パナマ ラマスタス・ファミリー・エステーツの歴史 エリダ、エル・ブーロ、ベスト・オブ・パナマ

パナマ ラマスタス・ファミリー・エステーツの歴史 エリダ、エル・ブーロ、ベスト・オブ・パナマ

ラマスタス・ファミリー・エステーツの歴史

ラマスタス家

ラマスタス・ファミリー・エステーツ(Lamastus Family Estates)は、ラマスタス家(Lamastus Family)が経営するパナマのコーヒー会社です。ラマスタス家は、第1世代のロバート・ラマスタス(Robert Lamastus)が創業したエリダ農園(Elida Estate)で、4世代にわたってコーヒーを生産しており、第2世代のサッチャー・ラマスタス(Thatcher Lamastus)、第3世代のウィルフォード・ラマスタス・シニア(Wilford Lamastus Sr.)、第4世代のウィルフォード・ラマスタス・ジュニア(Wilford Lamastus Jr.)にコーヒー生産が受け継がれています。

ロバート・ラマスタス(Robert Lamastus)は1904年に、アメリカ合衆国ケンタッキー州(英語:Commonwealth of Kentucky)から運河建設のためにパナマへとやって来て、1914年の運河完成までそこで働きました。彼は1918年にアルト・キエル(Alto Quiel)に土地を購入し、アラビカ種コーヒーの農園を始めました。彼にはチリキ県生まれのエリダ・サルダナ(Elida Saldaña)との間に5人の子供がいました。

1889年、フランス人アリスティディス・ブウテ(Aristides Boutet)は、フランスによる運河建設計画のためにパナマへとやって来ました。この計画が失敗に終わった後、彼はポトレリージョス(Potrerillos)とパルミラ(Palmira)に土地を購入するため、ボケテ地区(Boquete District)へとやって来ました。彼はボケテ地区の女性と結婚し、11人の子供に恵まれました。これら子供の1人であるアマド(Amado)は、第3世代のウィルフォード・ラマスタス・シニア(Wilford Lamastus Sr.)の母方の祖父であり、卓越した政治家でした。彼はまた、畜牛、果物、コーヒーを生産するいくつかの農園と2つのベネフィシオ(精製所)を所有していました。パルミラの精製所では、水洗とパルピング(果肉除去)を、バホ・ボケテ(Bajo Boquete)の精製所では、乾燥と脱穀を請け負っていました。

1920年頃にロバート・ラマスタスと彼の妻エリダは、小さなベネフィシオを建設しました。彼はコーヒーチェリーから外皮を除去することを容易にする水車を開発し、雨のときに室内へと移動できるよう滑車を備えた乾燥用ベッドでコーヒーを乾燥させました。コーヒーは馬に乗せ、アリスティディス・ブウテの脱穀機まで3時間で輸送されました。

1934年にエリダ・ラマスタスが未亡人となったとき、第2世代のサッチャー・ラマスタス(Thatcher Lamastus)は2歳でした。エリダ家は困難に直面しましたが、彼女は子供を育て上げ、コーヒー農園を継続しました。彼女の功労を称え、この農園はエリダ農園(Elida Estate)と名付けられました。

サッチャー・ラマスタスは、コーヒーや果実、原生の山に囲まれた環境で育ちました。彼はシアトル(Seattle)とワシントン(Washington)に農学の勉強をしに行き、1955年に彼の母親の農園で働き始めました。彼はエマ・ブウテ(Emma Boutet)と結婚し、パルミラにある彼の義理の父親の農園であるブウテ農園(Boutet Estate)を購入しました。彼はそこでベネフィシオを建設しました。彼は、現在はコーヒーの苗床として使用されている2ヘクタールの小さな農園で、5人の子供を育て上げました。

1970年代になると、サッチャーはコスタリカに拠点を置くドイツ商人を通じて、アメリカやドイツにコーヒーを輸出しました。国際コーヒー機関(ICO)(International Coffee Organization)に加盟以前、彼はパナマのコーヒー生産者を代表していました。また、国際コーヒー機関(ICO)加入後は、クオータ制に対処するために設立されたパナマコーヒー加工・輸出業者協会(ANBEC)(英語:National Association of Coffee Farmars and Exporters、スペイン語:Asociación Nacional de Beneficiadores y Exportadores de Café)の共同設立者となりました。

