コーヒーの着香と発酵は、何がどこまで許容されるべきなのか。
インフューズド・コーヒー(Infused coffee)
Infused coffeeに関するSasaの記事が出ました。これに関しては数年前から研究機関とのリサーチが進んでおり、あまりにもわかりやすいシナモンのようなフレーバーのコーヒーやローズのような香りのコーヒーは、発酵では説明できないと結論づけられています。https://t.co/mWUW72j1Tc
— 井崎英典@第15代ワールドバリスタチャンピオン (@hide_izaki) August 24, 2021
まあなんと言いますか、スペ界での嫌気性発酵の流行のトリガーとなった主要人物のひとりであり発信力影響力がある方がこうして問題意識を持って発信されることはせめてもの救いと思います。 https://t.co/h4hpTKxoxE
— Mo (@Mo_CoTD) September 1, 2021
一応、コーヒー中の香り成分で、ローズ系としては、リナロール(精油由来/ゲイシャとかの柑橘フレーバーの候補でもある)、ダマセノン(カロテノイドの熱分解産物)あたりがある。前者は品種由来、後者は焙煎で生成(発酵での増強はおそらく効かないはず)
— Y Tambe (@y_tambe) August 24, 2021
プロセスとしての着香がありか、なしか、と言われたら、まぁそれはそれで一つの方向性なんだけど、詐称はアカン。
— Y Tambe (@y_tambe) August 24, 2021
話題の発端となったSašaの記事では、名前こそ出していないものの明らかにエル・パライーソ農園のことであろう記述も出てくる。あの独特な風味は発酵だけでは得られないだろうと検査をしたら、エッセンシャルオイルに浸けているという結果が出た、と。それじゃライオンコーヒーとなんら変わらん。
— Ryo John Ito | BATHTUB COFFEE代表 (@bathtubcoffee) August 31, 2021
またブラジルではユーカリを発酵槽にいれてる疑惑がたまにぽつぽつ出てきます。
— Coffee Fanatic 三神 (@RyoMikami_CF) September 1, 2021
Best of Panamaでは一時期”Innovation”というカテゴリーがあって、そこでは意図的にマンゴーピューレー等を添加したロットが出品されていました(これは公式)。
ルワンダのイースト添加発酵はフレーバーの付加というよりも、雑菌の繁殖を抑え、発酵を均質化するために使用されていますね。
— Coffee Fanatic 三神 (@RyoMikami_CF) September 1, 2021
似たような物には乳酸菌を添加しているロットも複数ヵ国であります。コロンビアのラ・パルマとかですね。
・・・・・・サンチュアリオとTaza Doradaは実はうちの店でも扱ってたりして・・・・・(/ω\)
— Coffee Fanatic 三神 (@RyoMikami_CF) September 1, 2021
一応性善説にのっとって仕入れましたが、やっぱり味は不自然だよね(´∀`*)ウフフ
ただ商品としては面白いと思います。
今後の焦点は”消費者に情報開示されるかどうか”だと思います。こうしたコーヒーについてのファナティックの考え方はブログの"情報の透明性"の部分に書きましたのでよかったらどうぞ😃https://t.co/nOY1LCgVIf
— Coffee Fanatic 三神 (@RyoMikami_CF) September 1, 2021
あ、あとフルーツ発酵のパイオニア、◯0+もそうだった🤣
— Coffee Fanatic 三神 (@RyoMikami_CF) September 1, 2021
あ、というか、商社さんが買付時に評価される時にみんなこれやれば良いのでは。
— Mo (@Mo_CoTD) September 1, 2021
着香に類するコーヒー生豆の作出と流通については、その産品自体の是非論と、その素性の情報開示の課題とは明確に分けて考えたい。
— 鳥目散 帰山人 (@kisanjin) September 1, 2021
