アンティグア・コーヒーと地理的表示(GI)
グアテマラのコーヒー生産地域
グアテマラのコーヒー生産地域は、1960年に設立されたアナカフェ(Anacafé)(英語:Guatemalan National Coffee Association、スペイン語:Asociación Nacional Guatemalteca de Café)によって認定されています。
グアテマラは、行政区画として22の県(英語:Department、スペイン語:Departamento)に分類されています。アンティグア・コーヒー(Antigua Coffee)は、グアテマラ(Guatemala)中南部サカテペケス県(Sacatepéquez Department)に位置するコーヒー生産地域です。
アンティグア・コーヒー
ラ・アンティグア・グアテマラ
ラ・アンティグア・グアテマラ(La Antigua Guatemala)は、サカテペケス県の市および基礎自治体です。単にアンティグア、またはラ・アンティグアと呼ばれることが多いです。
アンティグア市は、グアテマラ中央高地のパンチョイ谷(Panchoy Valley)に位置しています。
アンティグア市は、首都グアテマラ・シティからほど近くにある旧首都で、1979年にユネスコ世界遺産(UNESCO World Heritage)に指定された、スペイン植民地時代のコロニアル様式の建築が数多く残る美しい都市です。アンティグア市は、「聖週間(スペイン語:Semana Santa)」というカトリックのお祭りで知られています。
アンティグア市は、1524年7月25日に建設された都市で、1541年から1773年までグアテマラ総督府(スペイン語:Capitanía General de Guatemala)の首都でした。市が建設された7月25日が聖ヤコブの記念日であったことから、1566年6月10日にスペインのフェリペ2世によって「グアテマラの騎士たちの聖ヤコブの非常に高貴で非常に忠実な市(スペイン語:Muy Noble y Muy Leal Ciudad de Santiago de los Caballeros de Guatemala、英語:Very Noble and Very Loyal City of St. James of the Knights of Guatemala)」という称号を与えられました。聖ヤコブは都市の守護聖人となっています。
1773年のサンタ・マルタ地震によって都市の大部分が破壊されたため、1776年に首都が「グアテマラ・シティ(英語:Guatemala City)(または、シウダ・デ・グアテマラ (スペイン語:Ciudad de Guatemala))」に遷都されました。
グアテマラ・シティの正式名称は、「ラ・ヌエバ・グアテマラ・デ・ラ・アスンシオン(La Nueva Guatemala de la Asunción))」で、「(聖母マリア)被昇天の新しいグアテマラ」という意味です。新しい首都となったグアテマラ・シティに対して、古い首都は「古いグアテマラ」を意味する「アンティグア・グアテマラ(Antigua Guatemala)」と呼ばれるようになりました。
1773年の地震で都市の多くの部分が破壊されましたが、スペイン植民地時代の約3世紀の間に建設された、古い教会や修道院が数多く残っています。市を見下ろす郊外には十字架の丘(スペイン語:Cerro de la Santa Cruz)があり、観光スポットになっています。
また、アンティグア市は、スペインのコンキスタドールで年代記作家のベルナル・ディアス・デル・カスティリョ(Bernal Díaz del Castillo)の安息の地でもあります。彼は現在のアンティグア市のレヒドール(参事)(Regidor)に任命され、そこで彼はそれまでの彼の新世界での征服活動を『メキシコ征服記』(原題:Historia verdadera de la conquista de la Nueva España)という自伝にまとめあげました。
アンティグア・コーヒー
アンティグア・コーヒー(Antigua Coffee)は、グアテマラで最も古い歴史を持つコーヒー生産地域です。アンティグア・コーヒーで生産されるコーヒーは、グアテマラでも最も高品質なコーヒーとして歴史的に高く評価されてきました。
アンティグア・コーヒーは、サカテペケス県のラ・アンティグア・グアテマラとその周辺で生産されています。代表的な自治体としては、ラ・アンティグア・グアテマラ(La Antigua Guatemala)、ホコテナンゴ(Jocotenango)、シウダ・ビエハ(Ciudad Vieja)、サン・ミゲル・ドゥエニャス(San Miguel Dueñas)があり、グアテマラの有名農園がひしめいています。
