
工房 横井珈琲 コスタリカ ドン・ダリオ ゲイシャ コスタリカ カップ・オブ・エクセレンス 2019年 第1位です。
工房 横井珈琲は、1996年に創業した札幌市西区に本店があるスペシャルティコーヒー専門店です。現在札幌市内に2店舗展開しています。
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コスタリカ ロス・グランデ・デ・コペイ・グループ社 ドン・ダリオ ゲイシャ


コスタリカ
コスタリカ(Costa Rica)は中央アメリカの小さな共和国です。北はニカラグア、南東はパナマと国境を接し、南は太平洋、北はカリブ海に面しています。首都はサン・ホセ(San José)です。
この小さな国土の中に、地球上すべての生物種のうち5%が生息しているといわれているほど生態系に富んだ豊かな国土です。環境保護先進国としても名高く、全国土の1/4以上が国立公園・自然保護区に指定されています。
コスタリカは1988年からコーヒー栽培を法律によってアラビカ種のみに限定し、ロブスタ種の栽培が禁止されました。そのため、コスタリカはスペシャルティコーヒーがコーヒー生産量の約50%を占める、高品質なコーヒーを栽培する国として知られています。
コスタリカは18世紀の終わりにコーヒー栽培が始まり、それはセントラル・バレー地区の高地にゆっくりと広まっていきました。そして、コスタリカは中米でコーヒーを産業として確立した最初の国となりました。1820年代までに、コーヒーはコスタリカの主要な農産物輸出品となり、1846年にはプンタレナス(Puntarenas)への幹線道路が完成したことにより国内総生産が大幅に増大、コーヒーの農家は牛車によってより簡単に市場へコーヒーを運搬することが可能になりました。
1933年に設立されたコスタリカコーヒー協会(ICAFE)(英語:Coffee Institute of Costa Rica、スペイン語:Instituto del Café de Costa Rica)がコーヒー農家の支援をしており、環境に配慮したコーヒー生産に取り組んでいます。
コスタリカのコーヒー産地
コスタリカの行政区分は7つの州(Province)に分かれており、州はさらに81のカントン(Canton)に区分されています。
コスタリカのコーヒー生産地はコスタリカコーヒー協会(ICAFE)によって、7つの代表的な産地に区分されています。ブルンカ(Brunca)、オロシ(Orosi)、タラス(Tarrazú)、トレス・リオス(Tres Rios)、トゥリアルバ(Turrialba)、セントラル・バレー(Central Valley)、ウェスト・バレー(West Valley)の7つです。
タラス

タラス(Tarrazú)は、コスタリカで最も有名なコーヒー生産地域の一つであり、地元経済の主な収入源となっています。
コーヒー生産地域としてのタラスには、タラス(Tarrazú)、ドタ(Dota)、レオン・コルテス(León Cortés)、アセリ(Aserrí)の5つのカントンによって構成されており、これらはすべてサン・ホセ州(スペイン語:Provincia de San José)を構成するカントンです。
この地域のカントンの名前は、様々な聖人にちなんで付けられたため、地元では「聖人たち」を意味する「ロス・サントス (スペイン語:Los Santos)」と呼ばれています。
タラスは、コスタリカの首都であるサン・ホセ(San Jose)の南、ピリス川(スペイン語:Río Pirrís)流域に位置しています。
タラスは、標高1,200m-1,900mと高地です。また、雨季と乾季が明確に分かれています。
雨季は5月から11月でこの時期のコーヒーが成長します。乾季は12月から4月、収穫時期は11月から4月で、乾季と収穫時期が重なっています。この明確に区別された気候が、コーヒーチェリーに均一な成熟をもたらします。
また、この地域で生産されるコーヒーは、火山性堆積土の組成によって、はっきりとした酸味を持つことを特徴としています。
この地域の標高の高さ、雨季と乾季が明確な涼しい気候、豊かな火山性土壌が、高品質なコーヒー栽培の条件となっています。
シェードツリーには、外来樹木と在来樹木が用いられます。
この地域のコーヒー生産者の多くは、平均約2.5ヘクタールの小規模農園です。
品種
主な栽培品種は、カツーラ(Caturra)、カツアイ(Catuai)です。
その他にも、ブルボン(Bourbon)、ビジャ・サルチ(Villa Sarchi)、ビジャロボス(Villalobos)、サチモール(Sarchimor)、ヴェネシア(Venecia)、コスタリカ 95(Costa Rica 95)などが栽培されています。
精製方法
主な精製方法は、ウォッシュト(Washed、湿式)、ハニー(Honey、半水洗式)です。
ハニーは、2000年頃にイタリアのイリー(illy)と日本の要求に応じて、コスタリカで生まれた精製方法です。
ハニープロセスを始めたとされるコスタリカのコーヒー輸出業者デリカフェに聞いたところによると、導入のきっかけはイタリアの焙煎業者イリーから2000年ごろに依頼を受けたことだそうです。
依頼の内容は「果肉除去後、ミューシレージを付けたままパーチメントコーヒーを乾燥させる方式で生豆を生産する」というもので、製法の詳細についてもイリーから指示がありました。
(中略)ハニープロセスという名称もイリーが使い始めたものではありません。デリカフェによると、イリーはこの製法のことを「セミウォッシュト(semi-washed)」と表現していたそうです。ではハニープロセスという表現はどこから来たのでしょうか。やはりデリカフェによると、同社の精製施設を訪問した日本の商社の担当者がこの製法で作られたパーチメントコーヒーを見て「ハニーコーヒー」と呼び、それが現在の名称の起源になったそうです。
伊藤亮太(2016)『常識が変わる スペシャルティコーヒー入門(青春新書プレイブックス)』,青春出版社.
コスタリカは、他の中米諸国とは異なり、農園規模が小さく、収穫したコーヒーチェリーを農協系、または大手の加工会社に搬入する分業制が主流でしたが、近年ではマイクロミルの導入が進んでいます。
マイクロミルの導入によって、家族や親類などで経営される農園が、小規模な水洗処理設備、乾燥設備を共有し、地区特性を反映した高品質のコーヒーを一貫して生産することができるようになります。コスタリカでは現在、150を超えるマイクロミルが導入されていると言われています。
規格(グレード)
コスタリカでは、コーヒーの規格は豆の硬度によって決まります。豆の硬度を決定する要因が、標高の高さです。
コスタリカコーヒーの最高規格はストリクトリー・ハード・ビーン(Strictly Hard Bean(SHB))で、標高1,200m以上で生産されたコーヒーがこの規格に分類されます。
タラス地域で生産されるコーヒーの95%近くが、SHBに分類されます。
味
コスタリカは複雑な地形をしており、海から来る風がこの複雑な地形を通ることによって、マイクロクライメイト(微気候)がはっきりと発生します。また、土地は隆起した時代によって土壌が異なるため、少しの場所の違いでも味に変化が生まれやすい地形です。
タラスで生産されるコーヒーの一般的な特徴として、豊かな香り、高い酸味、はっきりとしたボディ、チョコレートのようなニュアンスを持つ上品な味わいが挙げられます(実際の味は、場所、農園、品種、精製方法などによって異なります)。
ロス・グランデ・デ・コペイ・グループ社

