スターバックス リザーブ®:インドネシア スラウェシ トラジャ サパン ヴィレッジ

スターバックス リザーブ®のスラウェシ トラジャ サパン ヴィレッジです。スターバックスは言わずと知れた世界的なコーヒーチェーンです。スターバックス リザーブ®は一部限定店舗でのみ取り扱われる希少なコーヒー豆です。お店で飲むこともできますが、豆を購入することもできます。お店ではクローバーというスターバックス独自の抽出マシーンで淹れたコーヒーを飲むことができます。

スラウェシ トラジャ サパン ヴィレッジ

インドネシア

インドネシア(Indonesia)は一万数千にも及ぶ複数の島にまたがる東南アジアの島国です( 画像2枚目の太い線で囲まれている場所です)。首都はジャワ島に位置するジャカルタ(Jakarta)です。

インドネシアは世界第4位のコーヒー生産量を誇る世界有数のコーヒー大国です。インドネシアのコーヒー農園は小規模農園が全体の95%も占め、残りの大規模農園が国営と民営で半々です。インドネシアでは、17世紀にオランダ軍がアラビカ種をジャワ島に持ち込んだことにより、コーヒー豆の栽培が始まりますが、現在栽培されている品種はそのほとんどがロブスタ種です。これは19世紀後半にコーヒー栽培の大敵であるコーヒーさび病菌が流行し、従来のアラビカ種を栽培していた農園が壊滅的な被害を受けたため、病害に強いロブスタ種に切り換えられたためです。

具体的には、インドネシアのアラビカ種の主な品種は、カティモール種とジャワ・ティピカ種です。有名な銘柄としてマンデリンやトラジャ、ガヨ・マウンテンが挙げられます。1,000m以上の高地で栽培され、全体生産量の10%ほどです。残り90%以上を占めるロブスタ種は缶コーヒーやインスタントコーヒーの原材料となります。

主要産地は島ごとにスマトラ島がマンデリン、リントン、ガヨ・マウンテン、スラウェシ島がカロシ、トラジャを栽培しています。

スラウェシ トラジャ サパン ヴィレッジ

サパンヴィレッジ、DOKUMENTASI TORAJA TERKINIより

スラウェシ島

スラウェシ島はヒトデの形をした島で、インドネシア諸島の他の島々よりはるかに古く、高山の斜面に広がる水田の外に永続的な霧に覆われた岩壁を持つ複雑な地形をしています。

気候はブルーマウンテンを産出するジャマイカ島に似ていて、高温多雨の熱帯雨林気候です。年間を通して気温が高く、日中は最高気温30℃程度まで上昇し、夜間になると10℃程度まで冷え込む寒暖の差があり、毎日定期的にスコールが降ります。熱帯高地の肥沃な弱酸性の土壌で、良質なコーヒー栽培に最適な条件が揃っています。

トラジャ

スラウェシ トラジャ サパン ヴィレッジは赤道直下のスラウェシ島(Sulawesi、旧セレベス島)南部、南スラウェシ州サパン村(Sapan village)で生産されます。南スラウェシはインドネシアの中でも特に標高の高い地域で、高いところでは1,900mにも達するほどの標高でコーヒーが生産されています。

スラウェシ トラジャ サパン ヴィレッジはトラジャ族(Toraja)によって生産されています。トラジャ族は、スラウェシ島の南スラウェシ州と西スラウェシ州の山間地帯に住むマレー系の先住少数民族です。コーヒーのブランド名「トラジャ」は、この少数民族から取られています。

トラジャ族はほとんどがキリスト教を信仰していますが、アルクトドロ教(Aluk To Dolo、英語でWay of the Ancestors)と呼ばれるアニミズム信仰で知られています。

トラジャ族の多くが住むタナ・トラジャ(Tana Toraja)は植物や野生生物が豊富な山岳地帯にあり、鉄分の豊富な土壌と約1,500mの高地の涼しく快適な気候に恵まれていいて、コーヒー生産には最適の土地です。

