ハリオ(HARIO) 創業100年の歴史とV60透過ドリッパーの飛躍
ハリオ(HARIO) 創業100年の歴史
ハリオ(HARIO)は、1921年10月30日に柴田弘製作所として創業し、2021年10月30日に創業100年を迎えました。初代の柴田 弘(しばた ひろむ)から5代目の柴田 匡保(しばた ただやす)に受け継がれています。創業当初は理化学用ガラスの製造販売をしており、現在の使用されている素材と同じ耐熱ガラスの開発と量産化に成功しました。
ハリオは、1948年にハリオ初の家庭用製品としてコーヒーサイフォンを発売、1965年に発売したフリーザーポット 1号型を発売しました。これはやかんで煮出した麦茶をそのままいれて冷やすことのできるガラス製の冷水筒で、大ヒットしました。この大ヒットを受け、1971年に古河工場が完成させました。これは1957年に完成した深川工場に続いて完成した工場でした。しかし、古河工場は2011年の東日本大震災で被害を受けました。
100 年もの間にあった困難と言えば、東日本大震災です。HARIO の茨城県古河工場も甚大な被害を受けました。HARIO 古河工場では、24 時間休むことなく原料を電気で溶かして耐熱ガラスを生産しているので、電気の供給がストップしてしまったときには、どうすることもできませんでした。その後の社員の努力のおかげで 2 ヶ月足らずで復旧することができました。今もこうして理化学品や家庭用品を製造し続けることができるのも、いくつもの困難を乗り越えてきたからだと身に染みて感じることができます。
「HARIO SCI. NEWS vol.124 もうすぐ創業100周年」,ハリオサイエンス株式会社.
その後、1979年に発売したコーヒー&ティープレスのハリオールも大ヒットしました。ハリオは、理化学用品・工業用品・家庭用品の3つの事業を展開しましたが、徐々に家庭用品の事業が大きくなり、その中でもコーヒー分野が圧倒的に強くなりました。2005年に発売したV60透過ドリッパーが世界的な大ヒット商品となり、コーヒー用品の製造会社として世界的に知られるようになりました。
ハリオは、2021年に創業100周年を迎えたことを受けて、過去に販売された商品の復刻版を販売しました。
V60透過ドリッパーの知名度の向上
V60透過ドリッパーは、2005年05月10日に発売されました。2007年度グッドデザイン賞受賞し、2009年6月にアメリカ合衆国で販売が始まりました。
アメリカ合衆国においては、スターバックス(Starbucks)が広まったことで、高品質なコーヒーを飲む土壌が生まれました。その後誕生したサードウェーブのコーヒー店が、ハンドドリップで一杯ずつ抽出し提供を行なった流れの中で、V60透過ドリッパーの使用が広まり、評価が高まりました。
「V60の人気に火がついたのは、アメリカのシアトルが最初です。2008年当時、シアトルではスペシャリティコーヒーというムーブメントが出てきました。その人の好みに合わせて、その人のためだけのコーヒーを入れるというものです。お客様一人一人のために、ペーパー・ドリップでコーヒーを入れるのですが、そこで使われていたのが、ハリオのV60だったんです。ペーパー・ドリップというのは、言ってしまえばただお湯をかけるだけなんですが、人によって仕上がりが異なる。スペシャリティコーヒーができたことで、コーヒーの専門家が出てきたんです」
「シアトルのスペシャリティコーヒーブームを支えたハリオのV60フィルター」,家電 Watch 2013年12月26日.
V60透過ドリッパーは、インテリジェンシア・コーヒー(Intelligentsia Coffee)をはじめとするサードウェーブ店が、V60透過ドリッパーを使用したオンライン動画を公開したことから火がつき有名になりました。
2005年に発売されたHARIO V60ですが、2010年までの5年間、アメリカでの販売はほとんど「ゼロ」でした。しかし2012年現在、サンフランシスコのカフェでは当たり前のように使われています。この2年間で何が起こったのでしょうか。
元々、HARIOのコーヒーサイフォンは、米国を始めとする海外でも、コーヒーマニアの間では知られていました。しかし火を使う器具であるため、サイフォンではなくドリッパーだけを提供することにしていたそうです。そのドリッパーが注目された形になります。
2005年は、ちょうど全米でコーヒー熱が高まり始めるタイミングでした。5年間かけてスペシャルティコーヒーからサード・ウェーブのコーヒーカルチャー勃興する絶好のタイミングで紹介されたV60。美しく印象的で、かつおいしくコーヒーを淹れることができる器具は、オンラインビデオで一躍有名な存在になります。
Intelligentsiaなどのロースターが、V60を使ってコーヒーをサーブするビデオをアップし、そのクールな製品とややハウ・トゥ的な側面も相まって、新しいコーヒーの楽しみ方のアイコンとして、V60が一挙に広まることとなりました。
松村太郎「週末珈琲:世界のスタンダードとなった老舗耐熱ガラスメーカーHARIO」,2013年2月10日.
他方で、スコット・ラオ(Scott Rao)が、2007年頃からドリッパー内を攪拌する抽出方法の紹介を始めました。2012年頃になると、V60透過ドリッパーを使用してドリッパー内を攪拌する抽出方法がサードウェーブのバリスタたちに広まり始め、日本では、インテリジェンシア・コーヒーがドリッパー内を攪拌して抽出する動画が話題となりました。その後、V60透過ドリッパーを使用してドリッパー内を攪拌する新たな抽出方法が開発されるようになりました。
@lasahJP これまで見てきたサードウェーブ論の中ではまともな方。ただし、サードウェーブの定義そのものがおかしいというか、「最近出てきたサードウェーブ中の一派」が広めてる説に引っかかっている点は否めない。
— Y Tambe (@y_tambe) July 16, 2014
@lasahJP 特徴はいくつか上げられるのだけど、抽出に関しては、スタバで普及していたエスプレッソだけでなく、それ以外の方法での一杯淹て提供を行った。ただし初期に主流だったのはフレンチプレス。北欧のボダム社あたりが普及に尽力したので、初期サードウェーブは「北欧発祥」の触れ込み
— Y Tambe (@y_tambe) July 17, 2014
@lasahJP 2000年頃にアメリカのサードウェーブ勢の中でいろんな抽出法、抽出器具を試したり、開発したりという動きが活発化してて、そこからネットその他で情報を集めて、サイフォンに行き着いたり、円錐ドリッパーに辿り着いたり、という人が出てくる。ブルーボトルも2002年創業。
— Y Tambe (@y_tambe) July 17, 2014
@y_tambe 円錐ドリッパーというのは金属製のやつのことでありますか?
— お茶と食料雑貨[ラサ] (@lasahJP) July 17, 2014
@lasahJP 同形、といっても、ハリオとコーノでは湯の出方に違いがあるので全く同じというわけではありませんが。それと、漏れ聞いたところによると、ハリオが販売するにあたっては、コーノと、もう一つ以前類似のものを出してた松屋に対しても「仁義は通した」とのこと。
— Y Tambe (@y_tambe) July 17, 2014
コーノ(KONO) VS ハリオ(HARIO)
昨年12月、休暇をいただいていた器具屋のSは、東京・巣鴨駅近くの珈琲サイフォン株式會社様(1925年創業)へ☺️
— 世界の珈琲ユニオン / Union Co., Ltd. (@union_coffee) January 12, 2019
建物内の巨大な焙煎機と煙突に圧倒されました😲
国産初の『河野式コーヒーサイフォン』や、ユニオンでは取り寄せ品の『MD-21』『MDK-21』など『名門』全種、自家焙煎豆を販売中です(続) pic.twitter.com/QHYBJ4Xtxc
(続)見たのは
— 世界の珈琲ユニオン / Union Co., Ltd. (@union_coffee) January 12, 2019
“リブが長すぎて雑味の混入を防げない”ため1968年の発売後、販売中止となった『名門フィルター』の初期モデル。
(SNS掲載○、貴重すぎて今回は控えます)
大事なのは、透過式のフィルター開発に際し『リブが縁まで伸びたモノ』は機能性から、当初より作っていなかった点(続)
(続)(台形に円錐形、リブ、1つ穴、大きな1つ穴、3つ穴といった
— 世界の珈琲ユニオン / Union Co., Ltd. (@union_coffee) January 13, 2019
日本のフィルターないしはドリッパーのプロダクトデザインの源流を辿ろうとすると、
ドイツのMelitta社(1908年創業)が開発してきたフィルターに(現在は1つ穴のみ)行きついてしまう
という見方も念頭に置いて、続けますが)(続) pic.twitter.com/5II1BTI119
『リブを縁まで伸ばさない』ことで
— 世界の珈琲ユニオン / Union Co., Ltd. (@union_coffee) January 13, 2019
湯のヨコ漏れを防ぎ、アワや雑味を浮かせながらも、
『フィルターの角度』と、
ペーパーとフィルターの間の空間を作り、コーヒー液を落とす役割を果たす『リブの深さと長さ』
(抽出スピードとその調節の幅の広さに影響する)
の改良を重ねられた、(続) pic.twitter.com/Pnax4oCDKA
(続)河野敏夫 二代目社長の取り組みは、
— 世界の珈琲ユニオン / Union Co., Ltd. (@union_coffee) January 13, 2019
現在も『名門円錐フィルター』を使ってみた上で、その合理性の高さを評価する声は多いです☺️
考案は半世紀前。(続)
(続)
— 世界の珈琲ユニオン / Union Co., Ltd. (@union_coffee) January 14, 2019
『ペーパーの簡便さとコーヒー抽出に理想的な3枚ハギのネルの漉し袋のもつ長所を兼ね備えた』として、
『ネルドリップに近い味わいが楽しめる』として
1973年に再発売された、
『名門円錐フィルター MD-21』
(ユニオンでは取り寄せ品)
『MD-41』(取り扱い○)#純喫茶コレクション pic.twitter.com/xYHcUsxBMF
(続)
— 世界の珈琲ユニオン / Union Co., Ltd. (@union_coffee) January 14, 2019
