帰山人の珈琲遊戯 パナマ バンビート農園 ティピカ シナモン含浸です。
帰山人の珈琲遊戯(GAME of COFFEE)は、2017年に始まった鳥目散 帰山人(とりめちる きさんじん)による焙煎豆販売です。
パナマ バンビート農園 ティピカ シナモン含浸
バンビート農園
バンビート・エステート・コーヒー(Bambito Estate Coffee)は、パナマ(Panama)チリキ県(Chiriquí Province)ティエラ・アルタス地区(Tierras Altas District)セロ・プンタ(Cerro Punta)に位置する農園です。
バンビート・エステート・コーヒーについては、以下の記事を参照してください。
ササ・セスティック(Saša Šestić)「インフューズド・コーヒーの問題は何か?(What’s the problem with infused coffees?)」とシナモンゲート(CINNAMONGATE)
このロットは、パナマ バンビート農園 ティピカにシナモンを含浸させたコーヒーです。2021年8月23日にパーフェクト・デイリー・グラインド(Perfect Daily Grind)に投稿された、2015年のワールド・バリスタ・チャンピオンのササ・セスティック(Saša Šestić)による「インフューズド・コーヒーの問題は何か?(What’s the problem with infused coffees?)」をきっかけに、SNS上で含浸コーヒー(インフューズド・コーヒー)と発酵コーヒー(ファーメンテーション・コーヒー)が話題となりました。
2018年にアムステルダムで開催されたWBCで、私には他の競技者のコーヒーを口にする役得があった。ある国内チャンピオンは私にエスプレッソを提供してくれた。持ってみるとすぐに、私は独特のシナモンの香りを嗅ぎ分けることができた。味わうと、シナモンの香りが口の中いっぱいに広がってきた。まるでシナモンスティック全体を口の中に入れたかのようだった。
私は本当にユニークでレアなコーヒーをいくつか味わったことがあるが、これは際立っていた。私はその競技者に精製方法について聞いたところ、このシナモンフレーバーはコーヒーと反応して特別な味を作り出す「特殊酵母」が原因だと話した。
2019年のボストンでは、ブリュワーズ・カップで使用された別のシナモンコーヒーを見た。再び、その競技者は、発酵中に特定の微生物を使用することでこのシナモンフレーバーが得られたのだと私に話した。
この2つのコーヒーは同じ国(コスタリカ)で生産されたものだったが、異なる農園、異なる品種、そして異なる精製方法であった。それでもそれらは同じシナモンの味が共通していた。
現在、100%確実ではないが、これらのシナモンコーヒーやその他の似たようなコーヒーには、このシナモンフレーバーが人工的に含浸されていると私は思う。研究が強く示唆することによれば、このような強烈なシナモンフレーバーは、どのように精製または発酵させても、コーヒーで自然に得られることはない。
At the 2018 Amsterdam WBC, I had the privilege of tasting other competitors’ coffees. One national champion offered me an espresso; as soon as I held it, I could make out a distinctive cinnamon smell. When I tasted it, the note of cinnamon carried through to my palate. It was like I had put an entire stick of cinnamon in my mouth.
I have tasted some really unique and rare coffees, but this one stood out. I asked the competitor about the process, and he told me that the cinnamon flavour was caused by a “special yeast” that reacted with the coffee to produce this particular taste.
In Boston in 2019, we saw another cinnamon coffee used in the Brewers Cup. Once more, the competitor told me the cinnamon flavour was achieved through the use of specific microorganisms during fermentation.
Both coffees came from the same country (Costa Rica), but were from a different farm, of different varieties, and processed differently. Yet they shared the same cinnamon taste.
Today, while we cannot be 100% certain, I believe that these cinnamon coffees and others like them have been artificially infused with this cinnamon flavour. Research strongly suggests that such an intense cinnamon flavour cannot naturally be achieved in coffee, no matter how it is processed or fermented.
Saša Šestić"What’s the problem with infused coffees?",Perfect Daily Grind 2021年8月23日.
