帰山人の珈琲遊戯:ネパール カレンダーラ カトゥーラ パルプトナチュラル
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帰山人の珈琲遊戯のネパール カレンダーラ カトゥーラ パルプトナチュラルです。帰山人の珈琲遊戯は、2017年に始まった鳥目散帰山人氏による焙煎豆販売です。

このコーヒーは、吉岡コーヒーで取り扱われているコーヒーです。吉岡コーヒーは、2007年創業の名古屋市の桜山駅近くにある自家焙煎コーヒー店です。店主は吉岡知彦氏です。

ネパール カレンダーラ カトゥーラ パルプトナチュラル

ネパール

ネパール(Nepal)は、南アジアに位置する国です。インドと中国チベット自治区に接する内陸国です。首都はカトマンズ(Kathmandu)です。

国土にはネパール・ヒマラヤが広がり、ヒマラヤ山脈の南斜面を占めています。カレンダーラのあるシャンジャ郡から望むマナスル(Manaslu)は、1956年に今西壽雄率いる日本山岳会隊が初登頂に成功した山です。

ネパールコーヒーの歴史

ネパールコーヒーの歴史は、1938年ビルマ(現ミャンマー)の僧侶ヒラギリ(Hira Giri)がネパール西部のグルミ郡(Gulmi)のアーンプチャー(Aanpchaur)に持ち込んだのが始まりです(1944年と紹介している本もありますが、ここではネパールコーヒー生産者協会(Nepal Coffee Producers Association)の紹介に従います)。

当初ネパール政府はコーヒー生産の普及に熱心ではなく、また技術的インフラも整備されていなかったため、ネパールにコーヒー生産が普及することはありませんでした。

1970年代から個々の農家によってだけではなく、アジア開発銀行(Asian Development Bank)が支援するプログラムによって、コーヒーの商業栽培が始まります。1981-82年頃になるとルンビニ(Lumbini)で栽培が広がり、その後シャンジャ郡(Shangja)、カブレ郡(Kavre)、カスキ郡(Kaski) 、ラリットプール郡(Lalitpur)など、他の地域にコーヒー栽培が広がっていきました。しかし1980年代後半には、マーケティングの問題と低収益から、多くの農家がコーヒーノキを伐採せざるをえなくなりました。

ネパールは紅茶がよく飲まれている国で、コーヒーの消費量はわずかでしたが、近年その潮流に変化が起こりつつあります。ネパールのコーヒーの生産量は年間466トン(2017年)、世界全体のコーヒー生産量に占める割合はわずかですが、以前と比べれば生産量は増加しています。

ネパールのコーヒーはかつて主に輸出向けか、外国人観光客向けのものでした。また、かつてネパールでは停電も多く、電気を必要とするマシンはあまり普及していませんでした。ここ数年で電気のインフラが整備されマシンが普及、カフェラテ、カプチーノ、カフェモカなどの、エスプレッソベースのコーヒーの注文も増えました。コーヒーショップも非常に増加し、現在では若者を中心にネパール人の間での消費も増えています。

現在は約40地域ほどでコーヒー栽培が行われていますが、商業生産をしているのは約20-22の丘陵地帯です。

ネパールの主なコーヒー産地、「ヒマラヤの雪 シャンジャ」アタカ通商ホームページより引用

ネパールコーヒーの組織

1989年にパルパ郡(Palpa)の熱心なコーヒー農家たちがコーヒー生産者グループを立ち上げ、1991年にはネパールコーヒー委員会に生まれ変わりました。1997年には中央委員会が設立、2003年からはネパールコーヒー生産者協会として活動をしています。

サンティ・サンティ農園

ネパール カレンダーラ カトゥーラ パルプトナチュラルは、ネパール西部ガンタキ州(Gandaki)シャンジャ郡(Shangja)マヤタリ村カレンダーラ(Karendanda)地区のサンティ・サンティ(Shanti Shanti)農園で生産されます。

ネパールのリゾート地ポカラ(Pokhara)から、バスで2時間半ほどの山奥にマヤタリ村があります。

そこでボダさんと呼ばれているボダ・ラジ・アリヤル(Bodh Raj ARayal)氏と、一緒に生活している日本人の池島英総氏が共同でコーヒーを生産しています。

池島氏がマヤタリ村に入り込んで、村の人たちと信頼関係を築き上げ、ボダ氏と一緒に苗や土壌を作るところからコーヒー栽培が始まりました。2015年のネパールの大震災による被害がありましたが、コーヒー農協や国際協力機構(Japan International Cooperation Agency(JICA))などの協力もあって、村でのコーヒー生産は着実に発展をしています。

生産の様子は、吉岡コーヒーのブログ2015年3月15日のエントリー、「11.ネパールへ行ってきました(2015)」で伺うことができます。

左 ボダさん 右 池島さん(「14.こんなところに日本人 【ネパール地震後②】」,吉岡コーヒー2015年4月29日エントリーより)

吉岡コーヒーの吉岡知彦氏が、初めてサンティ・サンティ農園に訪れたのは2013年2月のことです。そこからパートナー関係になり、現在では12歳の頃に出会ったボダさんの息子ウビットくん、2018年に出会った勉強熱心なサジス(Sajish)くんの研修を行うまでの関係に発展しています。