河野雅信 のちの三代目(現在) 社長が『名門円錐フィルター MD』を元に1985年に発売した、
『ドリップ名人 TF-20(📷2)・TF-40』
『名門 MD 📷3』より微妙に短いリブ・大きな抽出穴☺️(→調節幅は狭く)
《点滴💧など注湯がうまくなくても誰でも🙆👍》を
目指す歴史はこのモデルから☺️ pic.twitter.com/CAn76euZV7
(続)ところが
— 世界の珈琲ユニオン / Union Co., Ltd. (@union_coffee) January 14, 2019
勤続約半世紀
ユニオンの重鎮Anさん
「2000年代に入り『名門』の特許が切れてから、HARIO様が展示会で、河野二代三代が長さに腐心してきた12本のリブをスパイラル状に縁まで伸ばしただけにしか見えない『V60』の試作品を出してきたのは衝撃だったよ…元々“ヒゲ”はなかった…」(続) pic.twitter.com/W7Ot5m0E6a
(続)ユニオンの重鎮Anさん
— 世界の珈琲ユニオン / Union Co., Ltd. (@union_coffee) January 14, 2019
「バリスタは当然居ないし、社員さんがただお湯を注いだだけ、明確な抽出法もない…同伴者一同思うに“美味しくなかった”…『KONO』をマネて、それより質を落として《ハリオ式珈琲》と掲げるならば、いくら法で以てOKでも、“模倣品”“コピー”“パクり”と言われるよ…」(続)
(続)
— 世界の珈琲ユニオン / Union Co., Ltd. (@union_coffee) January 14, 2019
↓河野氏の指摘も、
“開発時”意図された透過式(粉の“濾過層”に湯を丁寧に通す)のドリッパーととらえた時、妥当なのかもしれません。
『名門』がリブで以て避けてきた“湯のヨコ漏れや雑味の混入”が起こりうるため。
(点滴で始めなければ一層)
とはいえ、味覚や実感は様々。
お試しを☺️ pic.twitter.com/sAB1k8z2fN
(続)
— 世界の珈琲ユニオン / Union Co., Ltd. (@union_coffee) January 14, 2019
ユニオンの重鎮Anさん
「あの展示会で苦言を呈した結果かわからんが、“ヒゲ”がついて2005年の『V60』発売…早く湯を落とすためと聞いたよ…機能や特徴なんてプロダクトデザインの後付けのドリッパーもありうるってこと😁
機能・特徴は、少なくともメーカーの売り文句。試して確認😁」(続) pic.twitter.com/nIt3tkW7EY
(続)
— 世界の珈琲ユニオン / Union Co., Ltd. (@union_coffee) January 14, 2019
S「『V60』と、”リブが縁までまっすぐ伸びた他ドリッパー”とを試用・比較して、湯通しの必要性、それによる味わいへの影響について議論はさておき、お湯をペーパーにかけても、密着からの回復が『V60』は非常に早い…“スパイラル”の意味は大きく、オシャレ✨」
上司O「それな。機能美」(続) pic.twitter.com/xfJcZm89c0
(続)しかし、アメリカでサードウェーブコーヒーが流行し、シカゴのIntelligentsia Coffee(大量に並んだ赤色の『V60』で有名)出身のマイケル ・フィリップス氏が2010年のWBCで、引用ツイート↓の後者の抽出法を披露したことで、本格的に注目が。サイフォン抽出のように「ドリッパー内攪拌」も☺️ https://t.co/zt2ttddboG
— 世界の珈琲ユニオン / Union Co., Ltd. (@union_coffee) January 14, 2019
(続)WBC = ワールド・バリスタ・チャンピオンシップの略称
— 世界の珈琲ユニオン / Union Co., Ltd. (@union_coffee) January 14, 2019
(続)スタイリッシュな外見とその宣伝・演出によって(営業努力が素晴らしいです)、海外へ『V60』などHARIO製品の販路を拡大、東アジア・アメリカ・ヨーロッパに海外支社を設立、(続)
— 世界の珈琲ユニオン / Union Co., Ltd. (@union_coffee) January 14, 2019
(続)そして、同じく引用ツイートの後者の抽出法を用いた、「4 : 6」メソッドにより2016年のWBrCで優勝した粕谷 哲氏を監修(広告)に起用し、同方法の注水量管理に使う『VST-2000B』や『KDC-02B』など『粕谷モデルシリーズ』を販売☺️ https://t.co/zt2ttddboG
— 世界の珈琲ユニオン / Union Co., Ltd. (@union_coffee) January 14, 2019
(続)まとめると、HARIO(旧柴田ガラス)は2005年に『V60』を発売後、2010年を境にして、(続) pic.twitter.com/IQyhS3ZNxW
— 世界の珈琲ユニオン / Union Co., Ltd. (@union_coffee) January 16, 2019
(続)(HARIOは)当初意図していたであろう抽出法(📷)ではなく、透過式(粉の“濾過層”に湯を丁寧に通す)より浸漬式(粉を湯に浸す)に寄った使い方をする、(海外で見出だされた)シカゴのIntelligentsia Coffeeの様な抽出法(粕谷哲氏の4:6メソッドもそう)で売り込み、(続) pic.twitter.com/5H05N6h3kL
— 世界の珈琲ユニオン / Union Co., Ltd. (@union_coffee) January 16, 2019
『V60』を、KONO(透過式である場合)や日本のコーヒーファンからの批判を回避できる形で
— 世界の珈琲ユニオン / Union Co., Ltd. (@union_coffee) January 16, 2019
(当初とは異なる、浸漬式に寄ったドリッパーであるから)
)“世界のグローバルスタンダード”とまで呼ばせしめたと
読めてしまうのでは、と。
HARIO様は宣伝や演出が非常に上手いガラス器具メーカーです☺️
「パクりが世界を獲ったね」「昔、喫茶店で見たモノに似たモノが海外でも人気だってね」といったお客様の声や、
— 世界の珈琲ユニオン / Union Co., Ltd. (@union_coffee) January 16, 2019
重鎮のAnさんの発言(美味しさや意見は個人的なものでありますが、見てきたモノは事実のようです)
がありますがhttps://t.co/v8CamVX9vR
あくまでもユニオンとしては『名門』『V60』をめぐる問題について、「無立場」であります。
— 世界の珈琲ユニオン / Union Co., Ltd. (@union_coffee) January 16, 2019
『V60』が海を越えて人々の手に渡り、より良い方法でもって評価を上げてきたのは、素晴らしいことで、これからも多くの人々が使われて☕
この問題についてや
— 世界の珈琲ユニオン / Union Co., Ltd. (@union_coffee) January 16, 2019
どちらが自分にとって美味しく淹れられるかについては、お客様次第です☺️(S)
器具屋のSも同じ思いで、調節の幅が広い『名門MD-21』(ユニオンでは取り寄せ品です)や『スリーフォードリッパー』(実は取り扱いしています)、ネルドリップを試行錯誤の日々です☺️
— 世界の珈琲ユニオン / Union Co., Ltd. (@union_coffee) January 16, 2019
海外から真に日本の珈琲文化が評価されうるのは、来日して、珈琲屋さんに入ったときかもしれません。
— 世界の珈琲ユニオン / Union Co., Ltd. (@union_coffee) January 16, 2019
その思いと入塾、河野社長(時々東アジアのお客様を連れてユニオンにいらっしゃいます)も喜ばれると思います
V60透過ドリッパーのような円すい形のドリッパーの開発は、日本ではコーノ(KONO)の珈琲サイフオン株式会社が先んじています。V60透過ドリッパーは、コーノの名門ドリッパーの特許が切れたことによって開発が可能になった商品ですが、V60透過ドリッパーが世界的なヒットをしたことで、コーノの円すい形ドリッパーは影に隠れた存在となっていまいました。
形状の違いは、円すい形の角度、底穴の大きさ、リブの形状とリブの縁と底への伸びです。コーノでは、液が横漏れすることで雑味が混入することを防ぐためにリブを縁まで伸びておらず、リブの底穴への伸びが大きく、液がゆっくりと落ちる形状となっています。対して、V60透過ドリッパーは、縁まで伸びているスパイラルリブと大きな一つ穴によって透過速度が速く、これにより湯と粉の接触時間が短く済むことで、雑味やえぐみを減らすことができるという形状になっています。円すい形ドリッパー(透過式)の元々の開発意図を無視して、注湯をすべて落とし切ったり、ドリッパー内を攪拌して浸漬式のように使用するサードウェーブのバリスタたちは、透過速度がより速く、時間をかけずに抽出可能なV60透過ドリッパーのほうを好んだと考えられます。
細かい科学的考証は抜きで「ざっくり」いってみる。http://bit.ly/c2NZJ7
— Y Tambe (@y_tambe) July 8, 2010
ぶっちゃけて言うと、日本で初期に普及したコーヒー焙煎/抽出のセオリーというのはかなりイビツ。ただし、それは当時輸入可能だった豆の品質などの都合から、やむを得ずそうせざるを得なかった、という点も多いので、頭ごなしに否定すりゃいいというものでないことは予めフォローしておきたい。
— Y Tambe (@y_tambe) July 8, 2010
ぶっちゃけて言うと、日本で初期に普及したコーヒー焙煎/抽出のセオリーというのはかなりイビツ。ただし、それは当時輸入/消費していた豆の量からも、世界から相手にされるほどではない、という点も多いので、頭ごなしに否定すりゃいいというものでないことは予めフォローしておきたい。
— 鳥目散 帰山人 (@kisanjin) July 8, 2010
日本では「直火式」焙煎に対する評価が依然根強いけど、世界的に見るとここも結構異質。世界の趨勢は、むしろ(完全)熱風式に対する評価が高い。この方式を大手が採用してる関係から、その「声」が大きいという面もあるんだけど。それでも日本よりかなり先に行ってる。