承前) 後者(生豆の素性の情報)の開示の課題については、透明性(transparency)を求めることは当然のようだが、現在でもコーヒー生豆の生産・流通は情報の隠蔽に満ちている。放棄や妥協をすり替えた性善を唱えても課題は解決されない。
— 鳥目散 帰山人 (@kisanjin) September 1, 2021
あと、『コーヒーの科学』でもすでに触れてるけど、発酵をコントロールしきれてないのが多い。例えるなら、毎朝毎朝、『天然酵母』を分離するところから始めてパン焼いてるようなもので。そりゃ毎回毎回、品質変わるのはしゃーない。
— Y Tambe (@y_tambe) September 1, 2021
承前)じゃあ、他の果物の果汁使ってinfusionするのを「着香だからダメ」派も、コーヒーの実の果汁使えばmacerationなんだけどそれは、と聞くと、多分考えは割れるだろう。
— Y Tambe (@y_tambe) September 1, 2021
結局のところ、「発酵によって香味がどうなるか」って言ったら、乳酸菌や酪酸菌によるカルボン酸生成と、酵母によるアルコール発酵から、両者が合わさってエステル形成して、多様&特殊な果実香が…というのが典型的なパターンなわけで。
— Y Tambe (@y_tambe) September 1, 2021
あとまぁ、コーヒーの場合、ペクチン分解してそれなりにメタノールも生成すると思うので(裏返すと、発酵強めに作るキシルのカフワは多分それなりにヤバめのも多いはず)、エチルエステルだけでなくメチルエステルも、多分それなりにできるはず。
— Y Tambe (@y_tambe) September 1, 2021
もちろん、この辺は、これまでウォッシュトにせよパルプトナチュラルにせよ、諸々が通ってきた道なので、評価が固まるには時間がかかるのだけど、なんせ色々一気に出しすぎてきて、本来なら割と短期間で淘汰されるだろうはずのものまで一緒に並べられてる状況。
— Y Tambe (@y_tambe) September 1, 2021
中学で習う「アとエの中間音」ってヤツな。 "anaerobic"、否定接頭辞 an + aerobic(エアロビクスと同じ語源)なんで、他のカナ表記との整合的に「アネ(ア)ロビック」の方がまだしっくりくる。
— Y Tambe (@y_tambe) September 2, 2020
コーヒーの精製過程では、だいたい酵母によるアルコール発酵と、各種細菌による乳酸発酵、酪酸発酵あたりがメインになるので、嫌気的なプロセスではあっても、普通に「発酵」でいいんですよね……嫌気呼吸じゃなくて。
— Y Tambe (@y_tambe) September 2, 2020
発酵の程度が少ないうちは、そんなに問題にならないのだけど、程度が大きくなるほどに、ぶれも大きくなるのが。そもそも発酵自体がいわゆる欠点 defect (短所ではなくて品質評価時にマイナスでポイントする)につながるものだし。 https://t.co/zaMLuAuh6v
— Y Tambe (@y_tambe) September 1, 2021
そうそう、そうだったのですよ。 https://t.co/Ok6nvw6eCM
— Mo (@Mo_CoTD) September 1, 2021
コーヒーを自己顕示欲のツールにする人達が増え、本質を外れたマニアックな商品ばかり囃し立てる軽薄な消費の傾向が、生産者を意味不明なプロセスと奇抜な名称作りに駆り立てるのであり、それを生産者側に非があるような穿った物言いをされるのは全くもって納得し難い現象です。
— Libbie (@LibHash) September 2, 2021
なるほどそうかもしれない。けれどもじゃあ消費者側に非があるのかといえばそれも納得し難い。是非問わず需給のどちら側にも囃し立てる輩はいるし、それは(私も含めて)毎日毎日倦まずに穿ったコーヒー話を投げるツイ民のような連中に重なるところが多い。皆自らの恥を知るべきです。 https://t.co/hoqZgPL4zJ
— 鳥目散 帰山人 (@kisanjin) September 2, 2021
なおこれは批判でも肯定でもありません。昔バニラやキャラメルのフレーバーコーヒーがあったように、こういったInfusedもこれらの一種と考えることもできます。