左 サジスくん 中央 ウビットくん 右 吉岡氏(「29. 研修 終了いたしました」,吉岡コーヒー2019年7月1日エントリーより

研修の報告は吉岡コーヒーのブログ2019年7月1日のエントリー、「29. 研修 終了いたしました」に詳しいです。

ネパールのコーヒー生産では化学肥料や農薬はほとんど使用されませんが、サンティサンティ農園のコーヒーも無農薬、無化学肥料の有機栽培です。

品種

品種はカツーラ(Caturra)です。

ブルボンの矮性種で、1915年から1918年頃にブラジルのミナス・ジェライス州で発見されました。「小さい」という意味の南アメリカ先住民族の言葉であるグアラニー語に由来しています。香味に際立った特徴はありませんが、密集栽培が可能で、収穫性の高い品種です。

精製方法

精製方法はパルプト・ナチュラル(Pulped natural)です。

パルプト・ナチュラルは、半水洗式の一種です。パルプト・ナチュラルはパルピング・マシーン(Pulping machine、果肉除去機)によってコーヒーチェリーの外皮(Outer skin)と果肉(Pulp、パルプ)を剥がし、ムシラージ(Mucilage、粘質物のこと、一般的にはミューシレージとも)を残した状態で乾燥工程に入ります。

この精製方法ではムシラージの成分によって、複雑な香味やボディを持つコーヒー豆に仕上がります。またパルプト・ナチュラルでは、パルパー(Pulper、果肉除去)の工程で過熟豆、未熟豆を取り除くことが出来るというメリットもあります。

カツーラをパルプト・ナチュラル精製することによって、ミルクやバニラのような柔らかい甘味のあるコーヒーに仕上げています。ネパール特有の土っぽいフレーバーと素朴な味わいが特徴のまろやかなコーヒーです。

帰山人の珈琲遊戯のネパール カレンダーラ カトゥーラ パルプトナチュラル

シャングリラ

【生豆と焙煎の仕立て】

ネパール連邦民主共和国 ガンダキ県 シャンジャ郡 マヤタリ村
カレンダーラ カトゥーラ パルプトナチュラル(半乾式精製) 100%

直火の手廻し釜で火力一定の「一本焼き」、21分00秒。
ネパール産の豆には(好くも悪くも)アーシーなクセ味がありますが、
今年のカレンダーラ新豆は大きめで粒揃いがよく、肉質が柔らかい。
香り立ちが強く、ややクリアで甘い味わいとなるように、
やや浅めの深煎りに仕立てました。
ネパールには、コーヒーの「シャングリラ」(理想郷)があるのか?
カレンダーラに、いつでもいつまでもキラめく様な甘い思いに
胸ときめいていたあの頃のように「シャングリラ」を感じてください。

フレーバー 通販ページより

販売時の時事ネタを絡めて、「シャングリラ」と商品名が付けられています。

深煎りの苦味をベースに、ミルクのようなまろやかさとバニラのような甘味が印象的なコーヒーです。深煎りの尖った苦味と柔らかいバニラのような甘味の対照が、ミルクのようなまろやかな口当たりの中で調和しています。

ラリグラス

帰山人氏による商品説明 「週刊フレーバー・ペーパーをお湯につけると・・・」,flavorcoffeeフレーバー放送局 2020年4月8日.

【生豆と焙煎の仕立て】

ネパール連邦民主共和国 ガンダキ県 シャンジャ郡 マヤタリ村
 カレンダーラ カトゥーラ パルプトナチュラル(半乾式精製) 100%

直火の手廻し釜で火力一定の「一本焼き」、20分19秒。
ネパール産の豆には(好くも悪くも)アーシーなクセ味がありますが、
カレンダーラの2019クロップ、大きめで粒揃いがよく、
肉質が柔らかい分だけ泥臭さが弱くクリアな味わいです。
これをシッカリ強火で深煎りにするべく、あえて事前に5時間ほど
天日で再乾燥し、2日間キュアリングした後に焙煎しました。
香り立ちとクセ味は以前の「シャングリラ」よりも強化しています。
ネパールの山々や村々を真っ赤に彩る「ラリグラス」を想い、
ご笑味ください。

フレーバー 通販ページより

帰山人の珈琲遊戯の「シャングリラ」は2019年7月6日から販売開始、「ラリグラス」は2020年4月8日から販売が開始されました。

この「ラリグラス」は、帰山人氏によって5時間ほど天日で再乾燥し、2日間キュアリングされています。そのことによって、この豆の持つ個性が強化されています。

以前のシャングリラと比べて、土っぽいフレーバーが強調されています。マンデリンのアーシーフレーバーよりも土っぽさが強い印象で、ネパールの個性を感じさせるコーヒーです。

<参考>

「カテゴリ:ネパールコーヒー」, 吉岡コーヒー<https://coffeey.exblog.jp/i12/1/>

「語らネパ!」, 帰山人の珈琲漫考2016年7月4日エントリー<https://kisanjin.blog.fc2.com/blog-entry-929.html>

「ヒマラヤの雪 シャンジャ」, ATC Specialty Coffee<http://www.specialtycoffee.jp/beans/736.html>

「森林農法で持続可能な農業を」,東日新聞<https://www.tonichi.net/news/index.php?id=72307>

Nepal Coffee Producers Association<http://www.coffeenepal.org.np/about.html>

Kul Prasad Tiwari(2010)「AGRICULTURAL POLICY REVIEW FOR COFFEE PROMOTION IN NEPAL」,The Journal of Agriculture and Environment Vol:11, Jun.2010

「Arabica Coffee Varieties - Caturra」, World Coffee Research<https://varieties.worldcoffeeresearch.org/varieties/caturra>

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