ササ・セスティックは、シナモンコーヒーを自宅で作る方法を説明しており、これに触発されて出来上がったコーヒーが「カネラ」(パナマ バンビート農園 ティピカ シナモン含浸)です。
シナモンコーヒーの製造
自宅でも簡単にシナモンをコーヒーに含浸させることができる。 必要なのは、プラスチック容器、水、生豆、シナモンスティックだけである。生豆を水に浸し、シナモンスティックを加える。 蓋を閉め、3日間から5日間そのままにしておく。この間、豆はシナモンを含んだ水を吸収し、その味を与える。 準備ができたらコーヒーを取り出し、水分含有量11%まで乾かす。 除湿機やロースター(35°Cに設定)を使用すれば、コーヒーをゆっくりと乾かすことができる。
農園では、工程が少し異なる。 昨年、私はこのシナモンプロファイルでCoffeenetによって輸出されたコロンビア産のコーヒーをいくつか見た。 このロットは、酒石酸とシナモンスティックを使用して、好気的環境で乾式発酵されたものだった。
PRODUCING CINNAMON COFFEE
You can easily infuse coffee with cinnamon yourself, even at home. All you need is a plastic tub, water, green coffee beans, and cinnamon sticks. Submerge the green beans in water and add the cinnamon sticks. Close the lid and let it sit for three to five days.During this time, the beans will absorb the cinnamon-infused water, giving it those tasting notes. Remove the coffee once ready, and let it dry to 11% moisture. You can use dehumidifiers or even your roaster (set to 35°C) and allow the coffee to dry out slowly.
On the farm, the process is slightly different. Last year, I saw some coffees from Colombia exported by Coffeenet with this cinnamon profile. The lots were dry fermented in an aerobic environment, with tartaric acid and cinnamon sticks.
Saša Šestić"What’s the problem with infused coffees?",Perfect Daily Grind 2021年8月23日.
それでは仕込みます(この2ヵ月さまざまに試行検証してきた成果を示す時がきました) 【珈琲遊戯】 https://t.co/3NF0N0J6Y0 pic.twitter.com/ez3gZIdZpj
— 鳥目散 帰山人 (@kisanjin) October 31, 2021
「シナモンゲート事件」や‘Infused coffee’に興味を持たれた方は、下記の続報記事も一読ください。(←コレは親切)
— 鳥目散 帰山人 (@kisanjin) November 4, 2021
「カネラ」を飲みながら読んで考えると、尚よいと存じます(←コレは宣伝)
【珈琲遊戯】https://t.co/0lJPewtdfu
CANELA(カネラ)とは、スペイン語でシナモンのことです。
近来のスペシャルティコーヒー業界では、コーヒー生産地での
精製加工において、果汁など何某かの添加物を生豆に含浸
処理するものが増えて、一部でもてはやされてきました。
他方で、こうした風潮を招来してきた業界も、昨年くらいから
「これは真っ当なコーヒーなのか? 昔ながらのフレイヴァード
コーヒー((焙煎時or焙煎後に着香したコーヒー)と何が違う
んだ? 分類や表示も含めた規制は必要ないのか?」という
自省の発言が出始めています。 最近ではバリスタ選手権で
世界チャンピオンになったササ・セスティック(Sasa Sestic)が
「What’s the problem with infused coffees?」という記事で、
生産加工物の欺瞞ともいえる業界の実態を報告しています。珈琲遊戯では、生豆生産段階までの作為的着香の品を
フレーバー通販ページ
取扱ったりしながらも、こうした風潮を愚弄するべく、批判的
対抗策として、消費地たる手元で通常処理の生豆に様々な
含浸処理を自ら施すことを続けてきました。今般は、先の
記事でササ・セスティックが示した「自宅でも簡単に作れる
シナモン含浸処理コーヒー」に触発される形で、「やって
やろうじゃないの!」とシナモン着香コーヒーに挑みます。
約2ヵ月間、様々な学習と検証を行い、この度ついに新たな
フレイヴァードコーヒーを珈琲遊戯に登場させます。それが、
シナモン含浸パナマ・バンビートの「カネラ」です。どうぞ!
