<https://dailycoffeenews.com/2019/09/11/ninety-plus-sells-worlds-most-expensive-coffee-for-4535-per-pound/>
"The Coffee Freak: How One Man Finds (and Sells) the World’s Best Coffee Beans",Men’s Journal<https://www.mensjournal.com/features/how-joseph-brodsky-finds-and-sells-worlds-best-coffee-beans/>
"A BAND OF (COFFEE) BROTHERS",WONDERLUST<https://wonderlusttravel.com/jbc-roasters-coffee-brothers/>