インドネシアのコーヒーの歴史は、バタヴィア(Batavia、現在のジャカルタ)のオランダ総督が当時オランダ領であったインドネシアのコーヒーを持ち込んだのが最初だと言われています。アラビカ種は1696年にスリランカ(Sri Lanka)からインドネシア(ジャワ島)に持ち込まれましたとも言われています。商業生産されたコーヒーの輸出の記録は、1717年にバタヴィアから2000ポンド輸出されたのが最初のようです。ただし、インドネシアのコーヒーの始まりについては、よくわからないことが多いようです。

インドネシアにコーヒーが伝わった年としては、文献上、1690年、1696年、1699年の3つの年代が挙げられている。このうち最初の「1690年」には、VOC総督ジョアン・ヴァン・ホールンが、ジャワ島のバタヴィアにあった彼の家の庭に、イエメンからこっそり持ち出したコーヒーノキを植えたとされる。これが記録上、インドネシアへの最初の伝播であるようだ。このときの木は、イエメンのアデンから持ち出されたものだと考えられる。ただし、この記録を採用している文献が多くない*1ため、正確なところはよく判らない。

*1:The Los Angeles Times, June 30, 1899, p. 7に見られる。ソースが新聞記事である点からも信憑性については疑いは残る。

旦部 幸博「インドネシアへの伝播」,百珈苑BLOG,2010年7月23日エントリー

(現在ロサンゼルス・タイムスのリンクは切れています)

トラジャとコーヒー戦争

トラジャ地区には1850年代にオランダによってコーヒーが持ち込まれました。1876年にさび病が発生したことにより、ジャワ島の大規模なコーヒー農園の多くが壊滅、小規模の独立農家によるトラジャ地区でのコーヒー栽培の普及が促進されました。しかし、これは来るべき争いの前兆でした。

トラジャ地区では、1890年代にトラジャ族とこの地区に侵攻してきた南スラウェシ最大の民族グループだるブギス族(Buginese)との間で、コーヒー戦争が起きました。当時コーヒーは1キロ数百ドルで取引され、貴族と裕福な商人だけが購入できる高級品でした。そのため、トラジャ族のコーヒーの所有や管理、供給や貿易ルートを征服しようと、ブギス族が侵攻してきたわけです。

トラジャは別名「ペラング・コピ(Perang Kopi)」と呼ばれることがあります。これは「戦争コーヒー(インドネシア語で"Perang"は「戦争」、"Kopi"は「コーヒー」の意味)」という意味で、このコーヒー戦争から来ている名称です。

ブギス族はスラウェシ島の底部に住む民族で、トラジャ族は高地に住む民族でした。トラジャ(ブギス族の言葉で「ト(to)」が「人」、「リアジャ(riaja)」が「高地の山」という意味)という名前も、トラジャ族が高地に住んでいるためにその名が付けられたという説があります。

キーコーヒーとトアルコ トラジャ

第二次世界大戦によって、トラジャ地区でのコーヒー生産は壊滅的な影響を受けました。しかし、日本のキーコーヒー(Key Coffee)がこの「セレベスの名品」を蘇らせるべく再生プロジェクトに乗り出します。そして、1978年キーコーヒーは「トアルコ トラジャ」を世に送り出すことに成功しました。トラジャ・コーヒーが今に知られているのは、キーコーヒーの功績が非常に大きいです。

インドネシアコーヒーと地理的表示

現在「トラジャ」は「地理的表示(Geographical Indication(GI)」という知的財産権で保護されています。そのため、現在の「トラジャ」は原産地や生産方法が保証されたコーヒーです。しかし、「トラジャ」はキーコーヒーの登録であり、また「ガヨ(Gayo)」はオランダのアムステルダムにある企業である「オランダコーヒー(Holland Coffee B.V.)、"B.V."は非公開株式会社のこと」による登録のため、インドネシアの製品であるにもかかわらず、商標権がインドネシアに属していません(アジア地区の地理的表示についてはこちらから)。

そのため、現地の人々が生産したコーヒーであるにも関わらず、彼らが自らの名前で販売することができないという問題が起きています。

サパン村

サパン村のある南スラウェシは、インドネシアでは比較的稲作の盛んな地域です。高山の斜面に広がる水田とトラジャ族の船のような屋根を持ち、幾何学模様が彫刻された独特の建築は非常に美しい景観を形成しています。