— Y Tambe (@y_tambe) July 8, 2010
日本では「直火式」焙煎に対する評価が依然根強いけど、声高に焙煎論を形成する者が個人事業者ばかりだからで、世界的に見るとこのこと自体も結構異質。熱風式に対する評価が高い世界の趨勢は、「声」も大きい大手が採用してる関係からで、比較する抽象水準がずれているという面もあるんだけど。
— 鳥目散 帰山人 (@kisanjin) July 8, 2010
実はバッハの「マイスター」は、さらにその熱風式の「先」を行っている部分がある……まぁこの辺りはまだヨーロッパの研究者があんまり認識してないポイントだし、僕自身も「確証」を示せるわけではないのだけど。
— Y Tambe (@y_tambe) July 8, 2010
マイスターの設計理念の一つに、「煎りムラ」を極限まで縮小できるように配慮されている部分があり、これが温度と排気コントロールの重要視という形で活かされているのだけど、それに付随する結果として「いわゆる半熱風式」の中で、熱風式に近い豆の伸びと膨らみをみせる。
— Y Tambe (@y_tambe) July 8, 2010
バッハのマイスターは、設計理念が活かされて「煎りムラ」を極限まで縮小できるように配慮されて、それに付随する結果として「いわゆる半熱風式」の中で、熱風式に近い豆の伸びと膨らみをみせる。 最近ではディードリッヒやマイスターの外見をまねたカラフルな焙煎機が出始めているけど、中身は違う。
— 鳥目散 帰山人 (@kisanjin) July 8, 2010
実はこの「伸び」が重要。伸びの悪い豆では抽出の際、一部の成分の抽出の効率が見掛け上、低下する。これは特に「遅れて抽出されてくる」成分に顕著。
— Y Tambe (@y_tambe) July 8, 2010
実はこの「伸び」が重要。伸びの悪い豆では抽出の際、成分の抽出効率が低下する。これはネスレ社のような抽出効率で営業利益が何億ドルも変わる大手には常識で、この収益との関係は、特にロブスタでは顕著。日本の個人事業者やマニアがアラビカばかりで論ずる効率論は、世界的にみるとかなりイビツ。
— 鳥目散 帰山人 (@kisanjin) July 8, 2010
これを補うためには、(1)豆を細挽きにする、(2)豆の量を増やす、(3)注湯の方法に配慮する、という工夫が必要になってくる。
— Y Tambe (@y_tambe) July 8, 2010
(3)の注湯方法への配慮、ってのは簡単に説明するのは難しいけど、いちばん大雑把なのがメリタの原法、いちばん細かいのが点滴抽出とか松屋式とか一刀淹て、とか、そんな感じ。
— Y Tambe (@y_tambe) July 8, 2010
ターキッシュのように挽き豆ごと煮出したものをより効率よく液体だけ分離する、これがヨーロッパで始まった「布漉し」煮出しコーヒーの発想で、さらに浸漬させてから「布漉し」する方法を「紙漉し」に変えたのがメリタの原法、だから浸漬か透過かの区別以前に濾過自体がドリップの原点、そんな感じ。
— 鳥目散 帰山人 (@kisanjin) July 8, 2010
やや低めの温度で、(1)(2)(3)を意識して抽出した場合、いわゆる「コクのある苦味」を活かす味になるので、まぁそれはそれとして「淹れ方」の選択肢のうちの一つとは言える。
— Y Tambe (@y_tambe) July 8, 2010
日本の「従来の」焙煎法というのは、基本的に「伸びにくい」方式にならざるを得なかった。そこを焙煎で何とか「伸ばす」ために、豆を枯らして水分を抜く、という手法が普及した。
— Y Tambe (@y_tambe) July 8, 2010
日本の「従来の」「個人事業者の」焙煎法というのは、基本的に「直火式」で「伸びにくい」方式にならざるを得なかった。そこを焙煎で何とか「伸ばす」ために、豆を枯らして水分を抜き、「煎りムラ」を縮小して少しでも「伸びよく」する見せかけの手法として「深煎り」が普及した。
— 鳥目散 帰山人 (@kisanjin) July 8, 2010
これはまた同時に、生産国側のいわゆる「パスト・クロップ」を消費することにもつながる。特に、初期には良い豆が他国に買われた後の、いわば「残り物」が入ってくるケースも多かったことから、水分の少ない豆を中心にした「焙煎のセオリー」が組み上げられることになる。
— Y Tambe (@y_tambe) July 8, 2010
水分が抜けた「枯れた」豆では、生豆の香り成分の中で比較的デリケートというか「飛びやすい」成分は、焙煎する前の段階でもかなり失われてしまう。なので、これらの豆を用いる場合、浅煎り〜中煎りの「持ち味」では勝負しづらい。このことも、深煎り化への傾向を促した。
— Y Tambe (@y_tambe) July 8, 2010
さらに初期には良いニュークロップが他国に買われた後の、いわば枯れた「残り物」が入ってくるケースも多かったことから、その難を逆手にとった「深煎りのセオリー」が組み上げられることになる。 水分と同時に香の抜けた「枯れた」豆でも、コーヒーらしく加工するために深煎り化への傾向を促した。
— 鳥目散 帰山人 (@kisanjin) July 8, 2010
そして深煎り化した豆は、前述の(1)(2)(3)に従う抽出法での「コクのある苦味」を出すのに非常に適している。このため、さらに抽出法が限局化されていく。
— Y Tambe (@y_tambe) July 8, 2010
このときの抽出法の限局化に伴って、日本ではドリップ法が「異様な」発展を遂げる。ここにはもう一つ、自家焙煎店以外の日本の喫茶店の形態も関与した。これらの喫茶店では焙煎豆や粉を卸から購入したので、抽出技術でしかコーヒーの味の差別化ができなかったので「抽出の腕」が大きく受け止められた。
— Y Tambe (@y_tambe) July 8, 2010
そして香の抜けた深煎り化した豆は、さらに抽出法が限局化され、それに伴って、日本ではドリップ法が「異様な」発展を遂げる。ここにはもう一つ、自家焙煎店以外の日本の喫茶店の形態も関与した。これらの喫茶店では店舗運営の全てを焙煎業者に頼っていたので、抽出技術でしか差別化が許されなかった。
— 鳥目散 帰山人 (@kisanjin) July 8, 2010
メリタの「原法」は、味のぶれを起こしにくくするために考案された手法だが、裏を返せば、それは「腕の差が出にくい」方法でもある。これに対してボンマックやカリタなど孔を増やしたドリッパーでは注湯による差をつけやすい。
— Y Tambe (@y_tambe) July 8, 2010
メリタの「原法」は、浸漬させた挽き豆を一発で濾過するために考案された手法だが、裏を返せば、それは浸漬濾過抽出の少量化と簡易化でもある。これに対してボンマックやカリタなど孔を増やしたドリッパーでは、断続的な注湯で透過抽出させるので「腕の差」をつけやすい。
— 鳥目散 帰山人 (@kisanjin) July 8, 2010
一方、自家焙煎店のいくつかでは「自分のところで煎った」豆に最適化した淹れ方として、(1)(2)(3)を満たしやすい、ネルドリップによる抽出を行う。これに倣って作られたのがコーノであり、近年のハリオV60につながる。
— Y Tambe (@y_tambe) July 8, 2010
一方、自家焙煎店のいくつかでは「自分のところで煎った豆を少量ずつ淹れて手間ひまをかけた最適化」パフォーマンスとして、ネルドリップによる抽出を行う。これに倣って作られたのがコーノであり、一時商標権でもめて姿を消して再び復活した近年のハリオV60につながる。
— 鳥目散 帰山人 (@kisanjin) July 8, 2010
つまるところ、日本でのドリップ技術の異様な発展は、(A) 輸入されてくる豆をカバーする焙煎法、(B)焙煎法による豆の特性をカバーする抽出法、の模索という形で進んできてる。ただしこれはあくまで「大筋」の話。途中でわけのわからないトンデモ理論も混ざり、ぐねぐねと進んできたのだけど。
— Y Tambe (@y_tambe) July 8, 2010
つまるところ、日本でのドリップ技術の異様な発展は、(A) 輸入されてくる豆をカバーする焙煎法、(B)腕の差を見せつけるパフォーマンスとしての抽出法、を模索という形で進んできてる。これはあくまで「大筋」の話だけど、途中でわけのわからないトンデモ理論が混ざるのも無理はないと思える。
— 鳥目散 帰山人 (@kisanjin) July 8, 2010
んで、焙煎の模索で「十分伸びる豆」に行き着いた焙煎者は、「どんな淹れ方でも、豆がいいのでOKですよ」という結論に至りやすい。
— Y Tambe (@y_tambe) July 8, 2010
んで、焙煎の模索で「十分伸びる豆」に行き着いたと信じ込んでいる焙煎者は、「どんな淹れ方でも、豆がいいのでOKですよ」という結論に至りやすい。まぁ「どんな淹れ方でも」というと危ういのだが、それより信じ込んでいる当人の思い込みだけで、抽出に気を使わないと、十分に味が出ないことが大半。
— 鳥目散 帰山人 (@kisanjin) July 8, 2010
まぁ「どんな淹れ方でも」というと危ういのだが、少なくとも(3)の部分にあまり気を使わなくても、十分に「味が出る」。実はバッハのコーヒーがその典型。使う豆の量(重さ)が「それまでのセオリーより」少なくても、湯温が「それまでのセオリーより」低めでも、きちんと味が出る。
— Y Tambe (@y_tambe) July 8, 2010
その点でバッハのコーヒーは、使う豆の量(重さ)が「それまでのセオリーより」少なくても、湯温が「それまでのセオリーより」低めでも、きちんと味が出る。出る味の好みで意見は分かれるだろうし、バッハを指標するとそれも多分反対する意見があるのだけど、まあかなりの部分で味が出ていると言える。
— 鳥目散 帰山人 (@kisanjin) July 8, 2010
その辺りをすべて「伸びのよさ」に帰結していいか、というと、それも多分語弊があるのだけど、まあかなりの部分で相関があるとは言っていいだろう。
— Y Tambe (@y_tambe) July 8, 2010
で、そういう豆であればドリップはもちろん、スティーピングなんかでも「きちんとした」味が出やすいわけで。そういう店がプレス式を奨めるのであれば、まぁそれなりに納得できるのだけど……現状は……どうかなぁ…
— Y Tambe (@y_tambe) July 8, 2010
