子と庚子
庚子年
今年の干支は子(ね)です。十二支の1番目です。これは十二支のみを指した干支です。12年で一巡します。
今年の干支は庚子(かのえね)です。これは十二支と十干とを組み合わせた干支です。この十干十二支(じっかんじゅうにし)が、本来の干支です。60年で一巡します。
中国では、庚子年は様々な災厄が起こる年と考えられています。
今年2020年から60年前の1960年の庚子年、中国では2000万人から3000万人もの人々が餓死したといわれる大飢饉がありました。
その60年前の1900年の庚子年、中国では義和団の乱が起こりました。これは庚子事変(こうしじへん)とも呼ばれています。
その60年前の1840年の庚子年、中国ではアヘン戦争が始まりました。
庚子年、古くは献帝の禅譲による後漢の滅亡によって三国時代が始まり(220年)、西晋によって呉が滅ぼされ三国時代が終焉しました(280年)。
そして2020年の庚子年、2019年に中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)が、世界で大流行(パンデミック)を引き起こしました。中国では、予言が的中した(预言中的)といわれています。
瘟疫(うんえき)(疫病)の予防と治療の理論は、中国最古の医学書と呼ばれる『黄帝内経』に始まります。ここには体内の気を清浄に保ち、適切な食生活と適度な運動によって外邪の侵入を防ぐこと、そして感染源を遮断することが述べられており、これは現在でも通用する予防法です。
この『黄帝内経』は、黄帝が記した書であると信じられています。
地母経
黄帝の記したと信じられている『地母経』という書があります。『地母経』は、毎年干支で定められた農業に関する占いの言です。
『地母経』の「庚子年」では、次のようにうたわれています。
诗曰︰
太岁庚子年,人民多暴卒。
春夏水淹流,秋冬频饥渴。
高田犹及半,晚稻无可割。
秦淮足流荡,吴楚多劫夺。
桑叶须后贱,蚕娘情不悦。
见蚕不见丝,徒劳用心切。
卜曰︰
鼠耗出头年,高低多偏颇。
更看三冬里,山头起墓田。
黄帝地母经「庚子年」
黄帝は「通勝」という農暦を作りました。これが中国暦の始まりです(上の春牛図の日の意匠は、旭日旗の元々のモチーフであるともいわれています)。
中国暦は、中国の農村部で今でも広く使われています。中国の農歴のカレンダーには、気候、運勢、太陽、農業、そして地母経のあらゆる情報が一つの図にまとめられます。
図の牛飼いと春牛、服装、色、姿勢などは、すべて特別の意味を持っており、その年の天と地の運勢に関するあらゆる情報を人々に伝える目的があります。
2020年の庚子年の春牛図では、ネズミの疫病に注意だったようです。
2020年の首都圏では、コーヒーの第3波(サードウェイヴ)とか言われている店が次々に潰れていくと私は予想していますが、ネズミの第3波(サードウェイヴ)は隆盛するようです。ネズミ第1波だった56年前の東京オリンピックでは、その招致を機に東京都殺虫消毒同業協会が結成されてネズミの駆除にも躍起になったようですが、今般の東京オリンピックでも第3波のネズミに大わらわとなるのでしょうか? 市街のクマネズミやドブネズミは、あるいは野原のハツカネズミやカヤネズミは、オリンピックの夢を見るのでしょうか? そして、星ねずみもまた、オリンピックの夢を見るのでしょうか?
「星ねずみはオリンピックの夢を見るか?」,帰山人の珈琲遊戯 2020年1月8日.
「ネズミ第1波だった56年前の東京オリンピックでは、その招致を機に東京都殺虫消毒同業協会が結成されてネズミの駆除にも躍起になったようですが」、今般の(延期された)東京オリンピックイヤーは新型コロナウイルス感染症に大わらわになっています。
中世ヨーロッパの黒死病はネズミによって蔓延したといわれていますが、新型コロナウイルス感染症は一体何によって蔓延したのでしょうか?
新型コロナウイルスは人から人へ伝染するために、人々が連帯してウイルスに立ち向かうようなことは起きずに、「万人の万人に対する闘争」の様相を呈しています。巷ではカミュの『ペスト(La Peste)』が読まれているようですが、フランス語の"La Peste"は「忌まわしい人間」の比喩であり、人間にとって最も忌まわしいのは人間なのかもしれません。
このパンデミックがどのような結末をもたらすのか、まだ誰も知りません。
しかし『地母経』の「庚子年」では、庚子年の苦境を抜け出ても、富裕層と貧困層の格差が広がり、予想もしない多くの死者が生まれ、山の上に墓ができると予言されています。
帰山人の珈琲遊戯の蘇民将来とアマビエ
蘇民将来
疫禍を退けるに相応しい珈琲は、何でしょう?