第2世代のサッチャー・ラマスタス(Thatcher Lamastus)は、彼の父親と同様にコーヒーノキに囲まれて育ちました。彼はアメリカ合衆国でエンジニアリングを学び、チリキ県出身のヴェイラ(Veila)との間に、ニコル(NIicole)とウィルフォード(Wilford)の2人の子供をもうけました。1991年に、彼は父親のサッチャーと兄弟のルイト(Luito)とともに働き始めました。1990年代のコーヒー危機のとき、ラマスタス家は他の代替作物に目を向けました。しかし、作物の多様化だけでは不十分でした。

財政的な危機のため、ラマスタス家はエリダ農園を売りに出すことを決めました。しかし、作物の品質ではなく量に関心を示す買い手にとって、バル火山の標高1,700m - 2,300mの高地に位置するこの農園は望ましくなかったため、買い手が付きませんでした。ラマスタス家にとっては幸いだったことに、エリダ農園の代わりに、標高1,100mに位置するパルミラのブウテ農園に購入の申し出がありました。ラマスタス家は意に反して、この農園を売りに出すことに決めました。その後、エリダ農園が世界最高額のゲイシャを生産することになるとは誰も想像していなかったため、彼らのこの思いがけない不幸に感謝しています。

ベスト・オブ・パナマ 2002

1996年にパナマスペシャルティコーヒー協会(SCAP)(Specialty Coffee Association of Panama)が設立され、ウィルフォード・ラマスタスが設立者の1人となりました。2002年のベスト・オブ・パナマ(BoP)(Best of Panama)で、エリダ農園のカツアイ(Catuai)が第1位に輝きました。2004年にエスメラルダ農園のゲイシャが記録的な価格で落札されたとき、ウィルフォードは1ポンドあたり20ドルで種子を購入しました。

ウィルフォードは人生の浮き沈みを克服してきましたが、彼の兄弟のルイトの予期せぬ死を経験したとき、彼はうちひしがれました。しかし、ラマスタス家のコーヒーは、パナマを代表するコーヒーにまで成長しました。

第4世代のウィルフォード・ラマスタスは、アメリカ合衆国でマーケティングを学んだ後、28歳のときに帰国し、バハレケ・コーヒー・ハウス(Bajareque Coffee House)で働き始めました。彼は2018年のブリュワーズ・カップ・パナマ(Brewers Cup Panama)で第2位、2018年のバリスタ・チャンピオンシップ・パナマ(Barista Championship Panama)で第2位、2019年のブリュワーズ・カップ・パナマで第1位に輝きました。

エルダ農園は、ベスト・オブ・パナマ(BoP)で何度も入賞歴があります。2016年には、ゲイシャ ウォッシュト(Geisha Washed)部門で94.15点を獲得し第1位に輝きました。そして、創業100年目の節目の年である2018年に、ゲイシャ ウォッシュト(Geisha Washed)とゲイシャ ナチュラル(Geisha Natural)のベスト・オブ・パナマ(BoP)(Best of Panama)のゲイシャ2部門で優勝、そして2019年に、再びベスト・オブ・パナマ(BoP)のゲイシャ2部門で優勝するという快挙を成し遂げました。

サッチャーは、2020年9月25日(日本時間)にその生涯を終えました。

ラマスタス家は、エリダ農園の他に、エル・ブーロ農園(El Burro Estate)、ルイト・ゲイシャ農園(Luito Geisha Estates)を所有しています。これら2つの農園は、エリダ農園と同様に、バル火山(Volcan Baru)の裾野の急な丘陵地のパナマで最も高い標高に位置するコーヒー農園です。

ラマスタス・ファミリー・エステーツは、これら3つの農園によるプライベート・オークション、「ラマスタス・ファミリー・エステーツ・オークション(Lamastus Family Estates Auction)」の開催を予定しています。