そういう観点から言うと、先日の「極める」で田口さんが言った「豆がスペシャルティなら、焙煎もスペシャルティ」という言葉はまさに至言だといえる。
— Y Tambe (@y_tambe) July 8, 2010
そういう観点から言うと、先日の「極める」で田口さんが言った「豆がスペシャルティなら、焙煎もスペシャルティ」という言葉は至言かもしれないのだが、他方で「豆がコモディティでも、焙煎がスペシャルティ」くらい言えないと、ブラジル自国消費の半分しか豆を輸入しない日本は大きな顔ができない。
— 鳥目散 帰山人 (@kisanjin) July 8, 2010
もちろん、他の店の豆とバッハの豆とで「比べて科学的に実験した」結果が存在してるわけではない。ただ熱風式による高温短時間焙煎方法が開発された際、スイスの研究者が出してる結果から考えると、まぁ概ね同じことが言えるだろうから。
— Y Tambe (@y_tambe) July 8, 2010
もちろん、他の店の豆とバッハの豆とで「比べて科学的に実験した」結果が存在してるわけではない。ただ「バッハの豆をネルドリップすれば尚よく味が出る」とか田口さん自身が言っていた際、一部で周囲の否定的な反応を考えると、まぁ概ねいつまでたっても焙煎者の了見は変わらないと言えるだろうから。
— 鳥目散 帰山人 (@kisanjin) July 8, 2010
ん、2-3年前くらいから、バッハにセミナーに行くと田口さんがやっぱり同じようなことを話してた。特にヨーロッパでエスプレッソをやってる人なんかはナチュラルや、ハニーでもレッドやブラックあたりを買うケースが増えてたと。ただ「エスプレッソの流行」は、時期的にはもっと早くからだから(続
— Y Tambe (@y_tambe) April 10, 2014
承前)それよりは遅れてて、むしろ先に(スタバによる大衆化を含めて)エスプレッソの隆盛があった後の、パカマラやゲイシャなどの特徴ある品種が登場した以降の流れ。アメリカでは実質的にエスプレッソが「一杯淹て提供」を牽引し、それにわずかに遅れてプレス式、そしてさらに遅れてサイフォンや(続
— Y Tambe (@y_tambe) April 10, 2014
承前)ハリオはじめ各種のドリッパーが増えていったわけだけど(実際にはサイフォンもプレスも、20世紀初頭にはアメリカで流行し、それが一度廃れてる)、このプレス式が台頭しはじめた辺りから始まってるのが、いわゆるサードウェイブ。で、プレスやサイフォンその他では、比較的品種による(続
— Y Tambe (@y_tambe) April 10, 2014
承前)品種による香味の違いが前面に出やすいこともあって、香味の「幅」が表現しやすかったのだけど、エスプレッソではそれが出づらい。そこで同じように「生豆の違い」でも、精製法の違うナチュラルやハニーなどを使う方向が生まれた、という感じ。
— Y Tambe (@y_tambe) April 10, 2014
あ、いかん。書き間違えた。アメリカでのサイフォンとドリップは20世紀初頭だけど、プレスの流行は、フランスでの流行が50年代でその後だから、もっと後だ。ポダムが販売始めた、いわゆるサードウェーブの黎明期が、プレスでは最初。
— Y Tambe (@y_tambe) April 10, 2014
より正確に言うと、20世紀初頭にいちばん流行してたのはコーヒービギンに近い、漉し布付きポットのタイプで、これが単に「コーヒー沸かし」と呼ばれてた。日本でも戦前の、特に家庭用としては、これがいちばん普及してる。一応はドリップ(ただし漉し布の長さによって湯に浸かるので一部浸漬になる)
— Y Tambe (@y_tambe) April 10, 2014
ただしコーヒービギンを透過式とするか浸漬式とするかは結構ややこしい。ドゥ・ベロワのポットを「最初のドリップ式」と位置づけるならば、コーヒービギンはそれとは別、という形になるし。
— Y Tambe (@y_tambe) April 10, 2014
V60透過ドリッパー
V60透過ドリッパーは、ハリオを代表するコーヒードリッパー製品です。サイズは01(1〜2人用)、02(1〜4人用)、03(1〜6人用)、素材はAS樹脂製、耐熱ガラス製、セラミック製、金属製があります。ワールドバリスタコラボレーション(World Barista Collaboration)というバリスタとのコラボモデルも販売されています。
V60透過ドリッパーの特徴として、角度60°の円すい形、大きな一つ穴、長短12本づつ計24本の螺旋状に入ったスパイラルリブが挙げられます。急角度の円すい形、スパイラルリブ、大きな一つ穴という構造は、湯の透過速度を速くさせ、透過式の理にかなった抽出が可能とします。これによって、湯と粉の接触時間が短く済み、フレーバーをより引き立たせ、渋みやえぐみのないクリアな味に仕上がります。
V60透過ドリッパーは、元々はネルドリップに近い味わいを再現する意図でデザインされたドリッパーですが、スペシャルティコーヒーの一部のバリスタが採用する蒸らしの段階でドリッパー内を攪拌し、その後一気に抽出をする浸漬式のような抽出方法でも、蒸らし後の抽出の段階で短時間で抽出が可能なため、渋みやえぐみのないクリアの味に仕上げることが可能です(コーヒーの品質が高いことを前提にすると、雑味は湯温に、渋みやえぐみは抽出時間の長さに関連性が高いと考えることができます)。
AS樹脂製(プラスチック製)
V60透過ドリッパー AS樹脂製(プラスチック製)は、安価で軽く耐久性があり、購入しやすく汎用性の高いモデルです。温まりにくいですが冷めにくいため、最初にしっかりと温めると効率の高い抽出が可能です。サイズ展開は、01(1〜2人用)、02(1〜4人用)、03(1〜6人用)です。
耐熱ガラス製
V60透過ドリッパー 耐熱ガラス製は、ハリオの耐熱ガラス製品を使用したドリッパーです。素材の技術とデザイン、形状が一体となった、最もハリオらしいドリッパーであると言えます。サイズ展開は、01(1〜2人用)、02(1〜4人用)、03(1〜6人用)、ホルダー部分は、ポリプロピレン製のブラック、ホワイト、レッド、木製のオリーブウッドがあります。エレガントで美しいデザインが特徴です。
セラミック製
V60透過ドリッパー セラミック製は、職人の手作りによる有田焼です。重く壊れやすいですが、美しいデザインのドリッパーです。セラミック製は保温性が高いため、最初にしっかりと温めると、効率の高い抽出が可能です。サイズ展開は、01(1〜2人用)、02(1〜4人用)、色はホワイト、レッドがあります。
金属製
V60透過ドリッパー 金属製は、メタル(ステンレス製)とカパー(銅製)の2種類があります。金属製は非常に温まりやすいため、短時間で効率の高い抽出が可能です。しかし、保温性は低いため、長時間の抽出には向いていません。また、金属製のため、錆びやすい素材です。サイズ展開は、02(1〜4人用)のみです。
V60 ドリップデカンタ
V60 ドリップデカンタは、ドリッパーとサーバーが一体となったデザインです。ジェームス・ホフマン(James Hoffmann)の究極のHARIO V60テクニック(The Ultimate V60 Technique)では、このデカンタの使用が推奨されています。
V60 ドリップスケール
V60 ドリップスケールは、V60シリーズのスケールです。時間と重さを図ることができるシンプルな機能ですが、比較的安価に購入できます。天板がブラックのV60 ドリップスケール ブラック、金属製のV60 メタルドリップスケールがあります。また、Bluetooth通信でスマートフォンと連携できるコーヒースケール SmartQ ジミーもあります。
V60 ペーパーフィルター
V60 ペーパーフィルターは、日本においては、V60 ペーパーフィルター ホワイト(酸素漂白)の袋入りと箱入り、V60 ペーパーフィルター みさらし(無漂白)の袋入りと箱入りの4種類があります。シュリンク包装のV60 ペーパーフィルターもありますが、これはオランダで製造されているため、日本で見かけることはありません。
袋入りの1〜2杯用、1〜4杯用と袋入りの1〜6杯用、箱入りではペーパーの製造元も製造方法も異なります。ハリオのペーパーは、かつては株式会社 三洋産業(以下、三洋産業)がすべての製造を担っていました。円すい形ペーパーフィルターは、元々三洋産業がコーノのために開発したもので、ハリオは独自の円すい形ドリッパーの製造を始めた頃から、OEM(委託製造)を行なっていました。しかし、2015年頃から、需要の多い袋入りの1〜2杯用と1〜4杯用については、静岡県富士市の天間特殊製紙株式会社(以下、天間特殊製紙)に製造元を切り替えました(動画でも、袋入りを製造している工程を見ることができます)。ここでは、長網式という安価に大量生産が可能な方式が採用されているため。袋入りの1〜2杯用と1〜4杯用は薄くて芯のある硬いペーパーフィルターとなっていて、三洋産業のペーパーフィルターと比較すると目詰まりしやすく低品質のペーパーフィルターとなっています。袋入りの1〜6杯用と箱入りは、引き続き三洋産業が製造を担っています。そのため、柔らかく目詰まりしにくい抜けの高品質なペーパーフィルターとなっていますが、在庫が安定しません。
*この部分の説明に関しては、すでに過去のものとなっており、箱入りのペーパーも別物となっています。
ジェームス・ホフマン(James Hoffmann)が、箱入り(三洋産業)、袋入り(天間特殊製紙)、シュリンク包装(オランダ)のそれぞれのペーパーを使用した場合のコーヒーの抽出時間とペーパーフィルターを10分間浸漬したお湯の味わいの違いを検証しています。質の高さは、箱入り(三洋産業)>袋入り(天間特殊製紙)>>>>シュリンク包装(オランダ)という順序で評価されています。三洋産業の箱入りのペーパーが最も抽出時間を短く終えることができ、お湯の味わいも優れたものとして評価されています。オランダ製のペーパーの質の悪さから、日本の製紙技術の高さを評価することもできます。
ホワイト(酸素漂白)とみさらし(無漂白)については、ホワイト(酸素漂白)のほうが味に与えるネガティブな影響が少なく済みます。リンスするかしないかについては、ホワイト(酸素漂白)は人によって異なり、みさらし(無漂白)は基本的にリンスをすることが推奨されます。みさらし(無漂白)は、環境に良いというイメージがあるかもしれませんが、単なるイメージです。