ドン・ダリオ(Don Dario)は、ロス・グランデ・デ・コペイ・グループ社(Grupo Los Grandes de Copey S.A)の所有農園です。
ロス・グランデ・デ・コペイ・グループ社は、最高品質のコーヒーを生産することを目的として、2011年にホエル・モンゲ・ナランホ(Johel Monge Naranjo)氏とマニュエル・サラス・アラヤ(Manuel Salas Araya)氏によって設立されたコーヒー会社です。
ロス・グランデ・デ・コペイ・グループ社の所有農園は、標高1,900m-2,160mと非常に高地に位置しており、総面積は90ヘクタールに及びます。
シェードツリーには、インガ(Inga sapindoides)、ギンバイカ(Meinmannia pinnata)、マゼンタ・チェリー(Syzygium paniculatum)が用いられます。
ロス・グランデ・デ・コペイ・グループ社の主な取引先は、台湾です。2018年に生産されたロス・グランデ・デ・コペイ・グループ社のコーヒーの95%は台湾によって購入され、残りの5%が「一部の特別な顧客」によって予約販売されました。そのため、日本で入手できる機会は珍しいです。
品種
標高の低い土地にはイエロー・カツアイ (Yellow Catuai)とレッド・カツアイ(Red Catuai)、中腹にはビジャ・サルチ(Villa Sarchi)とビジャロボス(Villalobos)、最も高い土地にはゲイシャ(Geisha,Gesha)が栽培されています。
受賞歴
ロス・グランデ・デ・コペイ・グループ社は、2017年のコスタリカ カップ・オブ・エクセレンス(Cup of Exellence(CoE))で、ドン・アントニオ(Don Antonio)が、ゲイシャのハニーで92.00点を獲得し第1位に輝きました。また、ドニャ・ニーナ(Doña Nina)が、イエロー・カツアイのハニーで87.09点を獲得し第22位に入賞しました。
2018年はドン・アントニオが、ゲイシャのハニーで91.15点を獲得し第2位に入賞、ドン・ダリオが、ゲイシャのウォッシュトで89.47点を獲得し第7位に入賞しました。
2019年はドン・ダリオが、ゲイシャのアナエロビックで91.14点を獲得し第1位に輝きました。ロス・グランデ・デ・コペイ・グループ社としては、カップ・オブ・エクセレンスで2度目の優勝、ドン・ダリオとしては初優勝です。また、ドン・アントニオが、ゲイシャのハニーで90.88点を獲得し第3位に入賞しました。
ドン・ダリオ