アンティグア・コーヒーは、アグア火山(英語:Agua Volcano、スペイン語:Volcán de Agua)、アカテナンゴ火山(英語:Acatenango Volcano、スペイン語:Volcán Acatenango)、フエゴ火山(英語:Fuego Volcano、スペイン語:Volcán Fuego)の3つの火山に囲まれた盆地で、これらの火山活動による肥沃な土壌は高品質なコーヒー栽培に最適です。
標高1,500m - 1,700m、気候は雨季と乾季が明確で、夜には気温が下がります。気温は約19℃から22℃、年間降水量は約800mmから1,200mm、湿度は約65%です。豊かな火山性土壌、十分な日射、比較的少ない降雨量、涼しい夜がアンティグア・コーヒーの気候の特徴です。
土壌に含まれる火山性の軽石が、少ない降雨量でも十分な水分を保持し、日射と霜からコーヒーノキを守るためのシェードツリーが密集しています。シェードツリーには、主に在来のグレビレア(Grevillea)とインガ(Inga)が使用されます。シャードツリーは、昼間の日射と夜間の気温低下から保護する機能があります。さらに、これらの特定の樹種は、土壌に十分な窒素を供給し、施肥の必要性を減らします。シェードツリーは、雨季と乾季の気候に合わせて剪定されます。
「コーヒーハンター」として知られるホセ(José.)川島 良彰氏によると、アンティグア・コーヒーには線虫が多いそうです。
ちなみに中米、ことにグアテマラのアンティグア地区は土壌に線虫が多く、ほとんどのコーヒーの木は台木(下部に用いる植物体)にカネフォラ種(ロブスタ)を使い、上部にアラビカ種を接木しています。地面に近い部分に線があるので、見れば一目で分かります。
「コーヒーハンターが見た コーヒー生産国の最新事情」 2012年8月22日 株式会社Mi Cafeto 代表取締役 川島良彰氏、friend of coffee.
生産量
アンティグア・コーヒーの生産面積はわずか7,321ヘクタールですが、総面積18,574ヘクタールの39%を占めるこの地域の主要作物です。この地域には、3,000の小規模生産者(3.5ヘクタールから14ヘクタール)と100の中規模および大規模生産者(14ヘクタールから70ヘクタール)が含まれています。年間平均収量は1ヘクタールあたり1,556ポンドで、これは約87,000袋(60kg)の生豆に相当します。
アンティグア・コーヒーの生産量は、グアテマラの総生産量の1%から2%にすぎませんが、アナカフェ(Anacafé)のサポートを受けたアンティグアコーヒー生産者協会(APCA)(英語:Antigua Coffee Producers Association、スペイン語:Asociacion De Productores De Cafe Genuino Antigua)が提供するトレーニング・プログラムに呼応して、近年アンティグアの収量は増加しています。
価格
アンティグア・コーヒーは、徹底して選別された後、伝統的にウォッシュト(湿式)精製され、最後にパティオで天日乾燥されます。アンティグア・コーヒーのような組織によって規制され管理されたコーヒー生産地域は、近年流行している新しい精製方法を採用することを困難にしています。
アンティグア・コーヒーは、グアテマラの他のコーヒー生産地域と比較して、高値で取引されます。アンティグア・コーヒーが高く評価される要因として、テロワール、品種、管理された伝統的な精製方法の3つの事項に基づいた確立された評価基準、アンティグア・コーヒーの国際的な知名度、アンティグアコーヒー協会(APCA)による商品の信頼性の保証とマーケティング、環境的および社会的に責任を果たす生産者のイメージの4つの側面が挙げられます。
品種
アンティグア・コーヒーの主な栽培品種は、ブルボン(Bourbon)、カツーラ(Caturra)、カツアイ(Catuai)です。
収穫時期
収穫時期は12月から3月です。
味
アンティグアのコーヒーは、豊かなアロマと甘さを伴うエレガントでバランスの取れた味わいが特徴です。味の特徴は、農園や品種、精製方法によって異なります。
アンティグアコーヒー生産者協会(APCA)と地理的表示(GI)
アンティグアのコーヒーは、1915年にアメリカ合衆国カリフォルニア州サン・フランシスコで開催されたパナマ太平洋国際博覧会(Panama-Pacific International Exposition)におけるコーヒーの展示会で、グランド・プライズ(Grand Prize)に輝いたことにより広く知られるようになりました。