フィルターがコーヒーの味に影響を与えるかどうか。簡単な答えとしては「YES」。ただし、この「影響」というのはホントに多岐に亘る。多分、今回の質問で問題になっているのは、フィルター由来の異臭などの部分だと思われるが(続
— Y Tambe (@y_tambe) November 26, 2017
承前)今は、ずいぶんと紙質は改善されてるのだけど、ペーパーの管理の仕方などによっては他のものの匂いを吸着しちゃうこともある。あとまぁ、あまりに長期間、日に晒したりしてるとさすがに劣化して匂いが出ることも。
— Y Tambe (@y_tambe) November 26, 2017
昔は、紙くさいのとか、塩素漂白系の匂いが残ってるペーパーも多く、それらが主流だったころは先に湯通ししてたけど、今は(といってもほぼ20年以上経つが)そういう紙が少なくなったので必要とは言い難いし、やると帰って蟹泡出やすくなるからなぁ(『コーヒーは楽しい』atフランスとは紙事情が違う)
— Y Tambe (@y_tambe) August 24, 2018
昔は、コーヒー用のペーパーフィルターの安物は、いわゆる「紙臭さ」が出るものがあり、先にペーパーに湯通しを推奨する場合もあったけど、今はかなり改善されたのであまりメリットがない。むしろ、湯の流れがスムーズに行かなくなるデメリットがあるので、勧めない人が増えてる。
— Y Tambe (@y_tambe) March 19, 2020
ただでさえ円錐は形状的に普通の注湯だと蟹泡でやすいから、ペーパー濡らすとなぁ…。「きれいに」淹れたいなら、鮮度に応じて真ん中凹ましてから注ぐとか、いろいろ方法はあるんやが。
— Y Tambe (@y_tambe) January 13, 2016
そう簡単。ペーパーフィルターは紙臭いし、ネルフィルターは布臭いし、金属フィルターはカナ臭い。それで何が悪いってくらいに思っていれば、そう気に病むことはない。但し、やや湿った感じの木製の引き出しなどに紙を置いておくと、とんでもない悪臭を放つようになる場合もある。そこは要注意。 https://t.co/dTF1XPMdsN
— 鳥目散 帰山人 (@kisanjin) November 26, 2017
大まかに(乱暴に)いえばペーパーはこういう分類(私見です)
— 鳥目散 帰山人 (@kisanjin) August 24, 2018
1.酸素漂白の白いヤツ 臭くない
2.水晒しを徹底した無漂白のヤツ ほぼ臭くない(但し環境汚染は大)
3.水晒しも漂白もしてない未晒しのヤツ 臭い
4.酸素漂白に再着色したヤツ 臭い
以上を踏まえた上で、ペーパーの抽出前に湯通しするしない論は、「臭い」問題は横に置いたとして、抽出の機序や機構としての違いをメリット・デメリットも含めて語られるべきだろうが、どうしても巷間では「臭い」問題が絡んでキチッとした実証成果が話題にならない。やれやれだぜ。
— 鳥目散 帰山人 (@kisanjin) August 24, 2018
珈琲界でも、整然と追究しきらず明確に説明もできないが「コレがイイな」と思えるところを流儀にしてしまう。で、流儀として強弁するために都合のイイ理由を後付けする。その最たるものの一つが、巷間のペーパー湯通し論。他の生豆論でも焙煎論でも抽出論でもそうだが、たわ言が多いんだよな。
— 鳥目散 帰山人 (@kisanjin) August 24, 2018
承前) 2.プランジャー(押し型)が不要な専用紙(現在に続く台形に近い紙型)を使う方式(1937年~)にした。これは、それまでの正方形の濾し紙に競合廉価品が大量に出回って、消耗材で儲からなくなったから(現代で言えば、プリンターとインクの関係だな:笑)。
— 鳥目散 帰山人 (@kisanjin) November 2, 2016
承前) ちなみに余分を語ると、先に掲げた参考記事を公開した後に、メリタジャパンはホームページを変えてブランドストーリーを語り始めた。《1960年代に現在の1つ穴フィルターを生み出しました》ということも含めて。私の記事が影響したと邪推している(それでも参考記事の方が詳しい:笑)。
— 鳥目散 帰山人 (@kisanjin) November 2, 2016
三洋産業 フラワードリッパーとアパカフィルター
ちなみに、三洋産業のフラワードリッパーは、ハリオのOEM生産が終了した後に、独自の円すい形ドリッパーとして開発された商品です。
V60 抽出テクニック
V60透過ドリッパーを使った、おいしい珈琲の淹れ方
V60透過ドリッパーにペーパーフィルターをセットし、中細挽きのコーヒーを入れ、コーヒーベッドをフラットにします。湯を中心から珈琲粉全体が湿る程度に注ぎ、30秒程度蒸らします。その後、中心からうず状にペーパーフィルターに直接湯がかからないように注湯し、3分以内に抽出を終えます。これがV60透過ドリッパーを使用した標準的な抽出方法です。
ジョージ・ハウエル マニュアル・コーヒー・ブリューイング
ジョージ・ハウエル・コーヒー(George Howell Coffee)のジョージ・ハウエル(George Howell)は、V60透過ドリッパーを使用したマニュアル・コーヒー・ブリューイング(Manual Coffee Brewing)を紹介しています。
ジョージ・ハウエルは、ペーパーレスフィルターを使用するかペーパーフィルターを使用するかは好みの問題で、水の種類や温度が重要であると述べています。天然水(Spring Water)を使用するとフレッシュで、クリーン、ブライトな味に仕上がりますが、蒸留水(Distilled Water)は決して使用してはならないと述べています。温度は最低195°F(約90.6℃)から最高205°F(約96.1℃)までの温度で抽出すべきで、201°F(約93.9℃)が完璧であるそうです。これは通常日本で抽出について説明される温度よりも少し高めの温度であるため、浅煎りのコーヒーを前提とした温度設定として考えられます。
ペーパーをドリッパーにセットし、リンスをします。リンスをしないと、ペーパー臭がコーヒーに移るという説明をしています。使用する豆は24gから26g(ジョージ・ハウエルの個人的な好みは24g)に対し注湯量390g、コーヒー業界(海外)では、細挽き(Fine)を推奨するところが多いですが、だまと微粉が多く発生し過抽出の原因となるため、通常よりも粗挽き(Coarse)でグラインド(粉砕)し、抽出時間を3分30秒と長めに取ることで、未抽出を防ぎます。ブレード・グラインダー(Blade Grinder)はバー・グラインダー(Burr Grinder)に比べて、だまや微粉が多く発生し過抽出の原因となるため、バー・グラインダーを推奨しています。
粉をドリッパーに入れ、コーヒーベッドをフラットにし、中央に小さな穴を掘ります。一投目は、40gから50gを注湯し20秒から30秒の蒸らします。この段階で、新鮮なコーヒーであればドームができます。真ん中から周囲に回し入れ、ドームを引き上げすぎないように390gまで少しづつ注湯します。全体の抽出時間は2分30秒から45秒です。
ジョージ・ハウエル・コーヒーでは、15秒間隔で65gの水を6回に分けて注ぐことが推奨されています。ジョージ・ハウエルとジョージ・ハウエル・コーヒーの抽出方法は、通常のハンド・ドリップ(ポア・オーバー)に近い方法です。
How2Heroesの"Coffee Brewing Principles"は、2011年に公開されました。V60透過ドリッパーがアメリカ合衆国市場に紹介されてまだ日が浅く、ドリッパー内を攪拌する方法が一般的ではない時代に紹介された抽出方法です。
ジョージ・ハウエル・コーヒーは、様々な抽出器具を用いたブリュー・ガイド(Brew Guides)を公開しています。
- 粉量 24gから26g
- 挽き目 通常よりも粗挽き
- 注湯量 390g
- 湯温 195°F(約90.6℃)から205°F(約96.1℃)
- スケールを使用
- リンスあり
- コーヒーベッド 中央をくぼませる
- 注投回数 15秒間隔で65gを6回
- 注湯時間 2分30秒から45秒
- 抽出時間 3分30秒
インテリジェンシア・コーヒー
インテリジェンシア・コーヒー(Intelligentsia Coffee)は、V60透過ドリッパーを使用したポア・オーバー・ブリュー・メソッド(Pour Over Brew Method)を紹介しています。
ペーパーをセットしリンスします。粉量25gをドリッパーに入れ、コーヒーベッドをフラットにします。1投目は、50gから60gを注湯し蒸らします。その後、総量400gを1分45を目安に途切れなく注湯します。注湯は落としきりです。これは比較的シンプルなレシピです。
- 粉量 25g
- 注湯量 400g
- スケールを使用
- リンスあり
- コーヒーベッド フラット
- 注投回数 2投(蒸らし+1投)
- 注湯時間 1分45秒
スコット・ラオ V60 メソッド
スコット・ラオ(Scott Rao)は、ドリッパー内を攪拌する方法をサードウェーブのスペシャルティコーヒー業界に広めた人物です(彼が最初に始めた訳ではありません)。この方法は、「ラオ・スピン(Rao Spin)」と呼ばれています。
10年前、私がスラリー(ドリッパー内の懸濁体)を攪拌するのを見たほとんどすべてのバリスタがゾッとしていた。 5年前には、サードウェーブのバリスタの約半数が、攪拌することで抽出の質が向上する可能性があることをしぶしぶ受け入れたように見えた。 最近では、「ラオ・スピン」によって均一な抽出がより簡単にできるようになり、私が実演してみせた数人のバリスタはすぐに考えを改めた。
Ten years ago, almost every barista who watched me stir a slurry was horrified. Five years ago, about half of third-wave baristas seemed to grudgingly accept that stirring may help extraction quality. Recently, the "Rao Spin" has made uniform extraction even easier to achieve, and the few whom I've demonstrated it for have been instant converts.