— Coffee Fanatic 三神 (@RyoMikami_CF) September 3, 2021
市場があるという事はInfusedコーヒーを楽しむトレンドがあることを意味します。これ自体に良し悪しはないので誤解のなきよう・・・。🙏
コトワ農園でもエチオピア品種のロットがあるから、Hairloom(エチオピア土着品種)である可能性がありますね。
— Coffee Fanatic 三神 (@RyoMikami_CF) September 3, 2021
エチオピアのJARCは現在種苗の国外への持ち出しを禁止しています(あたりまえだけどね)。
ここら辺は日本のイチゴ品種の話にも似ているかも😇。財産としての品種が今後議論されるかも。
添加物を入れないアナエロに関してはファナティックは受け入れています。ワインの醸造も、もともと果皮についている酵母で発酵させるので、通常のCarbonicやAnaerobicは素敵な発明だと思います。
— Coffee Fanatic 三神 (@RyoMikami_CF) September 3, 2021
しかしこれを隠れ蓑に無茶する(フルーツ添加)輩が多いのでパイオニアのSasaも心苦しいでしょうね🥲
シャンパンなんかでも門出のリキュールは伝統的製法なので、添加が認められています。
— Coffee Fanatic 三神 (@RyoMikami_CF) September 3, 2021
フランスの白ワインはオーク樽で熟成するので樽香が付きます。しかしステンレスタンクの場合は付きません。
またブルゴーニュではリンゴ酸を乳酸に転化するマロラクティック発酵を行うことがあります。
COEでは最近添加物の禁止措置や、品種のインスペクションに力を入れ始めています。良い兆候だと思います。いじくったコーヒーが評価されると、まだ日の目を見ない秀逸なテロワールが発見されなくなるリスクがあるからです。
— Coffee Fanatic 三神 (@RyoMikami_CF) September 3, 2021
問題はWCE管轄のコーヒー競技会の方ですね。
WBC等で使用コーヒーを完全に固定する必要はないと思いますが、少なくともカテゴリー分けを行った上での、生産処理の透明性を担保したレギュレーションの制定は急務だと思います。
— Coffee Fanatic 三神 (@RyoMikami_CF) September 3, 2021
現行のルールでは”生産の初期において使用された添加物”は許容されています(実際ガバガバで意味ない(笑))。😇
コーヒーの着香については、帰山人の珈琲漫考「攪拌と着香」も参照。
【やっとる?インフュージョン】
— Kenta/ Coffee Bar GallageとAcid CoffeeとDanteの中の人 (@CAFE_BANG) June 28, 2023
日本とコロンビア、インフューズの呼び方と認識にズレがある。
コロンビアでは生豆に香りや成分を加えることをインフュージョン呼ぶ。ラムの樽だったり、CBDオイルだったり。… pic.twitter.com/xgCKtnnnWU
インフュージョンとカルチュリンの言葉のズレが、認識のズレを生んでいるようです。
コーヒーの品種と遺伝資源
品種と遺伝資源に関しては、過去のツイッターの議論を参照。
あと、コーヒーの場合、香味の前駆物質に生豆=種子(胚乳)で作られるものと、果肉とかで作られて種子に運ばれるものがあるわけで。んで、果肉の遺伝子型は木と同じ(F1世代)でも、種子はF2世代なのよ。
— Y Tambe (@y_tambe) July 9, 2019
ただ似たような形で、農業試験所が新品種を交配して作って農家に提供して……というシステムをやろうとして、結局うまくいかなかったのが、ケニアのルイル11。
— Y Tambe (@y_tambe) July 9, 2019
仮にエチオピアが、アラビカ野生種の遺伝的資産をキープしたとして、それは一体、エチオピアの「誰」のものになるべきなのか、って問題もあるわけで。もともとの自生地である西南部でコーヒーを利用してきた少数民族の頭越しに、エチオピアの中枢を担うアムハラ人やオロモ人が我が物とするのか、など。