ラマスタス・ファミリー・エステーツの所有農園

エリダ農園

エリダ農園
  • 創業:1918年
  • 場所:パナマ ボケテ地区 アルト・キエル
  • 農園面積:65ヘクタール(内コーヒー30ヘクタール 保護区35ヘクタール)
  • 標高:1,670m - 1,950m
  • 平均樹齢:40年
  • 栽培品種:ゲイシャ10%、カツアイ80%、ティピカ10%
  • 土壌:深い砂質ロ-ム
  • 年間降水量:2,400mm
  • 雨季:5月後半から11月
  • 気象:乾季の前半は霧に覆われる
  • 開花:3月から5月
  • 環境:森林保護区と国立公園に囲まれている。 ケツァールやジャガー、多くの固有種の植物、鳥、哺乳類が生息している。日陰栽培。
  • 精製方法:ウォッシュト、ナチュラル、ハニー
  • 乾燥方法:サンドライ、機械乾燥、10日間から12日間

エリダ農園は、パナマ(Panama)チリキ県(Chiriquí Province)ボケテ地区(Boquete District)アルト・キエル(Alto Quiel)に位置する農園です。バル火山の標高1,700m - 2,500mと非常に高い標高にあり、その一部は保護区であるバル火山国立公園(VBNP)(英語:Barú Volcano National Park、スペイン語:Parque Nacional Volcán Barú)にまで広がっています。

バル火山は、中央アメリカで最も高い火山の1つです。14,000ヘクタールの面積と、標高に応じて7つの異なる気候帯があり、エリダ農園もその一部に属しています。

農園面積65ヘクタールのうち、30ヘクタールに、ゲイシャ(Geisha)、カトゥアイ(Catuai)、ティピカ(Typica)が植えられており、残りは民間の森林保護区とバル火山国立公園の一部です。パナマでは1,800m以上の場所でコーヒーが栽培されることはありませんが、エリダ農園は、標高1,950mまでコーヒーが栽培されています。

エリダ農園は、パナマで最も高い標高にある農園の1つであり、北へ35kmにカリブ海、南へ55 kmに太平洋がある地域のユニークな気候と環境でコーヒーが生産されます。肥沃で若いバル火山の土壌、低い気温、乾季にはたくさんの霧が発生し、コーヒーノキは多くの微生物が生息する手付かずの熱帯雨林に囲まれています。夜には気温が下がることで、コーヒーノキからコーヒーチェリーを生産するために、4年半から6年半を費やすことができます。通常コーヒーノキは、生育3年目から4年目にコーヒーチェリーを収穫できるようになりますが、これは平均より2年から4年長く、コーヒーチェリーの完熟時間を延長することで、独特で際立ったフレーバーのコーヒーを生産することができます。

これらの農園のコーヒーは、すべてバル火山の若く肥沃な火山性土壌で栽培され、パナマのボケテ地区の先住民族であるノベ・ブグレ族(Ngobe-Bugle Indians)によって、完熟実のみが手摘みされます。

エル・ブーロ農園

エル・ブーロ農園
  • 場所:パナマ ドレガ地区 ポトレリージョス・アリーバ
  • 農園面積:65ヘクタール(内コーヒー30ヘクタール 保護区35ヘクタール)
  • 標高:1,575m - 1,800m
  • 栽培品種:ゲイシャ50%、カツアイ50%
  • 土壌:深い砂質ロ-ム
  • 年間降水量:3,200mm
  • 雨季:5月から11月
  • 気象:乾季の前半は霧に覆われる
  • 開花:3月から5月
  • 環境:森林保護区と国立公園に囲まれている。 ケツァールやジャガー、多くの固有種の植物、鳥、哺乳類が生息している。日陰栽培。
  • 精製方法:ウォッシュト、ナチュラル、ハニー
  • 乾燥方法:サンドライ、機械乾燥、10日間から12日間

エル・ブーロ農園(El Burro Estate)は、パナマ(Panama)チリキ県(Chiriquí Province)ドレガ地区(Dolega District)ポトレリージョス・アリーバ(Potrerillo Arriba)に位置する農園です。エル・ブーロ農園は、現在の農園主の母方の祖父であるアマド・ブウテ(Amado Boutet)によって設立されました。彼の父であるアリスティデス・ブウテ(Aristides Boute)は、1889年にフランスからパナマに移住してきました。

エリダ農園と同様に、エル・ブーロ農園の一部はボルカン・バル国立公園(VBNP)にまで広がっています。標高は最も高い場所で2,000mにまで伸び、コーヒーが栽培される最大標高は1,750mです。エリダ農園とは、まったく異なったマイクロクライメイト(微気候)を持っています。