"V60 Video",Scott Rao 2017年9月15日.
スコット・ラオは、ドリッパー内を丁寧に攪拌することで、チャネリング(不均一な透過)を減らし、抽出を均一にし、抽出の再現性を高めると考えています。また、攪拌しない場合は、乾燥したままの粉が存在することで不均一性な抽出となってしまい、攪拌しないで蒸らすと、蒸らしに時間がかかりすぎるとも考えています。
スコット・ラオは、蒸らし+1投もしくは2投での抽出を推奨しています。1投の場合では、1分20秒と抽出時間が短く済むため、カフェでのオペレーションをスムーズにします。2投の場合は、1投よりも粉を粗くグラインド(粉砕)する必要があり、抽出時間も30秒から40秒長くなります。時間に余裕があり、成分を0.5%余分に抽出したい場合は、2投が選択されます。20gから22g以下の粉量を使用して抽出する場合は、より細かくグラインド(粉砕)する必要があり、これによって苦味が増したり、抽出温度が低くする必要があるため推奨されません。また、3投以上での抽出も湯温が下がり、抽出の均一性が妨げられる可能性があるため、推奨されません。
動画では、22gの粉量に対して360gの注湯です。リンスをしドリッパーを温め、粉を入れコーヒーベッドをフラットにします。粉量の3倍の湯で蒸らし、その後1投で抽出します。蒸らしの段階で丁寧に撹拌し、抽出の段階でも攪拌しています。透過式ドリッパーを使用していますが、ドリッパー内に湯溜まりを作り出しており、ほとんど浸漬式の抽出方法となっています。
- 粉量 22g
- 挽き目 粉と透過速度によって調整
- 注湯量 360g
- 湯温 沸騰させたお湯
- スケールを使用
- リンスあり
- コーヒーベッド フラット
- 注投回数 2投か3投(蒸らし(攪拌) 粉量の3倍(66g)+1投また2投(湯の上部を攪拌) 360gまで)
- 注湯時間 1分45秒
- 抽出時間 3分まで
スタンプタウン・コーヒー・ロースターズ
スタンプタウン・コーヒー・ロースターズ(Stumptown Coffee Roasters)の抽出方法は、コーヒーを上手に抽出する方法というよりは、ほとんどファッションです。粉量21g、温度205°F(約96.1℃)、注湯量360g、蒸らし時間15秒、抽出時間3分です。蒸らしの段階の攪拌はかなり雑で、円を描くようではなく螺旋を描くように、10秒から15秒間隔で途切れなく注湯します。また、意図があるのかないのかわかりませんが、ドリッパーの位置がサーバーの位置とズレています。
動画のコメント欄を見るとわかりますが、このような「最先端」のロースターのヒップスター的抽出方法が、アメリカ合衆国の一般消費者に受け入れられているわけではありません。
スタンプタウン・コーヒー・ロースターズは、ブリュー・ガイド(Brew Guide)で抽出方法の紹介をしています。
- 粉量 21g
- 挽き目 細挽き
- 注湯量 360g
- 湯温 205°F(約96.1℃)
- スケールを使用
- リンスあり
- コーヒーベッド フラット
- 注投回数 蒸らし(粉が十分湿るまで注湯し15秒)+ 10秒から15秒間隔で螺旋を描きながら360gまで注湯
- 抽出時間 3分
発端はこれね。最近、一部で流行しつつある、秤の上でドリップする方式。そのメリットと注意点。https://t.co/XRpyJwTKud
— Y Tambe (@y_tambe) April 12, 2013
【問】ペーパードリップ抽出で湯量と抽出時間を一定にする利点と問題点をそれぞれ述べよ(配点30点)
— Y Tambe (@y_tambe) April 12, 2013
【問】ペーパードリップ抽出で決まった人数分のコーヒーを抽出する際、時間当たりの注湯量と、総抽出時間を計測し、それらが一定になるように抽出する方式を採用する場合の、利点と問題点をそれぞれ述べよ(配点30点)
— Y Tambe (@y_tambe) April 12, 2013
問題は「LHSV一定」が保証されるかどうか。もしこれが、同じときに複数の人が同一プロトコルで抽出する場面ならば、ほぼ一定。だけど同じ豆であっても、例えば焙煎後2日目と10日目ではそこが崩れる。その場合は成分変化による違いも生じるけど、そこが崩れるので浸漬式よりも不安定になりうる。
— Y Tambe (@y_tambe) April 12, 2013
設問の条件は「注湯条件が一定」だけなので、もちろん他の要素をいじれば、例えば2日目と10日目の豆で同じような結果に近づけることは可能。しかし一般に、他の条件を変動させることの方が、手技の上では手間がかかることが多い。
— Y Tambe (@y_tambe) April 12, 2013
「秤で計測しながらドリップする」こと自体は素晴らしい取り組みで、その記録から見えるくるものは多い。ただし、その記録した数値を再現するように淹れたはずなのに味が違う、ということは生じる。湯温や室温、豆の種類等を揃えても、それだけでは揃いきれず、その日の粉の膨れ方なども影響する。
— Y Tambe (@y_tambe) April 12, 2013
例えば、常に毎回「焙煎後3日目の豆」を抽出できるのであれば、こういったぶれは少なくなるだろうが、現実的には難しい。
— Y Tambe (@y_tambe) April 12, 2013
ただし、ドリップで表現できる香味の幅は、浸漬式よりもかなり広い。抽出の再現性を確保できれば、その利点を十分に活かすことが可能になる。
— Y Tambe (@y_tambe) April 12, 2013
写真見かけた勢いで、発問したはいいけど、どこまでを前提とするかが難しいな。悪問だった。
— Y Tambe (@y_tambe) April 12, 2013
「上手い人はだいたい、粉の様子を見ながら、お湯の注ぎ方を微調整してる」というのが、ドリップ抽出のプロトコル化の難しさの一つ。
— Y Tambe (@y_tambe) April 12, 2013
もちろん「だから手作業こそが最強」というだけ話ではなくて、例えば、そこらへんのファクターを探りながら抽出できるコーヒーメーカーがもし出来ると…という話でもある。
— Y Tambe (@y_tambe) April 12, 2013
問題は、じゃあ上手い人は、何を読み取りながら、それに対してどう調整してるのか、というのが難しいこと。
— Y Tambe (@y_tambe) April 12, 2013
実際、自分でドリップしてても(上手いというわけではないにせよ)、いまだに「何となく」で調整してる部分が大きくてなあ。
— Y Tambe (@y_tambe) April 12, 2013
ろ過の仕組みについてのリンクhttps://t.co/r9bopzCZR0
— Y Tambe (@y_tambe) June 27, 2020
深部でなくて深層だったすまん。
このろ過のメカニズム(表面ろ過、深層ろ過、ケークろ過)は、コーヒー抽出するときのフィルターの性質の違いにも関係する……はいここ試験に出まーす(出ません)
ティム・ウェンデルボー
2004年のワールド・バリスタ・チャンピオンであるティム・ウェンデルボー(Tim Wendelboe)もまた、V60透過ドリッパーを使用してドリッパー内を撹拌する抽出方法を紹介しています。