この地域のコーヒー生産者は小規模農家で、トラジャコーヒー生産者協同組合(Toraja Coffee Growers Cooperative)によってコーヒーが管理されています。近年この協同組合はVECOというNGOと協力して、良質なコーヒー生産のためのインフラストラクチャの改善に取り組んでいます。

品種

この地区では主にカチモール(Catimor)、S795、ティピカ(Typica)を栽培していますが、記載がないため品種は不明です。

精製方法

精製方法は「スマトラ式、Giling Basah(ギリン・バサ)、湿式脱穀(wet hulling)とも呼ばれる」です。主にスマトラ島で用いられるインドネシア特有の精製方法です。このスマトラ式と他の精製方法との大きな違いは、乾燥工程を2度に分け、含水量が極端に高い状態で脱穀することにあります。「スマトラ式」は、生産した農園でルワク(luwak)と呼ばれる機械で外皮を除去し、ムシラージ(mucilage、一般的にはミューシレージとも)を残した状態で途中まで乾かしたコーヒーチェリーを、取引業者が集荷して、まとめて脱穀と仕上げの乾燥を行います。インドネシアに特殊な気象条件と精製方法が相まって、酸味が消え、コクが深く、独特な風味と味わいを有する、深緑色を示すコーヒ豆が生まれます。

ハーブのようなフレーバー、濃厚でまろやかなコクがあり、口当たり柔らかいのが特徴です。

スターバックスとスラウェシ島

スラウェシ島南部産のコーヒーは、スターバックス リザーブ®®の前身であるブラックエプロンエクスクルーシブというシリーズで販売されたことがあります。

スターバックス リザーブ®のスラウェシ トラジャ サパン ヴィレッジ

スターバックス リザーブ® コーヒーは、世界中のスターバックスの中でも限定店舗で販売しております。また、ご注文ごとにコーヒー豆を挽き、一杯ずつおいれしたコーヒーのご提供をしています。

スターバックスホームページより

こちらが商品説明のカードです。コーヒーについて詳しい説明が書いてあります。

※ラベルデザイン
このカードのデザインは、この素晴らしいコーヒーを育んだトラジャ高地をモチーフにしたものです。この地域はコーヒー栽培の長い歴史があり、今でも伝統的な栽培方法が行われています。遊び心のある絵は加工法を、独特な味わいのある背景は、息をのむほど美しいこの生産地の、多雨多湿な気候を表現したものです。

スターバックスホームページより

100gと250g単位で売っています。こちらは100gです。

焙煎

スターバックスは、コーヒーをローストのレベルで、スターバックスブロンドロースト(浅煎り)、スターバックスミディアムロースト(中煎り)、スターバックスダークロースト(深煎り)の3つに分類しました。豆ごとに少しずつ異なるローストの時間や温度を40年もの蓄積された経験と技術をもったマスターロースターが探求しています。こちらのスラウェシ トラジャ サパン ヴィレッジはスターバックスダークローストであると思われます。

焙煎:スターバックスダークロースト

しっかりとしたコクと深みのある力強い風味が特長。

欠点豆が若干あります。

スラウェシ島のトラジャ特有のハーブのようなフレーバーと濃厚なコクが印象的です。酸味と甘味のバランスのとれた味わいです。

<参考>

「Toraja Coffee」,Visit Toraja<http://www.visittoraja.com/toraja-coffee/>2019年8月23日アクセス.

「Sulawesi Toraja Sapan Minanga Grade 1 GrainPro」,Royal Coffee<https://royalcoffee.com/product/45368/>2019年8月23日アクセス.

「トアルコ トラジャの歴史」,KEYCOFFEE<https://www.keycoffee.co.jp/toarcotoraja/history.html>2019年8月23日アクセス.

「南スラウェシ州のこと」,スラウェシ島-インドネシア-情報マガジン<http://www5d.biglobe.ne.jp/makassar/up/sulawesi.html>2019年8月23日アクセス.

「タナ・トラジャ Tana Toraja」,スラウェシ島-インドネシア-情報マガジン<http://www5d.biglobe.ne.jp/makassar/up/toraja.html>2019年8月23日アクセス.

古川久雄「南スラウェシの稲作景観」,東南アジア研究 20巻1号 1982年6月<https://kyoto-seas.org/pdf/20/1/200103.pdf>2019年8月23日アクセス.

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