パナマコーヒーの特徴


パナマは中米でもっとも南アメリカ大陸の近くに位置し、北アメリカ大陸と南アメリカ大陸の境であるパナマ地峡を形成しています。西はコスタ リカ、東はコロンビアに接し、北はカリブ海、南は太平洋に面しています。

パナマの歴史はスペイン人の探検家バスコ・ヌーニェス・デ・バルボア(Vasco Núñez de Balboa)が、1510年にアメリカ大陸で初めての植民都市ダリエン市を,カリブ海沿いに建設したのが 始まりです。バルボアはその後 1519年になって、パナマ地狭を横断し,「太平洋」を発見しました。パナマからは太平洋は南に見えるため、彼は太平洋を「南の海」と名づけました。そこに新しい港町を建設したが,首都パナマシティの始まりです。

パナマがバルボアに発見されて以来,重視されていたのは、パナマ共和国は北米大陸と南米大陸を結ぶ細長く湾曲した地形であり、ここが太平洋と大西洋の二つの海を結ぶ最短の陸路コースであるという点にあります。特に1848年にアメリカのカリフオルニアで金鉱山が発見され、いわゆるゴールドラッシュが始まると,アメリカ東南部やヨーロッパから数多くの人間がこのパナマ地狭を横断することになり,1855 年には大西洋岸のコロンから太平洋岸のパナマ間、約80kmに鉄道が敷かれるまでにました。その後,1878 年にフランス人外交官であり実業家でもあるレセップスがスエズ運河に続いて,パナマ地狭に運河を掘ることに着手しました。当時パナマはスペインから独立し,コロンビアの一部でした。1914 年になって、アメリカによってパナマ運河が完成します。

パナマがコーヒーの優良産地である理由の一つ目は、他のコーヒー産地と同様にコーヒーの栽培に適した標高、気候、土壌などを兼ね備えていることが挙げられます。パナマのコーヒー生産地域は、バル火山(Volcan Baru)の周辺地域であるボケテ(Boquete)、ボルカン(Volcan)、レナシミエント(Renacimiento)に位置しています。パナマは非常にユニークな微気候を持ち、バル火山周辺の土地は栄養豊富な火山灰の肥沃な土壌で満たされており、これらの高地は様々な特別なコーヒーを栽培し収穫するのに最適な条件になっています。パナマは平地部分が少なく大部分が高度900~1500mの丘陵地帯と,高温多湿の亜熱帯地帯です。雨季は5~12 月,乾季は1~4 月で、雨季には毎日 1~2 時間激しいスコールが降り,すぐに晴れ上がり,乾季になるとほとんど雨は降りません。

二つ目の理由としては、パナマが中南米地域に多く見られるような自然災害の極めて少ない、安全な地域であることが挙げられます。中南米のコーヒーの優良生産地は自然災害や病害虫など様々に打撃を受けています。例えばジャマイカのコーヒー(ブルーマウンテン)は、古くは1988年9月11日に襲ったハリケーン「ギルバート」で壊滅的な被害を受けました。このハリケーンでブルーマウンテンのコーヒーノキは全滅し、苗から植え直したコーヒーノキは成木になり、コーヒーが収穫できるようになるまで、5年の歳月がかかりました。1992年9月11日のハワイのカウアイ島を直撃したハリケーン「イニキ」では、カウアイ島唯一のコーヒー農園であり、ハワイ州最大のコーヒー農園でもあるカウアイ・コーヒー・カンパニーが大打撃を受けました。また、2012年10月にジャマイカやアメリカを襲ったハリケーン「サンディ」で、ジャマイカコーヒーは非常な被害を受けました。そのことによって、ブルーマウンテンは値段が高騰し、かつてより質も低下しました。

2013年には、中南米でコーヒーの葉の光合成機能を奪い2~3年で枯らしてしまう、強い伝染力をもつ「コーヒーさび病菌」や、コーヒーの実に入り込んで卵を産み、ふ化した幼虫が種子(コーヒー豆)を食べてしまう「コーヒー・ベリー・ボーラー(CBB)」などの病虫害の被害が発生しました。また最近中米では、2017年には大西洋に4つのハリケーンが連続して発生し、2つの巨大地震がメキシコを襲いました。

しかし、パナマはこのような自然災害の被害が極めて少ないです。コーヒーチェリーに豊かな栄養を与える火山灰の肥沃な土壌は高品質のコーヒーを生産する上で一つの重要な要素ですが、同時に火山の噴火のリスクもあります。パナマのバル火山は中米で最も非活動的な火山の一つであり、火山の噴火による被害を心配する必要はありません。中南米においてはほとんどの国がたびたび火山活動による地震の被害を被っていますが,バル火山は火山活動がないため、火山活動からくる地震の被害も極めて少ないです。