旦部 幸博「コーヒー:おいしさと香味成分」と嫌気性発酵
2021年10月30日から31日に開催された第47回 滋賀医科大学 若鮎祭において、10月31日14時30分から15時40分まで旦部 幸博「コーヒー:おいしさと香味成分」という講演会が行われ、オンラインで配信されました。この講演会の質疑応答(当日と後日)で、嫌気性発酵が話題となりました。
旦部さんの講演はじまったhttps://t.co/kfrMp2JDWc
— 鳥目散 帰山人 (@kisanjin) October 31, 2021
最初、「質問が一件きてます」という段階でマイク渡されたので、少し長めにしゃべったら!
— Y Tambe (@y_tambe) October 31, 2021
お気遣いいただきありがとう、ありがとう
— Y Tambe (@y_tambe) October 31, 2021
これは「あ、一件質問がきております」だったので演者から応答があったワケで、「えーと、鳥目散帰山人という方から質問がきています」だった場合は「次の質問どうぞ」という対応の選択肢もある。(でも今回のはツッコミでも意地悪でもなかったけどな) https://t.co/3LHdAMIqQ1
— 鳥目散 帰山人 (@kisanjin) October 31, 2021
多分そうしたw https://t.co/yR01Yg8ehi
— Y Tambe (@y_tambe) October 31, 2021
今日の講演のときに寄せられた質問に回答していく。
— Y Tambe (@y_tambe) October 31, 2021
基本的にreference workというか、文献調査が中心です。研究や教育の目的で、普段からいつも論文検索してますが、そのついでで、コーヒーに関するものも定期的にチェックしてます(そうした中から、現在連載依頼を受けているコラムに書くネタを探したりもする
— Y Tambe (@y_tambe) October 31, 2021
「舌に残るような酸味」が具体的に、どの酸味成分によるものか、推し量りようがないのでわかりません。
— Y Tambe (@y_tambe) October 31, 2021
ぶっちゃけて言うと、ありません。ただし、加温しっぱなしだと成分の変性が早くなるので、しばらく飲まないのであれば、いったん冷まして、後で(電子レンジでいいので)温め直す方が、トータルで見ると劣化は少ないです。
— Y Tambe (@y_tambe) October 31, 2021
身近にいます。川の水の中などにいる細菌や酵母などが中心です。多くの生産地では、発酵水槽に入れる水は、そうした自然水を引いてきて利用することが多いので。一応、どういう菌が多いかを調査した論文が複数でてて、土地土地で若干違いはありますが、香味に対しては*そこまで*大きく影響しない模様