The Guatemalan exhibits won many prizes. In the Department of Fine Arts, they won many medals. In the Department of Education, the Government of Guatemala was awarded a Medal of Honor and different national and private exhibitors were awarded Medals of Honor, Gold and Silver Medals. In the Department of Social Economy, the Government was awarded a Gold Medal for its Libro Azul (The Blue Book of Guatemala), also a similar trophy for its other exhibits in this department, while Senor Jose Flamenco was also given a Gold Medal. In the Department of Liberal Arts, Guatemala also received many awards. In the Department of Manufactures and Varied Industries, Guatemala received a Gold Medal for the best collective exhibit, also being awarded numerous Gold and Silver Medals, and a large number of Bronze Medals and Honorable Mentions. In the Department of Transportation a number of Medals were awarded to Guatemala. In the Department of Agriculture Guatemala carried off great honors, being awarded a Grand Prize for coffee, a Grand Prize for rubber, a Grand Prize for bananas and a Grand Prize for cocoa. Guatemala received four Grand Prizes, 32 Medals of Honor. 55 Gold and 94 Silver Medals, and 81 Bronze Medals, to say nothing of the innamerman is a of Guatemala, was Commissioner General. He was ably assisted by Senor Fernando Cruz.
James A. Buchanan and Gail Stuart.(1916)"History of the Panama-Pacific International exposition,
comprising the history of the Panama Canal and a full account of the world's greatest exposition, embracing the participation of the states and nations of the world and other events at San Francisco, 1915"p.168-169.
1939年に、コーヒーは「アンティグア(Antigua)」という名前で初めて商標登録されましたが、地域全体ではなく、アンティグアの単一の生産者にのみ関連付けられていました。
2000年に、アンティグアの34の生産者が集まり、アンティグアコーヒー生産者協会(APCA)(英語:Antigua Coffee Producers Association、スペイン語:Asociacion De Productores De Cafe Genuino Antigua)が設立されました。リカルド・セラヤ・コーヒー(Ricardo Zelaya Coffee)のリカルド・セラヤはこの協会の資金提供メンバーであり、彼の従兄弟であるルイス・ペドロ・セラヤ・サモラ(Luis Pedro Zelaya Zamora)は代表を務めていました。
2003年までに、アンティグアコーヒー生産者協会(APCA)は、「ジェニュイン・アンティグア(Genuino Antigua)」として輸出する麻袋に貼付するため、国内で商標登録したラベルを作成しました。このラベルは、農園、輸出業者を指定し、輸入業者の情報を提供する文書とともに、トレーサビリティ、原産地の保証、およびアンティグア・コーヒーの輸出に対する制度的支援の資料として機能します。そして、 このラベルは、グアテマラにおける地理的表示(GIs)(Geographical Indications) および原産地呼称(DOs)(Denominations of Origin)の創設の基礎、関連する構想のきっかけとなりました。