水1ℓに対し粉量65g(動画では、水500mlに対し粉量32.5g)、ペーパーフィルター(白)を使用しリンスします。湯を捨て、ドリッパーに粉を入れます。コーヒーベッドをフラットにし、1投目は60gを注湯しドリッパー内を攪拌します。2投目は30秒後に200gまで注湯し軽く攪拌します。1分経過頃に500gまでさらに注湯します。注湯時間は2分から2分30秒、全体の抽出時間は3分から3分30秒です。抽出時間が長すぎると、苦味の強い過抽出のコーヒーとなります。
コーヒーの味は、粉量ではなくグラインドサイズで調整します。薄くて酸味の強いコーヒーはグラインドサイズが荒すぎ、苦味が強く濃いコーヒーはグラインドサイズが細かすぎます。抽出が終わったら、最後にスプーンでサーバー内を攪拌します。
ティム・ウェンデルボーの抽出方法はスコット・ラオの抽出方法に似ていますが、細かなことは気にする必要はないと述べており、注湯や撹拌も若干雑です。ティム・ウェンデルボーもドリッパー内に湯溜まりを作っていて、ほとんど浸漬式の抽出方法となっています。
- 水1ℓに対し粉量65g(動画では、水500mlに対し粉量32.5g)
- 挽き目 味に合わせて調整
- 湯温 沸騰させお湯
- スケールを使用
- リンスあり
- コーヒーベッド フラット
- 注投回数 3投(蒸らし+2投)
- 注湯時間 2分から2分30秒
- 抽出時間 3分から3分30秒
ジェームス・ホフマン 究極のV60 テクニック
2007年のワールド・バリスタ・チャンピオンであるジェームス・ホフマン(James Hoffmann)の究極のHARIO V60テクニック(The Ultimate V60 Technique)は、V60透過ドリッパーを使用した抽出方法としては、粕谷 哲の4:6メソッドと並んでよく知られている抽出方法です。この抽出方法は、シンプルで反復可能でカフェと自宅での両方で使用可能な方法としてデザインされています。
ジェームス・ホフマンが、ハリオ透過ドリッパーを他のドリッパーよりも好む理由は、大きな一つ穴によって物理的な抵抗なしに湯が流れるためであり、安価で(Cheapest)、壊れにくく(Hard to break)、保温性に優れている(Great job of method heat-retention percepective)ため、プラスチック製がより好ましいそうです。しかし、ジェームス・ホフマンが実際によく使用するのは、V60 ドリップデカンタです。ペーパーはV60 ペーパーフィルター 酸素漂白 箱入り、スケールを使用します。スプーンやケトルはどれでも良いですが、湯を移し替えると温度が下がるため、抽出に影響を与えます。水は非常に重要で、軟水が推奨されます。
1ℓに対し60gのコーヒーの注湯量、動画では30gで500mlです。抽出開始前にリンスを行い、ドリッパーを温めます。粉を投入し、穴を掘り中央にくぼみを作ります。浅煎りに対しては極力高い温度の湯を使用しますが、深煎りの場合は温度を下げて使用します。
一投目は粉量の倍の60mlを注湯し、ドリッパー・デカンタを揺らして粉に均一に湯を浸透させ、45秒間蒸らします。2投目は全体の60%(この場合は、240mlを注湯し300mlまで)を30秒(1分15秒まで)で注湯、ドリッパー内の湯がひたひたの状態になりますが、これによってドリッパー内の温度が高い状態で保つことができます。3投目は残りの湯(200ml)を注湯し、スプーンで時計回りと反時計回りに撹拌し、最後にドリッパー・デカンタを揺らします。
ジェームス・ホフマンは、粉に湯を均一に浸透させるためスプーンで攪拌する方法よりもドリッパーを揺らす方法を推奨してます。
ドリッパー内を攪拌する場合、ドリッパーを揺らす方法(Swirl)とスプーンなど道具を使って攪拌する方法(Stir)があります。どちらも湯を均一に粉に浸透させることを目的としていますが、それぞれ利点と欠点があります。
ドリッパーを揺らす方法は、湯がより均一に粉に浸透しますが、揺らすと湯が下に抜けてしまいます。昔の喫茶店には、最初に滴下した液を捨てることを推奨するところがありましたが、現在はほとんど聞くことがありません。
ペーパー・ネルドリップで珈琲を淹れる場合、お湯を何回かに分けて注ぐ、その一回目は粉を 蒸らす 目的で行います。通常、この段階では濃厚な抽出液が2〜3滴落ちてくるぐらいを目安にしますが、このわずか数滴が珈琲の味に影響を与えます。
この、最初の数滴は非常に良質の苦味が凝縮されている部分ですが、同時に雑味も含まれていて、豆によってはこれを残すと味が濁ることもあるようです。とはいえ、捨てるのは勿体ないのも確かで、この数滴を残せば個性が表に出た、苦味のある味に仕上がりますし、捨てれば苦味の少ない、あっさりしたものが出来ます。
あっさりしたものが好きならば最初の数滴は捨ててしまい、個性の強いものを楽しみたいなら残したままにするようにして、自分の求める味に合わせて使い分けてみてはいかがでしょうか。
「もうちょっとだけおいしい珈琲を」,百珈苑
スプーンなど道具を使って攪拌する方法は、湯が下に抜ける割合が相対的には少ないですが、ドリッパーを揺らす方法に比べると湯の浸透の均一性に劣ります。
- 水500mlに対し粉量30g
- 挽き目 中細挽き
- 湯温 焙煎度によって、温度を調整
- スケールを使用
- リンスあり
- コーヒーベッド 中央をくぼませる
- 注投回数 3投(蒸らし45秒(撹拌(Swirl))+2投目 全体の60%(30秒)+3投目(撹拌(Stir)+(Swirl)))
- 注湯時間 1分50秒
- 抽出時間 3分30秒
余談として、東京のカフェ・ド・ランブルでコロンビアの1954年のオールドコーヒーを飲み、言葉で説明しようのない奇妙なコーヒー(Indescribable weird coffee)を味わったそうです。
井崎 英典 世界一美味しいコーヒーの淹れ方
2014年のワールド・バリスタ・チャンピオンの井崎 英典(いざき ひでのり)は、『ワールド・バリスタ・チャンピオンが教える 世界一美味しいコーヒーの淹れ方』という書籍をダイヤモンド社から出版しています。そこで「世界一美味しいコーヒーの淹れ方」を紹介しています。
HARIOの「V60」は底面にある抽出口が大きく、リブも長いため、お湯の抜けが良いドリッパーです。お湯の抜けが良い分、淹れ手によって湯量をコントロールすることで濃度感も調整しやすいドリッパーと考えられています。サッパリした濃度感を求めたい人に向いていると思います。
井崎 英典「え、こんなに違うの? コーヒーの味はドリッパーで劇的に変わる」,ダイヤモンド社 2020年1月22日.
水100gに対し豆(粉量)6g〜8g(動画では、水300gに対して豆(粉量)21g(18g〜24g))、ペーパーフィルターをセット、リンスしドリッパーとサーバーを温めます。井崎は、V60透過ドリッパー セラミック製を使用しています。
セラミックはドリッパーで最も愛されている素材の1つです。見た目のエレガントさや重厚さがインテリアとして映えますし「ドリッパーと言えばセラミック」というイメージをお持ちの方も多いと思います。
セラミックはプラスチックより保温性が高い素材ですが、気をつけるべき点は「重量がプラスチックより重い」ことです。重量が重ければ抽出温度を劇的に下げますので、セラミックのドリッパーを使用する際には抽出前に入念に温めておくことが重要です。(中略)
きちんと温めて使うなら、やはりセラミックのドリッパーがおすすめです。セラミックのドリッパーであれば、きちんと温めれば保温性も高いですし、抽出温度を保ちやすい素材だと思います。
井崎 英典「え、こんなに違うの? コーヒーの味はドリッパーで劇的に変わる」,ダイヤモンド社 2020年1月22日.