ドン・ダリオ(Don Dario)は、コスタリカ中部ドタ・カントン(Dota canton)コペイ地区(Copey district)に位置する農園です。
ドン・ダリオは2013年にロス・グランデ・デ・コペイ・グループ社によって購入された農園で、ジョエル氏とマニュエル氏の両親にちなんで名前がつけられました。
ドン・ダリオのマネージャーは、ホルヘ・ブレネス・メナ(Jorge Brenes Mena)氏です。彼はロス・グランデ・デ・コペイ・グループ社のプロダクション・マネージャーであり、コスタリカの有名なコーヒー生産者であるフランシスコ・メナ(Francisco Mena)氏は、彼の従兄弟です。
フランシスコ・メナ氏のシュマバ・デ・ロウルデス・マイクロミルについては、以下の記事を参照してください。
品種
標高2,100m、農園面積36ヘクタールで、ゲイシャ(Geisha)のみが栽培されています。
精製方法

精製方法はアナエロビック・ファーメンテーション(Anaerobic Fermentation)です。
コーヒーの精製において、ウォッシュト(Washed、湿式)では水槽で、ナチュラル(Natural、乾式)では乾燥工程で、チェリーが発酵します。この発酵は、酸素のある状態(好気性)での微生物の活動によるものです。
アナエロビック・ファーメンテーションでは、チェリーをタンクに閉じ込め、酸素のない状態(嫌気性)で発酵させます。すると、酸素のある状態では活動しなかった微生物が活動することで、これまでの精製方法では生まれなかったフレーバーが生まれます。
ウニールとドン・ダリオ
このロットは、ウニール(Unir)の山本知子ヘッド・バリスタが、2019年のジャパン・バリスタ・チャンピオンシップ(Japan Barista Championship(JBC))やワールド・バリスタ・チャンピオンシップ(World Barista Championship(WBC))で使用したコーヒーです。
山本知子バリスタによると、標高や環境によって生育する微生物の種類は異なり、それによってコーヒーの味も変化するため、微生物はテロワールそのものであるそうです。
味
アナエロビック精製のゲイシャは、熟したグレープのような強いフレーバーを特徴としています。キレイなフレーバーを出すことが難しい精製方法で、癖のあるフレーバーのため、好き嫌いを分けます。
工房 横井珈琲の工房 横井珈琲のコスタリカ ドン・ダリオ ゲイシャ コスタリカ カップ・オブ・エクセレンス 2019年 第1位



今回ご紹介するのは、2019年コスタリカCOE1位に輝いたゲイシャ種、嫌気性発酵プロセスの
コーヒーです。
コーヒーの風味は生産処理における発酵工程に起因することが明らかにされ考えられたのが、
嫌気性発酵(アナエロビックファーメンテーション)です。
ロス・グランデス・デ・コペイは、最高品質のコーヒーを生産することを目的に、
ホエル・ モンヘ・ナランホさんとマヌエル・サラス・アラヤさんらによって2011年に創設された
プロジェクトです。農園名の「ドン・ダリオ」とは、ホエルさんのお父様の名前に由来しています。
工房 横井珈琲 ホームページより
2019年のコスタリカCOEでは、このドン・ダリオ農園が1位に選ばれたほか、同グループが
所有するドン・アントニオ農園も3位という成績を収めました。
このドン・アントニオ農園は過去 にも2017年COE1位、2018年COE2位の成績を残しています。
農園内のすべての管理業務は家族のメンバーが担当しており、素晴らしいコーヒーを作り出すために、
すべてのプロセスの細部まで注意を払っています。
同グループの農園のプロダクションマネージャを務めるホルヘ・ブレネス・メナさんは、
シュマバ・デ・ロウルデス マイクロミルのオーナー、フランシスコ・メナさんの従兄弟です。

味
Aroma/Flavor | red grape, cacao seeds, baked pear, floral, roselle, grapefruit, white wine, red cherry, turkish delight, dark choclate with cherries, rose blossom tea, rum |
---|---|
Acidity | citric, malic, lactic, phosphoric, vibrant |
Other | viscous body, consitent, creamy |
アナエロビック・ファーメンテーション精製のゲイシャに特有の、熟したグレープのようなフレーバーとシロップのようなとろみのあるまろやかな口当たりが支配的です。ローズのような華やかなフレーバーと、ストロベリーのような酸味を感じさせるフレーバーがあります。
アナエロビック・ファーメンテーション精製のゲイシャ特徴がキレイに出ているコーヒーです。
<参考>
「What is the Best Costa Rica Coffee?」,Costa Rican Times<https://www.costaricantimes.com/what-is-the-best-costa-rica-coffee/66836>
「Tarrazú region dominates 2019 Costa Rica Cup of Excellence」,BeanScene<https://www.beanscenemag.com.au/2019-costa-rica-cup-of-excellence/>
「Amigos de toda la vida ganaron otra vez premio al mejor café de Costa Rica」,LA NACION<https://www.nacion.com/economia/agro/amigos-de-toda-la-vida-ganaron-otra-vez-premio-al/2Y7SSVT73VFOHFBK3BU4SHY5EM/story/>