— Y Tambe (@y_tambe) October 31, 2021
Q. 近年、嫌気発酵が用いられたコーヒーが増えているように思います。嫌気性発酵のメリットは何でしょうか?
— Y Tambe (@y_tambe) October 31, 2021
じゃあ、その「香りの変化」は、嫌気発酵でないと生まれないのか、と言われたら、必ずしもそうとも言えず、いわゆる発酵系ナチュラルとかハニー精製とかでも、それなりに似たような香味は出てきます。結局のところ「発酵方式が何か」より、「結果としてどういう香味に仕上げるのか」が大事。
— Y Tambe (@y_tambe) October 31, 2021
そうなんだけれども、これを「精製方法が何かよりも結果としてどういう香味に仕上げるのかが大事」と置き換えてみると、乾式/湿式という従来の精製上の物理的な分類が同時に各々の香味特性を示すという概念を覆すことにもなる。これは現時のコーヒー界の実態的課題として大きい。 https://t.co/61EzoezAUW
— 鳥目散 帰山人 (@kisanjin) October 31, 2021
承前) 「モーレなナチュラルvs.フルーティなウォッシュト」という香味の特性と対立は既に昔の概念なのかもしれないが、それが反転するかのように齟齬をきたしている現時の実態の背景を冷静に見極めることも大事。矛盾や齟齬から逃げるのではなくて、その気持ち悪い状況を分析し感受する必要がある。
— 鳥目散 帰山人 (@kisanjin) October 31, 2021
承前)「好気的条件下で形成される菌叢によってもたらされる異化/同化作用の総体としての『発酵』」と「嫌気的条件下(中略)の総体としての『発酵』」。で、その両者は、関わる菌集団がかなりの部分で共通/そもそも利用する発酵様式が共通しているため、細かい方法を問うてもほとんど意味がない
— Y Tambe (@y_tambe) October 31, 2021
しかも、それが毎回安定するわけでもない、ときた。
— Y Tambe (@y_tambe) October 31, 2021
コレ↓も個人的実感として、臭さと甘酸っぱさが連動して名称通りに段階で並んでいたのは初期の頃だけで、(ブラックハニーよりニューナチュラルっぽいイエローハニーとかあって)最近じゃ全くアテにならないhttps://t.co/il5ELTX396
— 鳥目散 帰山人 (@kisanjin) November 1, 2021
んで、その「臭さ」が、コーヒー果肉の発酵に起源するものについて、臭さの強弱があらかじめ分かればありがたい。
— Y Tambe (@y_tambe) November 1, 2021
あとは、「比較的新鮮なコーヒー果汁への浸漬」(低温下でのマセレーションなど)という技法も開発されて然るべきだと思うけど、まだ多分区別されてないし、着香を巡る論争が加熱しそう
以上、ご静聴&質問いただきありがとうございました。
— Y Tambe (@y_tambe) October 31, 2021
ここ最近、珈琲屋やマニアの方々だけで会話して「アナエロビックですけど…」などと言っている場合、口調がやや含羞を帯びていたり、面伏せや照れ笑いが見られるようになった。イロモノやキワモノに特有の仕儀といってしまえばそれまでだが、私にはイイ感じの変化に思える、ザマミロ感も含めて。
— 鳥目散 帰山人 (@kisanjin) November 11, 2021
帰山人の珈琲遊戯 パナマ バンビート農園 ティピカ シナモン含浸
【生豆と焙煎の仕立て】
セイロンシナモン スリランカ産シナモン
マスコット(ヤスマ株式会社:加工・製造)
スティック・パウダー併用 含浸
パナマ共和国 チリキ県 ティエラ・アルタス地区
バンビート農園 SHB SCAスコア84.75
ティピカ ウォッシュト(湿式精製) 100%「カシアに比べ穏やかで品のよい甘い芳香」と言われる
セイロンシナモンを選び、この樹皮乾燥スティックを
湯に浸して成分を溶出させた液を減圧装置によって
生豆に含浸処理(同時に同じシナモンのパウダーも
まぶして着香を増強)しました。これを陰干しした後に、
直火の手廻し釜で火力一定の「一本焼き」、18分10秒。
パナマのバンビート農園のティピカが有する華やかで
優しい本来の味わいを失わない程度の中深煎り。
さて、シナモンの威力や如何に? ご笑味ください。(可能であれば、先行した通常品の「万人(ばんびと)」
フレーバー通販ページ
や西尾フレーバーコーヒーの定番品のパナマなどとの
飲み比べをしても、面白いかもしれません。どうぞ!)
味
バンビート農園のティピカの柔らかい味わいに、シナモンから来る甘さと辛さが刺激的な味わいです。セイロンシナモン(カネラ)のフレーバーよりも、スパイスの甘さと辛さが印象的な味わいで、特に辛さが後に引きます。
カフェオレ・カフェラテ・カプチーノ…「カネラ」はミルクとも相性良好です
— 鳥目散 帰山人 (@kisanjin) November 11, 2021
カフェオレにすると、スパイスカフェオレのような味わいになり、寒い季節にとても良いです。