また,中米、カリブ海周辺、アメリカ合衆国南部に広がるハリケーンのルートからもパナマは外れているため、ハリケーンの被害も心配する必要がありません。中南米およびカリブ海周辺は自然災害が多い地域ですが、パナマは奇跡的とも言えるコーヒーの栽培条件を備えている地域です。

三つ目の理由は病害虫の被害が少ないことです。パナマはこのように自然災害からくる被害が少ないですが、同時に現在までに病害虫の大規模な被害も確認されていません。1970 年に中南米では初めて、ブラジルでコーヒーさび病が発生しました。その後さび病は南米諸国に広まり、 やがて中米にまで被害が広がります。この頃までに、ゲイシャ(Geisha)がさび病に対して耐性を持つことが研究の結果で明らかになっていました。ゲイシャは1931年にエチオピアで発見され、その後、ケニアに渡り、タンザニア、そして海を渡り1953年に中米のコスタリカに入っていました。ドンパチ・シニアと呼ばれているドンパチ農園のフランシスコ・セラシン・シニア氏(Francisco Serracín)が、ゲイシャをさび病対策としてコスタリカからパナマに持ち込みました。

パナマではかつて収穫性の高いカトゥーラやカトゥアイが主要品種となり、古いティピカとともにゲイシャもまた、ほとんどの農園から姿を消していきました。古いティピカとして有名なのが、ベルリナ 農園 スペシャルリザーブです。

パナマ農業開発省 (MIDA) は1975年から1980年の間、コーヒー生産者にゲイシャの苗木の無料配布を行いました。こうしてパナマでは多くの農園にゲイシャが広まりました。1984 年までにはパナマを除く、中米地域のすべての産地がさび病に見舞われました。その後、多くの国でさび病対策のため、耐病性のアラビカ種とロブスタ種の交配種の生産を増やしたため、交配種の普及による香味劣化が問題視されるようになりました。ところが、ゲイシャによるさび病対策が功を奏したためか、現在までパナマだけで大規模な「コーヒーさび病菌」の流行が確認されていません 。パナマではコーヒーの大敵であるさび病の流行がなかったため、ゲイシャの栽培に最適な環境を維持しています。

かつてパナマのコーヒーは個性のないコーヒーであると考えられていました。1995年の段階で、パナマコーヒーは個性が薄いと考えられていたため、商品としての国際的な競争力は低く、生産者は悲惨な状況にありました。この状況を打破すべく、ボケテ、ボルカンの7つのコーヒー農家が共同して、1996年10月にパナマ・スペシャルティコーヒー協会(Specialty coffee Association of Panama, SCAP) が設立されました。その後スペシャルティコーヒーという考え方が浸透し始めた2000年代から、コーヒー品評会が生産各国で開催されるようになりました。1999 年にブラジルが世界で初めてコーヒーの国際品評会であるCoEを開催します。その成功を受け、パナマでも2001年からカップ・オブ・エクセレンスが開催されます(現在のベスト・オブ・パナマの元となるパナマスペシャルティコーヒー協会のカッピング ・コンペティション(Cupping competition)は1996年から始まりました)。

エスメラルダ農園は出品のために、区画ごとにコーヒー豆をカップテストした際に、エスメラルダ・ハラミージョで生産されたコーヒー豆だけが、特別に素晴らしい香りと味を持っていることを発見します。この独特の香りと味をつくる品種を選別し、分離して栽培し始めました。それがゲイシャです。

2004年にパナマ・エスメラルダ農園のゲイシャが、ベスト・オブ・パナマで破格の値で落札されてから、パナマのコーヒーが一躍注目を浴びるようになりました。パナマのゲイシャの生産で有名なエスメラルダ農園、2018年と2019年のベスト・オブ・パナマのゲイシャ部門ウォッシュトとナチュラルの両方で、2年連続第1位となったエリダ農園、スペシャルリザーブやベイビーゲイシャの他に、非常に人気のあるチェリーテロワールを生産するベルリナ農園、至宝と呼ばれるカルメン農園、東京四天王のひとつカフェバッハと親しい関係にあるドンパチ農園など、パナマには数々の有名農園が存在します。

パナマコーヒーが他の産地に比べて、より優れたコーヒーを産出するのは、一つにはコーヒーの栽培に適した標高、気候、土壌などを兼ね備えていること、二つ目には自然災害が少ないこと、三つ目が病害虫による被害がほとんどないことです。さらに、さび病対策として導入されたゲイシャがこれらの奇跡的な条件の中で栽培されるため、ひときわ素晴らしい香味を持ったコーヒーに仕上がります。


使いやすいドリップパックで発売されています。


こちらは豆の状態です。高価ですが、今年はエスメラルダスペシャルは少量しか日本に入荷しなかったため、希少です。ES-N-9は辻本珈琲が単独で落札したロットです。これはエスメラルダ農園内に3ヶ所あるコーヒー農園のひとつカーニャス・ベルデス農園のTumacoという区画(標高1,750m)で栽培され、2018年3月12日に完熟したコーヒーチェリーです。




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