エル・ブーロ農園は、ボケテ地区の最南端に位置する農園です。ポトレリージョス・アリーバは、ボケテ地区と北側で接します。ルイト・ゲイシャ農園は最北端に位置しており、エリダ農園はルイト・ゲイシャ農園と北側で接しています。

エリダ農園やルイト・ゲイシャ農園のような北部の農園では、マイクロクライメイト(微気候)は乾季には非常に乾燥し、雨季には非常に湿潤になります。乾季は北からの冷たい風のおかげで、霧と雨が多く降ります。

エル・ブーロ農園は、バル火山の南端の標高の高い場所に位置しており、コーヒーは若く肥沃な火山性の土壌で栽培されます。厳しい日射から保護され、独特の酵母、バクテリア、その他の微生物が豊富な原生熱帯雨林に囲まれた栽培条件と独特のマイクロクライメイト(微気候)は、他の農園とは一線を画す独自のカップ・プロファイルを生み出します。

丸山珈琲の鈴木 樹(すずき みき)バリスタは、2016年のジャパン・バリスタ・チャンピオンシップ(JBC)(Japan Barista Championship)でエル・ブーロ農園 ゲイシャ ウォッシュトを使用し優勝を果たしました。

ルイト・ゲイシャ農園

ルイト・ゲイシャ農園(Luito Geisha Estates)は、パナマ(Panama)チリキ県(Chiriquí Province)ボケテ地区(Boquete District)バホ・モノ(Bajo Mono)に位置する農園です。タマランカ山脈(英語:Talamanca Mountain Range、スペイン語:Cordillera de Talamanca)の北に位置しており、カリブ海に面しているため、霧が絶えず寒い夜が続く、非常に湿度の高いマイクロクライメイト(微気候)が特徴です。

ルイト・ゲイシャ農園は、ラマスタス・ファミリー・エステーツの3番目の農園です。サッチャーの息子でありウィルフォードの兄弟であるルイト・ラマスタス(Luito Lamastus)によって設立されました。ルイトは2014年に亡くなったため、最初の収穫を見ることがありませんでしたが、彼の父と兄弟によって栽培が継続されています。主な事業はマスの養殖場ですが、敷地の斜面でゲイシャが栽培されています。

ルイト・ゲイシャ農園は、標高1,600m - 1,750m、17ヘクタールでゲイシャのみが栽培されています。

カルデラ

ラマスタス・ファミリー・エステーツは、2020年11月、ボケテ地区のカルデラ(Caldera)に新しい農園を取得しました。乾燥工程を目的とした農園で、標高の低い場所にあるため、高品質のコーヒー生産には向いていません。乾燥の他に、果物や野菜の栽培も計画されています。

バハレケ・コーヒー・ハウス

バハレケ・コーヒー・ハウス

ウィルフォード・シニアとウィルフォード・ジュニアは、2012年にパナマの首都パナマ・シティ(Panama City)で最初のサードウェーブ系コーヒーショップである「バハレケ・コーヒー・ハウス(Bajareque Coffee House)」を開業しました。「バハレケ(Bajareque)」とは、パナマの高地で発生する霧のことです。パナマは世界で最高品質のコーヒーを生産していますが、バハレケ・コーヒー・ハウスができるまで、パナマの国民がパナマで生産された最高品質のコーヒーを飲むことができる機会は非常に限られたものでした。

このコーヒーショップでは、ラマスタス家の3つの農園と、パナマの他の農園のコーヒーを取り扱っています。仕入れはウィルフォード・シニアが、焙煎はウィルフォード・ジュニアが担当しています。コーヒーショップの主な経営は、ウィルフォード・ジュニアが行っており、父のウィルフォード・シニアがサポートしています。

バハレケ・コーヒー・ハウスは、パナマ・シティのサン・フェリーペ(San Felipe)にあります。サン・フェリーペは、パナマシティでは、パナマ運河に次いで2番目に訪問者の多い地区です。2016年4月からは、オンライン・ショップも開設しています。

ラマスタス・ファミリー・エステーツ Lamastus Family Estates:https://real-coffee.net/category/coffee-origin/central-america/panama/boquete/lamastus-family-estates

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事