コーヒーベッドをフラットにします。井崎は彼が敬愛するジェームス・ホフマンと同様に、ドリッパーを揺らすことを推奨しています。注投は3投、1投目は20%で蒸らし(60g)を1分間、2投目は20%(60g)、3投目は60%(180g)です。
注投は、中心から円を描くように縁までお湯をかけます。井崎が共同代表を務めるバリスタ・ハッスル(Barista Hustle)の創業者マット・パーガー(Matt Perger)が、V60透過ドリッパーを使用した抽出方法を紹介していますが、彼もまた縁までお湯をかけることを推奨してます。
3投目の後、再びドリッパーを揺らします。抽出時間は3分から4分です。井崎の世界一美味しいコーヒーの淹れ方は、ジェームス・ホフマンの究極のHARIO V60テクニックを原型にして、そこにマット・パーガーの抽出方法を組み入れた抽出方法と言えます。
- 水100gに対し粉量6g〜8g
- 挽き目 濃度に応じて調整
- 湯温 93℃(焙煎度に応じて、2℃から4℃上下)
- スケールを使用
- リンスあり
- コーヒーベッド フラット
- 注投回数 3投(蒸らし 1分間(撹拌(Swirl))+2投(3投目に撹拌(Swirl))
- 抽出時間 3分から4分
自分の嗜好性を押し付けることなく、相手の求めている味わいを読み解く能力が重要。まずは信頼関係を築き、そしてたまーに好みのゾーンを外れたボール球を投げてみたり。そもそも教えるなんて烏滸がましい。バリスタとはサービスマンであり、サービスマンの基本は信頼関係の醸成能力。
— 井崎英典@第15代ワールドバリスタチャンピオン (@hide_izaki) April 17, 2021
昔は”簡単にできる”美味しいコーヒーの淹れ方を教えてください、という取材は全てお断りしていた。でも、やるべきことではなく、やってはダメなことを伝えることで、「その人」にとってより良いコーヒーを淹れられるようになるならそれで良いかな、と思えるようになった。
— 井崎英典@第15代ワールドバリスタチャンピオン (@hide_izaki) April 26, 2021
井崎にとって、「「世界一美味しい」とは、自分が本当に美味しいと感じられる自分好みの最高の1杯を意味」するそうです。自分好みの最高の1杯を探究したい人は、ダイヤモンド社の連載と書籍を当たってください。
粕谷 哲 4:6メソッド
PHILOCOFFEA代表の粕谷 哲(かすや てつ)の4:6メソッドは、注湯量を4対6に分けて味を調整する抽出方法です。最初の40%で甘さを、次の60%で濃度を調整します。グラインド(粉砕)は粗挽き、粉量の3倍の湯量を45秒間隔で5回に分けて注ぎます。基本的な抽出レシピでは、5回の注湯でそれぞれ同じ注湯量ですが、注投回数や注湯量を変えることで味を調整します。注湯は落としきりです。
動画では、粉量20g、注湯量300g、1投60ml×5、抽出時間は3分30秒です。
この理論では、甘さと濃度がポジであり、酸味は甘さの、苦味やボディは濃度のネガとなります。そのため、酸味、苦味、ボディ、口当たりといった要素から味わいを説明する従来の発想から自由に見えます。
- 粉量1:湯量15
- 挽き目 粗挽き
- 湯温 焙煎度によって調整
- スケールを使用
- リンスあり
- コーヒーベッド フラット
- 注投回数 5投(注投回数や注湯量は調整可能)
- 抽出時間 3分30秒
クローバーがスタバに買収されて使えなくなってからV60とかに入って、ドリッパーの中身かき回しちゃう人だったら、そういう価値観でも仕方ないかもしれんよね>土手の効果がわからん
— Y Tambe (@y_tambe) December 10, 2018
彼が「納得してない」だろう理由は、いわゆるインテリジェンシア・スタイルで抽出したコーヒーを「おいしい」と判断する価値観の持ち主だから。で、そういう味を求める場合は、そういう淹れ方(土手を作らない/湯を落としきる)になるのは合理的だから「仕方ない」と思ってます。
— Y Tambe (@y_tambe) December 10, 2018
いわゆるインテリジェンシア・スタイルでの使い方は、ドリッパーを透過式ではなく、浸漬式のように扱う淹れ方になる。だから「ドリッパー内が均一」になるよう、かき混ぜちゃったりもする。ただ透過式として捉える場合は、粉層の上部と下部の条件は同じではないし、いわゆる土手にも意味が出てくる。
— Y Tambe (@y_tambe) December 10, 2018
日本の伝統的なドリップは、深煎りとのコンビでガラパゴス的な進化を遂げた。その過程での研鑽と試行錯誤の積み重ねには、やはり一日の長がある。「劣っている」というのは、ドリップした「コーヒー」とプレスした「コーヒー」の優劣ではなく、それぞれの抽出法の研鑽とそれに向ける支持者の入れ込み。
— Y Tambe (@y_tambe) December 24, 2012
いわゆる「スペシャルティ業界」も、抽出方法全体で見ると、その研鑽と試行錯誤は進んでいると思う。特にアメリカが貪欲なのは、クローバーやエアロプレスの考案や、V60の導入などを見ても明らかだろう。その中にあって、その分、プレスの存在感が揺らぎつつあるとも言える。もう一化けしてほしい。
— Y Tambe (@y_tambe) December 24, 2012
僕は、そこを敢て「プレスの方が劣っている」と言いたいところ。それはプレスについては、まだまだ進化の余地があると思ってるから。もっとプレス支持者が研鑽した、いろんなプレスの可能性を見たい。ドリップも浅〜中煎り用についてはまだ工夫の余地があると思ってて、その意味でステアは興味深い。
— Y Tambe (@y_tambe) December 24, 2012
粕谷は、2016年のワールド・ブリュワーズ・カップ(WBrC)(World Brewers Cup)で4:6メソッドを使用し優勝を果たしました。
ハリオは粕谷と共同で製品開発を行なっており、「粕谷モデル」として販売されています。
丸美珈琲店 ニューウェーブドリップ
ニューウェーブドリップ(NEW WAVE DRIP)は、丸美珈琲店オリジナルの抽出方法です。
粕谷 哲の4:6メソッドが、コーヒーを粗挽きでグラインド(粉砕)することにより、クリーンさとフレーバーを引き出すことを目的にしていたのに対し、このニューウェーブドリップでは、コーヒーをエスプレッソ並みに極細挽きにします。蒸らしの段階でドリッパー内をヘラやバターナイフ、スプーンで攪拌、その後1投で注湯します。注湯は落としきりです。
具体的なレシピは、丸美珈琲店のホームページで確認できます。粉量、湯量、蒸らし時間は厳格に守る必要があります。この抽出方法では、細かなことに気を配る必要がなく、簡単に安定した味わいのコーヒーの抽出が可能であるという利点があります。ただし、コーヒーの焙煎が深くなるほどエスプレッソの味わいに近くなるため、お湯で薄めるのも1つの方法です。
丸美珈琲店では、スペシャルティコーヒーの特性を引き出すために焙煎度は浅めに仕上げています。
そしてニューウエーブドリップで抽出するとその味わいが際立ち、軽い味わいを好む方に特におすすめです。
レシピ通りに抽出する事が大事ですが、ポイントはコーヒーを抽出直前にできるだけ細かく挽く事.
コーヒーは細かく挽く程、酸素に触れる表面積が大きくなる為に酸化しやすくなり劣化につながります。
その為、コーヒーミルを用意する事をおすすめします。レシピ通りに抽出するとスペシャルティコーヒーのもつ澄んだ後味が最後に感じられます。
「NEW WAVE DRIPについて No2」,丸美珈琲店 コーヒーと暮らしのものがたり 2018年3月28日.
この方法で抽出するとコーヒーが濃くなりすぎ酸味が収斂して渋みが感じられる場合があります。
そんな時はお湯で薄めるのも一つの方法です。
V60 抽出テクニック
ジョージ・ハウエル | インテリジェンシア・コーヒー | スコット・ラオ | スタンプタウン・コーヒー・ロースターズ | ティム・ウェンデルボー | ジェームス・ホフマン | 井崎 英典 | 粕谷 哲 | |
粉量 | 24gから26g | 25g | 22g | 21g | 32.5g | 30g | 21g(18g〜24g) | 20g |
挽き目 | 通常よりも粗挽き | 粉と透過速度によって調整 | 細挽き | 味に合わせて調整 | 中細挽き | 濃度に応じて調整 | 粗挽き | |
注湯量 | 390g | 400g | 360g | 360g | 500g | 500g | 300g | 300g |
湯温 | 195°F(約90.6℃)から205°F(約96.1℃) | 沸騰させたお湯 | 205°F(約96.1℃) | 沸騰させたお湯 | 焙煎度によって、温度を調整 | 93℃(焙煎度に応じて、2℃から4℃上下) | 焙煎度によって調整 | |
スケール | 使用 | 使用 | 使用 | 使用 | 使用 | 使用 | 使用 | 使用 |
リンス | あり | あり | あり | あり | あり | あり | あり | あり |
コーヒーベッド | 中央をくぼませる | フラット | フラット | フラット | フラット | 中央をくぼませる | フラット | フラット |
注投回数 | 15秒間隔で65gを6回 | 2投(蒸らし+1投) | 2投か3投(蒸らし(攪拌) 粉量の3倍(66g)+1投また2投(湯の上部を攪拌) 360gまで注湯) | 蒸らし(粉が十分湿るまで注湯し15秒)+ 10秒から15秒間隔で螺旋を描きながら360gまで注湯 | 3投(蒸らし+2投) | 3投(蒸らし45秒(撹拌(Swirl))+2投目 全体の60%(30秒)+3投目(撹拌(Stir)+(Swirl))) | 3投(蒸らし 1分間(撹拌(Swirl))+2投(3投目に撹拌(Swirl)) | 5投(注投回数や注湯量は調整可能) |
注湯時間 | 2分30秒から45秒 | 1分45秒 | 1分45秒 | 2分から2分30秒 | 1分50秒 | |||
抽出時間 | 3分30秒 | 3分 | 3分 | 3分から3分30秒 | 3分30秒 | 3分から4分 | 3分30秒 |
すべてのバリスタや店が共通して、スケールを使用して豆の重さや注湯量、時間を測るレシピを組み立てており、抽出を開始する前にリンスをし蒸らしの段階を置いています。注湯した際の粉の反応によって抽出をコントロールするという、名人芸的抽出方法は紹介されていません。
ジョージ・ハウエル以外は、浸漬式に近い抽出方法を採用しており、ジョージ・ハウエルと粕谷以外は、ドリッパー内を撹拌する方法を採用しています。浅煎りのスペシャルティコーヒーの場合、浸漬式近い方法で抽出すると、成分が十分に引き出され、なおかつクリーンな味わいに仕上げることは可能です。丸美珈琲店のニューウェーブドリップでは、少ない粉量で浅煎りの安定した抽出が可能なレシピとなっています。逆に浅煎りのスペシャルティコーヒーを少ない粉量で、渋みやえぐみなく十分に成分を引き出すような透過式の抽出をするには、それに相応しいドリッパーの形状の設計が必要になります。
V60透過ドリッパーを使用した抽出方法は、これ以外にも数多く紹介されています。抽出方法自体は、ドリッパー(フィルター)の種類・形状(+ネル)、ペーパーの形状、ペーパーの抄紙工程、リンス有り無し、コーヒーベッド、蒸らし有り無し、蒸らし時間、豆の特性、焙煎度合、エイジング、メッシュ、粒度分布、微粉有り無し、粉の温度、水の種類、水を沸騰させるかさせないか、沸騰時間、湯温、土手有り無し、注投回数、流量、流速、注湯量、抽出時間など、それぞれの要素の組み合わせによって無数に創造可能です。