同時に、アンティグアコーヒー生産者協会(APCA)は、アンティグアのコーヒーのプロファイルを作成するために、技術的、法的、社会政治的、文化的側面を含む複雑な定義の作成を開始しました。 5年間の過程を経て、このプロファイルは、グアテマラの知的財産の登録(英語:Registry of Intellectual Property of Guatemala、スペイン語:Registradora de la Propiedad Intelectual)に提出された地理的表示(GI)の公式要請の基礎となりました。グアテマラの法律によると、政府があらゆる地理的表示(GI)を所有しているため、地理的表示(GI)の所有権は政府からアンティグアの生産者に裁定されなければなりません。この過程が完了すると、アンティグアコーヒー生産者協会(APCA)の生産者、政府の代表者、および知的財産の登録のメンバーは、アンティグアの地理的表示(GI)に関連するすべての問題の管理と規制を担当する管理機関の一部を形成することになります。
アンティグアコーヒー生産者協会(APCA)のこの要請は、2002年に知的財産法(Reglamento de la Ley de Propiedad Industrial Guatemala, 18 de marzo de 2002.)が可決されて以来、グアテマラで最初の地理的表示(GI)の構想です。アンティグア・コーヒーの生産者は、法律が施行されることが政治的に実行可能であるのはこれが最初であると考えていますが、関係者全員にとって手探りの段階であるため、時間、多額の費用、および共同作業が必要になります。アンティグアコーヒー生産者協会(APCA)はグアテマラの知的財産の登録の公式の回答を待っていますが、現時点で回答があったかどうか不明です。
「ジェニュイン・アンティグア」は、実際に生産されたものよりも多くがラベル付けされ輸出されていると推定されています。これは、近隣地域からの偽造品や他のコーヒーが混在したアンティグア・コーヒーが含まれており、多くの有名なコーヒー生産地で発生する一般的な現象です。
アンティグア・コーヒーを単一のコーヒー生産地域をして区分するための技術的および政治的努力は、アカテナンゴ・バレー(Acatenango Valley)をコーヒー生産地域として確立することが含まれます。アンティグアの土地の価格は大幅に上昇しており、農園の規模を拡大することは、アンティグア・コーヒーの価格が高いことを考慮しても、土地購入への投資はメリットが得られないと考えられます。一方、コーヒーツアーは観光地としてのアンティグアの価値を高めたため、観光は大きなメリットを有しています。
アンティグア・コーヒーの原産地呼称(DO)に関する地理的表示(GI)の管理の具体的な構造は、規制が確立され、規定され、政府によって正式に作成されるまで、まだ完全には定義されていません。そのため、アンティグア・コーヒーは、アナカフェ(Anacafé)によって区分された地域内の農園で生産され、コーヒー市場で「ジェニュイン・アンティグア」のラベルを使用する権利があるだろうコーヒーを指すと考えられます。
現在、アンティグア・コーヒーの地理的表示(GI)は、アンティグアコーヒー生産者協会(APCA)のラベルの使用を通じて確立されています。 アンティグアコーヒー生産者協会(APCA)のラベルを使用するには、アンティグア・コーヒーの生産者は、アナカフェ(Anacafé)のアクティブ・メンバーであり、265ドルの協会費を支払い、農園の規模に応じて協会に年間使用料を支払う必要があります。
認証は、ミルの段階で行われます。アンティグアコーヒー生産者協会(APCA)のすべての生産者には、コーヒーの量、産地、品質を管理するために、農園の規模に応じた最大生産量の制限が設けられています。この制限量を超えた場合、アンティグアコーヒー生産者協会(APCA)の職員は生産者と現状について話し合いを持ち、余剰の原因を解明して管理するために現地調査を実施します。アンティグア・コーヒーのコーヒー生産量の75%から80%は、アンティグアコーヒー生産者協会(APCA)を通じて輸出されているため、輸入業者に至るまで「ジェニュイン・アンティグア」と表示されたコーヒーには、輸出国内におけるトレーサビリティがあります。
ただしトレーサビリティは、主にコストが高いために、これ以上は実施されていません。 そのため、原産地の厳密な保証はなく、消費国での偽造や印象操作に対する疑念は残ります。
アンティグア・コーヒー(Antigua Coffee):https://real-coffee.net/category/coffee-origin/central-america/guatemala/antigua-coffee