— Y Tambe (@y_tambe) July 10, 2019
ま、遺伝資源の権利と対価があんまり大きく働くと、コーヒーが自由に移動も栽培もできなくなるし、利益配分が根本からひっくり返ってしまうことになりかねないからね。でも、ゲイシャの価格を遺伝資源による権利と付加価値で積み上げたらナンボ、それをどう分配する?という考え方があってもイイよな。
— 鳥目散 帰山人 (@kisanjin) July 9, 2019
「皆さんこんにちは、コーヒー農園ツアーへようこそ。まず、入園する前にこの『遺伝資源の保全に関する誓約書』にサインをお願いします。それと、ランチ代込みのツアーはお一人様120ドルですが、資源権利保全料は別途に1500ドルを頂戴します」ってなコトにもなるかもしれないし…
— 鳥目散 帰山人 (@kisanjin) July 9, 2019
CBD発効以前に導入された苗木については対象外ではないでしょうか。
— バイクくん@超お嬢様のパグ (@Micheletto_D) July 11, 2019
遺伝資源の利用については、生物多様性条約名古屋議定書で規定されていて「遺伝資源の原産国」は生物学的原産国とは同じではないですから、コーヒー原産国としてのエチオピアの権利は限定的であって遡及的に保全されてはいません。もちろん議論としてはあったのですけどエチオピアは搾取されたまま https://t.co/WRHOwE4yEX
— バイクくん@超お嬢様のパグ (@Micheletto_D) July 11, 2019
それ以前の品種を使った交配は、すでに各国で(ブラジルとかだと1930年代、中米はコスタリカのCATIEを中心に50-60年代以降)行われてきた後で、そうして育種されたものには、実はあまり有用なものは今の所見つかってないのです。なので、アメリカの研究者が中心になってるWCRは(続
— Y Tambe (@y_tambe) July 11, 2019
んでもまぁ、今のエチオピアは、かなりの親中国家(というか、中国がかなり投資した結果)でもあって。
— Y Tambe (@y_tambe) July 11, 2019
昨シーズンの、コーヒー取引価格暴落から、やはりICAみたいな国際価格維持協定が必要(&それをコモディティだけでなくスペシャルティコーヒーにも広げよう)、的な論調もあるのだけど(続
そうなると、その中国との関係性もあって、「エチオピアがアメリカを足蹴にする」って可能性はないとも言えないので。
— Y Tambe (@y_tambe) July 11, 2019
(つっても、実際はエチオピアもかなり強かなので、そこまでどちらかに肩入れするとは思い難いのだけど)
国際的な遺伝資源の研究は名古屋議定書のおかげでものすごくやりにくくなってしまいましたが、資源提供国の権利を尊重する方向性は変わらないのだと思います。そこにアメリカが入っていないので問題は複雑化しますが
— バイクくん@超お嬢様のパグ (@Micheletto_D) July 11, 2019
んで、そのときに、育種の材料にする親系統について、93年より以前から既に自国にあったものなら、それについては他国の権利が及ばない。極端な話、エチオピアが「コーヒーはもともとエチオピアが原産地だ!」と言って包括的に権利を主張することはできないし(続
— Y Tambe (@y_tambe) July 11, 2019
批准国が議定に順うのは当然だと存じます。しかし、(他分野でも数多の例があるように)順うのを止めて離脱する道もありますね。少なくとも、批准国が共に円満であるともいえないわけで。ただ、(もう一度言いますが)私の言わんとしたことは、CBD上でどうとか言う意味ではないんです。
— 鳥目散 帰山人 (@kisanjin) July 11, 2019
《なぜ遺伝の保全の話に向かわない?》について、確かにコーヒー種苗の多くがCBD議定以前にあること、規約に順えば論議にならないこと、という要素はある、それを否定はしません。しかし、コーヒー消費国は《品質よりも遺伝資源として種苗価値》が大きくなる議論を避ける、という面を言ったのです。
— 鳥目散 帰山人 (@kisanjin) July 11, 2019