ヒンドゥー教でいう母神(マートリカー)は後に
摩怛哩(またり)と漢訳されて仏教に取り込まれ、
日本では台密でいう後戸の神(うしろどのかみ)の
摩多羅神(またらじん)と習合して、あるいは
摩怛利神(またりしん)とも呼ばれました。
その利益は、伝染病を防ぐ疫病退散です。
だから、辟邪(へきじゃ)に使うべき豆はマタリです。疫禍を退けるに相応しい珈琲は、何でしょう?
フレーバー 通販ページより
蘇民将来(そみんしょうらい)は、古来の説話から
生み出され、災厄を払い疫病を除くものとされる
民間信仰の神です。蘇民祭も各地で行われます。
全国約三千社の天王信仰の総本社「津島神社」で
蘇民将来(ソミンショウライ)の符を入手して、
これで手選別したマタリの生豆に退疫除難の法力を
遷してから焙煎しました。だから、この辟邪(へきじゃ)
の珈琲の名は、「蘇民将来」(ソミンショウライ)です。
【生豆と焙煎の仕立て】
イエメン共和国 バニーマタル地方
モカ・マタリ アールマッカ
ナチュラル(乾式精製) 100%香味特性は、ワイニーとかダークチョコレートとか、
フレーバー 通販ページより
巷で言われているアールマッカのモカ・マタリです。
先般のバニーイスマイリ産「アラビアンセレクション」
よりも味わいがクリーミーで醇(コク)があります。
発酵系のモカ香に目(というよりも鼻?)が行きがち
ですが、特にこのロットは粘性のある口当たりに
目(というより舌?)を向けてほしい特徴があります。
直火の手廻し釜で火力一定の「一本焼き」、
20分55秒で、しっかりと深煎りに仕立てました。
芳醇(ほうじゅん)たる香味の
摩怛利(マタリ)による辟邪の珈琲
「蘇民将来」(ソミンショウライ)、ご笑味あれ
帰山人の珈琲遊戯の「蘇民将来」は、帰山人氏の法力が入った(?)コーヒーです。これを飲めば疫病退散!!かもしれません。
味
イエメンモカのスパイシーで複雑なフレーバーを持ちながら、クリームのような甘いフレーバーが前面に出ている印象です。甘味が強く、クリーミーでまろやかな口当たりです。
アマビエ
「長年探し続けてようやく見つけた美味しいマラゴジッペ」
とコーヒーハンターのホセ(川島良彰氏)に言わしめた
アントニエタ農園のマラゴジペをベースにしたブレンドです。ANTONIETA MARAGOGIPE BLEND IN EUPHORIA、
だから略してAMABIE(アマビエ)です。その名の通り、いずれも陶然とさせるような甘い香味が
力強く感じられる原料豆を合わせて、春の陽光を
感じさせるブレンドを一釜限定で作り出しました。
厄疫騒動で自粛と巣ごもりが続く閉塞感晴らそう、
そんな華やぐ季節に相応しいシーズナル珈琲です。焼きリンゴのような甘くて酸っぱくて芳ばしい味わいが、
フレーバー 通販ページより
「あ~こりゃウマいウマい」と幸せの春の陶酔を誘う。
抽出液が冷えても、「あ~こりゃ甘い甘い」と酔える、
甘冷え(あまびえ)なのでAMABIE(アマビエ)です。
【生豆と焙煎の仕立て】
エルサルバドル共和国 サンミゲル地区
アントニエタ農園
マラゴジペ ウォッシュト(湿式精製) 40%コロンビア共和国 ナリーニョ地区
ラ・パルマ農園 EX
カステージョ ウォッシュト(湿式精製) 30%ニカラグア共和国 マタガルパ地区
リモンシリョ農園
ブルボン ナチュラル(乾式精製) 30%3つの生豆を時間差投入、直火の手廻し釜で
フレーバー 通販ページより
火力一定の「一本焼き」にしています。
焙煎時間21分35秒(ラ・パルマは20分05秒、
リモンシリョは18分05秒)、酸味と苦味が渾然とする
やや深めの中深煎りポイントで煎り止め。
華やぐ季節に相応しい「アマビエ」、ご笑味ください。
アマビエは海の中から光り輝く姿で現れて、予言めいたことを残して海の中に帰って行きました。帰山人の珈琲遊戯の「アマビエ」は琥珀色の液体の中から春の陽光のように現れて、甘い余韻を残してどこかに消えるでしょう。
味
爽やかでスッキリした味わいをベースに、明るく甘いフレーバーが広がります。冷めても甘いコーヒーです。春のイメージにぴったりです。